小さな特異点が発見されたという報せを受け、同期の藤丸立香と後輩のマシュ・キリエライトとともに現場へ向かうこととなった。管制室へ向かっていると、なまえ! と背後から聞き覚えのある声。立香とマシュは先に行っていると言い先に向かった。立ち止まり振り返ると、なまえと契約をしているサーヴァントの一人、マリー・アントワネットの姿。どうかしたの? と問いかけると、これから特異点の修復へ向かうのでしょう? とマリー。既に情報は回っているらしく、もしかしたら管制室で協力の申し出をしているサーヴァント達が居るかもしれない。手早く済ませるわね、とマリーは言うとポケットとなっている箇所からごそごそとあるものを取り出した。
「これをあなたに、受け取ってほしいの」
差し出されたのはとても豪華で煌びやかな宝石が散りばめられた美しい首飾り。あまりの眩さに目が眩みそうになる。庶民感覚な為、こんなに高価なものを貰うわけにはいかないと手振りを沿えて受け取ることを拒む。そんななまえが可笑しいのか、マリーはくすくすと笑った。
「この首飾りにはね、ちょっとした曰くがあるのだけれども……」
ふいと目を伏せるも、それでもね、とマリーは続ける。
「わたしはこの首飾りが好き。キラキラと輝いて、とても綺麗なんですもの」
マリーの手のひらの上でキラキラと光を放つ首飾りは見ていてうっとりとするものがある。急いでいるにも関わらず、ずっと見ていたくもなる美しさだった。
「なまえはまるで、この首飾りのようだわ」
えっ、と言葉の意味がわからず首をかしげる。微笑むとマリーは唐突に後ろを向いて欲しいと言った。マリーに背を向けつつ、自分がその首飾りのようだとはどういうことかと尋ねる。それはね、とマリーの声が真後ろで聞こえたかと思うと、首元にひやりとした感触とともにずしりとした重みが備わった。
「あなたもこの首飾りのように、とてもキラキラと輝いてとても綺麗なんですもの」
ぽんっ、と肩を叩かれたのと同時に視線を下げる。首元にはあの美しい首飾りがつけられていた。高価なものが自分の肌についているという恐れ多い出来事もといなまえとしては事件に、あわあわと焦りを浮かべてぎこちなくマリーに顔を向ける。そんなに緊張しないで、と言うマリーに、無理だよっ、と小刻みに体を震わせて返す。
「マリー、この首飾り外して? もし壊してしまったりしたら、わたしっ」
「――壊れてしまっても良いわ」
そんなわけにはいかないと反論するも、マリーはふるふると頭を横に振る。
「首飾りが壊れたら直せば良いだけ。けど、わたしとなまえの絆は、物のように壊れたりなんてしないわ」
そうでしょう? と見惚れる程のその笑顔で問われ、なまえは軽く息を呑んだ。
マリーとは契約をして随分と経つ。サーヴァントという枠を越え、一人の友人として一緒に戦い笑い日々を過ごした。
マリーの辿った運命は知っている。革命期には多くの人々から憎悪の対象となってしまったが、それでもマリーは恨まなかった。
ある時、何気なく尋ねたことがある。もし聖杯を手にしたら何を願うかと。万能の器である聖杯に願うものはないと、マリーは悲劇の消去を望まなかった。
本当はとても強かな女性であることをなまえは知っている。大切な友人でもある彼女から贈られた首飾り。それはとても重要な意味であると同時に、なまえは心の奥底で誇らしくも思えた。
「引き止めてしまってごめんなさい。今回ももちろん同行をするわ。良いでしょう?」
当然、断る理由はない。むしろマリーが一緒に居てくれればなまえにとっては百人力だ。よろしくね、と告げるとマリーはなまえの手を取った。
「それじゃあ行きましょう、"マスター"! あなた達の歩む未来を守るために」
頷く代わりに、ヴィヴ・ラ・フランス! と返すと、まあっとマリーは驚いたのも束の間で、くすくすと笑うと管制室に向かいなまえの手を引いた。
この人生と君に幸あれと
(わたし達はずっと一緒よ!)
愛子||180624(title=空想アリア)
(この後、特異点へレイシフトする前に首飾りを一旦お返ししましたという裏話)