(※捏造アーサーオルタ設定有り。苦手な方はご注意下さい)


まどろみの中からゆっくりと意識が覚醒し始める。閉じていた瞼を少しずつひらき、眩い光に目を慣らしていく。ぼんやりと、何かが視界に入った。星のようにきれいな金色の髪、同色の瞳、整った顔立ち。黒い鎧を纏った、見覚えのある誰かの姿。それはだんだんと近づいてくる。そうして――唇が触れるか触れまいかの寸前ではっきりと意識が覚醒したと同時に、ガッという鈍い音とともにそれ以上は動かなくなった。

「君は目を離すとすぐこれだ」
「毎回良いところで邪魔をする……貴様のそういうところが好かんっ」
「好かなくて結構」

誰かが大きく息を吐くと力いっぱい近づいてきていた人物を引き剥がした。遮るものもなくなり、上半身を起こして背伸びをする。ふうっと一息つくと、おはよう、と声をかけた。

「疲れていたのかい? 良く眠っていたね、マスター」
「安心しろ、次はモーニングキスを必ずしてやる」
「彼の言葉は全て聞き流して忘れてくれ給え」

目の前に立つ蒼銀の鎧の彼と、隣に座り話を聞かずに喋り続ける黒い鎧の彼を交互に見やる。二人はなまえが契約を結んでいるサーヴァント――真名をアーサー・ペンドラゴン。先に契約を結んだのは蒼銀のアーサーで、それから程なくして黒いアーサーとも契約を結んだ。二人の名前がアーサーの為、蒼銀の騎士はアーサー、黒い騎士はオルタと呼んでいる。なぜかはわからないが、オルタはなまえに対してだけスキンシップが過激だ。先程も昼寝をしていたなまえにキスをしようとしていたが、寸前のところでアーサーに首根っこを掴まれ未遂に終わった。
同一人物のはずなのに、二人は似ているようで似ていない。アーサーは過保護で真っ直ぐで、オルタの暴走ならぬスキンシップを止めている。オルタは我が道をひたすら行き、アーサーに止められても怒られても懲りない悪びれない。喧嘩の絶えない二人ではあるが、時折良くわからないところで意見が合致するところもあり、そういえば同一人物なのだと忘れていた時に認識させられる。
以前、とある特異点で二人は意気投合したことがあり、それを見たなまえはぽつりと呟いた。まるで兄弟みたい、と。すると二人はすぐに顔色を変え声を揃えて、断じて違う!! と否定した。二人の剣幕に押されてそれから口に出すことはしなくなったが、心の中でこぼすことはあった。
二人の話に耳を傾けると、どんどんと話は拗れていく。挙句の果てには、わかった、とオルタは膝を叩き提案をした。

「この際だ、マスターにどちらが頼れる騎士かを選ばせてはどうだ?」
「なッ――君はまた何を言って……」

突然呼ばれ、ぱちりと目を瞬く。頼れるサーヴァントを今ここで決めろとオルタは続けた。口では厳しく正すものの、なまえの唇から紡がれる名前が気になるのかアーサーはちらちらと視線を向けてきた。オルタは自信があるのか、胸を張ってさも当然のようになまえに笑みを見せる。
どちらかを選べと言われても、二人は頼れるサーヴァントで、騎士で、仲間で――そして、大切な大好きな家族のような存在だ。甲乙をつけるだなんて恐れ多くおこがましい。なまえは小さく息を吐くと、こほんと咳払いを一つ。同時にアーサーとオルタの手を取りぎゅっと握った。

「二人は、わたしの……大好きな人達です。どちらが良いだなんて決められない。決めたくはない」

一度言葉を切り、だから、となまえは繋ぐ。

「わがままかもしれないけれども、これからも傍に居てください」

今できる精一杯の感謝と愛情を込めて笑顔する。次に目を瞬いたのはアーサーとオルタで、しかしすぐにふわりと表情を緩めた。

「もちろん。これからも君と――なまえと共にこの先を歩むことを誓おう」

そう言い指を絡めて強かに告げると、アーサーはなまえの手の甲に誓いのキスを落とす。驚いてわっと声を上げそうになった刹那、重ねてオルタもアーサーと同様になまえの手を握ると誓いの口付けを落とす。アーサーよりも長いそれに、あのっ、と思わず声が上ずってしまった。二人からの絶対の誓いにふいに心臓は高鳴り、緊張する反面、嬉しさで頬に熱が上っていく。名前を呼ぼうとした時、手首に巻いていた小型の通信機が小さな音を立てた。急いで二人から手を離すと、ハロハロー、とダ・ヴィンチの姿が映し出され声が部屋に響く。

『休暇中にごめんね〜。極小ではあるものの、特異点らしき場所を観測してね』

立香とマシュには既に用件を伝えているのか、至急管制室へ来てくれ給え、と結ぶとプツリと通信は切れた。
さて、ゆっくりとした時間は終わりだ。二人に声をかけ、脱いでいたブーツを履いて準備をする。腰を上げて二、三歩前に進むや否や、なまえは立ち止まり振り返った。

「行こう。アーサー! オルタ!」
「出陣だね。もちろん、お供するとしよう、なまえ」
「狩りの時間だな。我が蹂躙ぶりに惚れ直すが良い、なまえ」

目の前には頼れる二人の騎士。この出会いに、全てに、感謝を込めて――なまえは満面の笑みを浮かべた。


きみひかり
(二人が居るから戦える。二人が居るから、何も恐れることはなく前を向いて居られるんだ)

愛子||190321(title=空想アリア)