昼食の時間となり、アルトリア・ペンドラゴンは自身の妹でありアサシンのサーヴァントであるなまえとともに食堂へとやって来た。なまえは先程、藤丸立香に召喚されたばかりでまだカルデア内を熟知していない。その為、アルトリアが率先して案内を務めた。
今日の昼食は洋食定食か和食定食。苦労のわかる者は二つのうち一つを選ぶのだが、ゴーイングマイウェイな英霊達が多い為、基本、厨房は慌しい。王であれど決められたことはしっかりと守るアルトリアは和食定食を頼んだ。和食とは何かを知らないなまえも興味本位でアルトリアと同じものを頼み、料理ののった膳を受け取ると、アルトリアと並んでテーブルに座り恐る恐る最初に口にしたのが小鉢の肉じゃがだった。
「お姉様、このお芋の料理はいったい何なのですっ!?」
「それは肉じゃがという料理です。日本の伝統的な料理――もう一つの名を"お袋の味"です」
「おフクロさんの味……!」
発音が違っているのだがアルトリアは突っ込まず、箸を上手く使い自身もモキュモキュと肉じゃがを頬張る。なまえはまた一口、もう一口と肉じゃがを頬張る度に瞳をキラキラと輝かせた。小鉢が空になったのを見て、お代わりをもらいに行くかとアルトリアは尋ねる。いつの間にかアルトリアの小鉢も空になっていた。お代わりをしても良いのかと尋ねるなまえにアルトリアは、もちろんです、と頷く。毎回お代わりをしている為、それは当然のことだと思っていた。
二人は席を立ち厨房へと向かう。なまえの足取りは随分と弾んでいた。
「アーチャー、忙しい時にすまない。肉じゃがのお代わりを貰えるだろうか?」
「まったく。セイバー、君は本当に大食いだな」
厨房の中に居るエプロン姿の赤い外套のアーチャーことエミヤに声をかけると、肩をすくめるなり振り返った。だがすぐにきょとんとした色を浮かべ、アルトリアの隣に並んでいる少女に目をやる。数秒見つめた後、既に噂を聞いていたらしく少女が誰なのかを察した様子だった。忙しい為に簡単に自己紹介をするとなまえも応じた。詳しくはまた後でと告げ、お代わりだったかな、とエミヤは聞き返す。
「はい! ニクジャガをくださいませ!」
光を帯びた瞳とともになまえはエミヤに小鉢を差し出す。肉じゃがを余程気に入ったのか、早くください、となまえの顔には書いてある。エミヤは軽く笑うと小鉢を受け取り、お代わりをよそってくれた。
「まだたくさんある。遠慮せずに食べてくれ」
「まあっ……! うれしいです、ありがとうございます!」
エミヤから小鉢を受け取るなりなまえは満面の笑みを浮かべると、先に席へと戻った。次いでアルトリアが小鉢を差し出しエミヤは受け取る。同時にふっと息を吐いた。
「セイバーに妹が居たことは知っていたつもりだが……少し驚いたよ」
「なぜ驚くのです?」
「あまりの似て居なさに、だ」
そうでしょうか、とアルトリアは少し考えた素振りを見せる。
なまえは生前アルトリアの影武者として活躍をしていた。アルトリアは当初、断固反対したものの、本人の強い希望と周りの者達からの賛同もあり影武者を担っていた。作品により原因や年齢はそれぞれだが、なまえはとある戦いで命を落とすことになる。影武者としてのなまえはアルトリアそのものの振る舞いだった。アルトリアまではいかないものの良く食べるところや仕草等も似ていると言われたことも数え切れない程ある。特にマーリンは良くなまえを観察しており、癖までも熟知していた。
私そっくりですよ、と答えると、想像もつかないとエミヤはこぼした。小鉢に肉じゃがのお代わりをよそいアルトリアに渡す。礼を言い受け取るなり、鼻腔をくすぐる匂いにほわんっとアルトリアは表情を緩めた。
そんなアルトリアの隣につい先程、席に戻り肉じゃがのお代わりを食べていたはずのなまえが小走りでやって来た。手には空になった小鉢を持っており、アルトリアと同じくほわんっとした色を浮かべている。
「赤いアーチャーさん、お代わりくださいな!」
ぎょっとエミヤの顔色が変わった。先程アルトリアに言った言葉を心の中で撤回する。なまえは間違いなく腹ペコ王ことアルトリアの妹だと納得した。キラキラと目を輝かせるなまえにエミヤは小さく咳払いをすると、これはまた大物がやって来たと頭を抱えた。
平和っていいね
(騒がしくも楽しい日常の始まりだ!)
愛子||180716(title=空想アリア)