どうしてこうなっているんだっけ、と回らない頭を必死に使って考える。背中には愛用のベッド、前には様子のおかしいなまえのサーヴァント――アーサー・ペンドラゴンの姿。
そろそろ眠ろうかとマイルームの電気を消そうとした時、アーサーが訪ねてきた。何でも先程まで様々な英霊達が集う宴会に参加をしていたらしい。
そういえば食堂で酒好きのサーヴァント達が集まっているのを通りかがった際にちらっと見た覚えがある。なまえと契約をした当初、フードを被ったり霊体化したりして姿を晒さずあまり交流をしなかったアーサーだが、今となっては多少の問題は起こることもたまにあるものの、何だかんだでうまくカルデアに馴染んでいる。

「……なまえ、」

艶っぽい声で呼ばれ、どきりと胸は高鳴る。鼻腔をくすぐる嗅ぎなれないにおいに、もしかして、と思った。アルトリアと並んで酒豪と謳われているあのアーサーが酔っているのではないか、と。少し考えてから、まさかね、と自嘲気味に息を吐く。

「君は、リツカのように様々な時代の英霊達と契約はしてはいないものの魔力の供給は行っている。他の英霊(だれか)に心移りしてしまわないか……不安なんだ」

絶対に聞かない――否、聞くことはできないであろうアーサーの弱音に大きく目を瞬く。寂し気な、それでいて悲し気に言葉を紡ぐアーサーになまえはきゅっと心が締め付けられるような感じに襲われた。
戦闘ではいつも先に立ち、勇敢に戦ってくれるアーサー。時には励まし、檄を飛ばし、常に一緒に戦ってくれるパートナー。そんな、普段みることのないアーサーの姿に不思議と嬉しさと愛しさがこみ上げてきた。

「なまえ、僕は――」

と、先を繋ごうとしたアーサーの唇をそっと自身の唇を重ねた。ゆっくりと離れると、アーサーは驚いた色を浮かべている。ぽすんと体をベッドの上に戻すと、頬に熱が上っていくのを感じながら微笑んだ。

「……こんなこと、アーサーにしかしないよ」

だから安心して、と先を続けようとしたが、間髪入れずに今度はアーサーに唇を塞がれた。まぶたを閉じると、酒のにおいを強く吸い込んでしまい頭がくらくらとする。軽い酩酊感に襲われていると、唇の間を割って入るかのようにぬるりとしたものが歯と歯の隙間から侵入してきた。入ってきたのはアーサーの舌で、歯列をなぞり、激しく、時に緩やかに啄ばむような口付けを繰り返す。

「は、ぁ……っ」

初めての深いキスに破裂しそうなほど心臓は鳴っていた。愛しそうに名前を呼ばれ、頬、耳、首筋に軽いキスを落とされる。くすぐったくて小さく身じろぐと、次に腕をとられた。令呪が宿っている手の甲、手のひら、そして最後に手首に唇を落とされる。ぺろりと手首を舐められたかと思うと、またしても知らない色を浮かべたアーサーの姿がそこにあった。なまえを映す強かな瞳に、吸い込まれそうになる。
静かに深呼吸をするなり、なまえは覚悟を決めた。

「――いいよ」

なまえの声を合図に、再びアーサーは唇を重ねてきた。


壊れるくらいに愛してもらえたら、それでいい
(あなたが望んでくれるのなら、わたしは喜んで応えてあげる――……)

愛子||180204(title=確かに恋だった)