(※夢主=アルトリアの妹、鯖設定。重度のシスコンです。苦手な方はご注意ください)



誰かに呼ばれたような気がして、藤丸立香は後輩のマシュ・キリエライトとともにカルデアにある召喚室を訪れた。召喚室には既にダ・ヴィンチが居り、待っていたと微笑む。立香とマシュは顔を見合わせたものの、天才は全てをお見通しらしい。さっそく英霊召喚の準備を始める。召喚陣の前に立ち、立香は拙いながらも魔力を注ぎ込む。パチン、パチンと体中の魔力回路のスイッチが外れていく感覚。眩い光とともに風が吹く。一段と眩い光が召喚陣を包み込む。光がおさまるや否や風は止み、同時にコツンという足音とともに誰かが床に足をつけた。さらりと軽く靡かせたのは星のように美しい金色の髪。大きな瞳に高い鼻、ぷっくりと柔らかそうな唇はまるでさくらんぼのように愛らしい。白と青を基調とした服装を身にまとった少女は、青いセイバー――アルトリア・ペンドラゴンとどこか似ている。
あまりの可愛らしさに立香だけでなくマシュやダ・ヴィンチも息を呑む。少女は静かに息を吐くと、結んでいた唇をゆっくりと動かした。

「サーヴァント、アサシン――」

と、続けようとしてハッと少女の色は変わる。

「え。どうして私、アサシンなの? 武器はほら、この通り剣なのに。え? なんで?」

そう言って利き手に魔力で編み出した剣――関節剣をまるで体の一部のように振り回しながら、頭上に疑問符をたくさん浮かべ続けている。ちょっ、と立香は一歩退がり、とりあえず武器は仕舞ってくれと頼んだ。

「あなたがマスター?」
「えっと、藤丸立香です。よろしく」

リツカ、と名前を呼び少女はにこりと微笑む。まるで花のように愛らしいその笑顔に、無意識に更に立香の胸は高鳴る。

「クラスはわかったよ、アサシン。君の真名を教えてくれるかな?」

ダ・ヴィンチの問いにまだ真名を告げていなかったことを思い出したのか、少女はぱちりと目を瞬き、そうだったわと呟く。少女が先を紡ごうとした時、割って入るかのようにマシュが言った。

「なまえ――?」

えっ、と立香とダ・ヴィンチは驚きマシュに視線を向ける。少女――なまえもきょとんしたものの数秒程とじっとマシュを見つめたかと思うと、何かを感じたのか、もしかしてと続けた。

「ギャラハッド……?」

ダ・ヴィンチは正体がわかったのか、なるほどとこぼした。マシュは嬉しそうに表情を緩めなまえの傍に歩み寄る。立香は首をかしげ、ダ・ヴィンチになまえは一体何者なのかと問うた。

「アーサー王伝説の派生作品に登場する、アーサー王の妹さ」
「妹!?」

脳裏にアルトリアを思い浮かべ、マシュとなにやら楽しそうに話し合っているなまえと重ねてみると、確かに似ているような気がした。
ダ・ヴィンチ曰く、なまえはアルトリアの影武者として活躍をしていたらしい。作品により原因や年齢はそれぞれではあるが、とある戦いで命を落とした。その描写はどれも感動的で涙を誘うものが多く、機会があれば読んでみると良いと結んだ。
話はまとまったのか、マスター! となまえに呼ばれた。

「ギャラハッドの経緯はわかったわ。マシュちゃんの話によれば、他にも円卓の騎士達が居るそうね。ということは――」

先を続けようとした瞬間、召喚室の扉が開いた。訪ねてきた人物に視線を向けると、肩を上下に揺らした青いセイバー――アルトリアが居た。アルトリアはなまえを見るなり大きく目を見開き、驚いた色を浮かべた。

「なまえ!?」
「お姉様っ!!」

なまえは立香を突き飛ばすとアルトリアのもとへと駆け寄り勢い良く抱きついた。先輩!? とマシュは慌てて立香に手を差し伸ばす。ダ・ヴィンチは、立香とマシュ、そしてなまえとアルトリアを交互に見やり様子を伺っていた。

「お姉様、嗚呼、お姉様……! 本物のお姉様だっ」
「私も驚きました。本当になまえなのですね。嬉しいことですが――……まずは腰を撫で回すのはやめなさい」

一旦離れると、アルトリアはてしっとなまえの額をデコピンする。ぬおうっ!? と少女らしからぬ声を上げるも改めてアルトリアに抱きつく。アルトリアの背にまわした手は指摘された通り厭らしく動いていた。ははーん、とダ・ヴィンチは何かわかったのかパチンと指を鳴らした。

「なるほど、わかったぜ」
「わかったって、何が?」

マシュの手を借りて立ち上がった立香は首をかしげる。ダ・ヴィンチはふっと笑みを浮かべ答えた。

「なまえちゃんはドがつくほどのシスコンだ!」

一呼吸置いてから、まじかー、と立香はこぼす。アルトリアとなまえのやり取りを、手を貸しながらも何気なく眺めていたらしいマシュはギャラハッドの霊基からも感じ取っていたのか自然と納得していた。
なまえから離れたアルトリアは立香のもとへと歩み寄る。その後ろをなまえも続こうとしたが、召喚室の扉が開いた。

「おー、やっぱり! なんか懐かしい感じがしたと思ったら、叔母上じゃねーか!」

なまえの魔力を微かに感じ取ったのか、訪ねて来たのはモードレッドだった。なまえは振り返りモードレッドを見るなり、まあっ! と声を上げ、大きくなったわねぇっ、と喜ぶ。よしよしと頭を撫でてきたなまえに、子ども扱いするな! とモードレッドは抵抗する。程なくして、ぐわしっ、となまえはモードレッドの頭を掴んだ。

「――えっ」
「モードレッド。あなた……お姉様を裏切ったそうね?」

聖杯から与えられた知識により、自分の死後、モードレッドがアルトリアに叛いたことを言っているのだろう。なまえの雰囲気は変わり、モードレッドの顔はどんどんと引きつっていく。ひえっ、とこぼしたところでモードレッドはなまえの手を払い逃げるようにして召喚室から出て行った。

「お姉様、モードレッドを追います!」
「ええ。行ってきなさい」

わかりました! と元気良く返事をし、なまえはモードレッドの後を追いかけ召喚室から出て行った。静かになった召喚室でアルトリアは小さく息を吐くと、すみませんと謝る。いつもあんな調子なのかとダ・ヴィンチが尋ねるも、アルトリアは答えを濁した。
どこかで、どったんばったん、ギャーッ! という悲鳴が上がる。恐らく逃げたモードレッドがなまえに捕まったのだろう。
これからまた騒がしくなりそうですね、とマシュ。立香くんなら大丈夫だろうとダ・ヴィンチはへらりと笑った。

「再びなまえとともに居られる……こんなに嬉しいことはありません」

マスター、と呼びアルトリアはふわりと微笑んだ。

「ありがとう」

その笑みはまるで太陽のように温かい。こんなにも嬉しそうなアルトリアを見たのは初めてかもしれない。
自分を呼んだのは世界(ひだまり)だったのだろう。また一段と賑やかになるであろうカルデアのことは今はさて置き、後でなまえのことを教えてよ、とアルトリアに頼み立香も笑みを浮かべた。


ひだまりの種
(彼女にとってのひだまりが、今、人類最後のマスターのお陰で戻ってきた)

愛子||180712(title=空想アリア)