昼食を終え、シュミレーションルームで運動がてらに軽く戦闘訓練でもしようかとなまえとアーサーが話をしていた時だった。二人の周りを囲むように、バッと誰かが立ちふさがった。ぱちりと目を瞬いて動きを止めたなまえとアーサーの前に現れたのは、ナーサリー・ライムとジャック・ザ・リッパー、ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィの三人。三人も食事を終えたのか、けぷっと軽く息を吐くも、きらきらと瞳は輝いておりにこりと笑った。

「なまえお姉さん、騎士王様。遊んで欲しいのだわ!」
「オニごっこしよう!」
「人数の多い方がオニごっこは楽しいです。ですのでトナカイ2号さん、騎士王さん、遊んでください!」

遊んでください! と声を揃えてお願いされれば断れるはずもなく、なまえとアーサーは顔を見合わせると、戦闘訓練はまた今後とアイコンタクト。いいよと快く了承すると、三人はわーい! と両手をあげて喜んだ。そうして――レクリエーションルームへと場所を移し、さっそくオニごっこが始まった。アーサーは部屋の端からなまえと子どもたちを眺め、目を細めている。
最初のうちはレクリエーションルーム内だけでオニごっこをしていたのだが、狭い空間に飽きてきたのか、今度はカルデア全体を使って次はかくれんぼをしたいと三人は言い始めた。どうしようとなまえはアーサーの傍へ行き相談をするも、広いところでかくれんぼがしたいのだわー、したいー、させてくださいー、と三人は駄々をこね始める。なまえとアーサーを囲んでぐるぐると回り始めた三人に、仕方が無いと肩をすくめ苦い笑みを浮かべつつ了承した。

「このかくれんぼには騎士王さんも絶対参加です!」
「私も参加なのかいっ?」
「もちろん!」
「さあ、さっそくジャンケンをしましょう!」

アーサーに有無を言わさず円になると、ジャンケン! と声をそろえた。咄嗟に体は反応し、なまえとアーサーも急いで手を出す。グーが四人、チョキが一人――負けたのはサンタリリィだった。

「むぅ……仕方がありません。それじゃあ100数えますので隠れてくださいね!」

顔をしかめるも負けを認め、さっそくサンタリリィは100を数え始めた。その間にいっせいに散らばり、隠れる場所を探す。アーサーとも離れ、なまえはきょろきょろとあたりをみまわしながら走った。
マイルーム、は少し遠い。管制室は職員達の邪魔になってしまうかもしれない為、入らないことにしよう。走っている最中、ある場所の前を通り過ぎたがすぐに戻った。そこは医務室で、デミ・サーヴァントのマシュ・キリエライトのメディカルチェックも本日はなく、この時間なら恐らく担当の職員は休憩に出ているだろう。いくつかあるベッドはパーテーションで仕切られ、隠れる場所もある。ここだ! となまえは急いで医務室へと入った。
入り口から遠い、パーテーションで仕切られているベッドの一番奥に身を隠し、少し乱れた息を整える。大きく深呼吸をしたところで、扉の開く音が聞こえた。えっ、となまえは固まる。
100を数え終えたサンタリリィがもうやってきたのだろうかと考えるが、それにしても来るのが早すぎはしないだろうか。
こつこつと足音は響き、まっすぐこちらへとやって来る。どこか他に隠れる場所はないかと、きょろきょろと辺りを見回し、ベッドの下へ潜ろうと床に両膝をついた時だった。

「マスター」

聞き覚えのある声に呼ばれなまえは顔をあげるなり、あっ、と驚いた。

「アーサーっ!?」
「しっ、声を落として」
「ご、ごめん……」

手のひらで口を隠し耳を澄ませる。特に音は聞こえず、サンタリリィは来ていないようだ。ベッドの端にぽすんと腰掛け、隣に座ってとぽんぽんと叩く。失礼、と添えアーサーはなまえの隣に腰掛けた。

「アーサーもここに隠れに来るなんて驚いた」
「なまえがここに入るのを偶然に見かけてね」

なるほど、隠れる場所を探していたところ、偶然にもなまえの姿を見かけ、つい追ってしまったそうだ。アーサーらしい、なまえと笑ってしまった。
しばらく二人で声を落として話をしていたが、サンタリリィの来る気配はない。むしろ物音一つせず、尚且つ担当職員も戻ってこない。

「結構……時間経ったよね?」
「ああ、一時間くらい経ったと思うが……」

まさか忘れられているのかと、うーん、と頭を捻った時、唐突に扉の前から声が聞こえた。

「そういえば、まだここを探していませんでした!」
「じゃあわたしたちはあっちに行くね」
「そっちは任せたのだわ!」
「了解です!」

既に他の二人は見つかっており鬼と協力体制だ。はっと息を呑んだのも束の間で、扉が開くと同時になまえの体は咄嗟にアーサーに抱きしめられた。そのままベッドの上に二人して倒れ、息を殺して潜む。

「トナカイ2号さん! もしくは騎士王さん! いますか!?」

サンタリリィの声が響き、思わず笑いそうになってしまう。隠れているのにここにいますと誰が返事をするのだろうか。――否、もしかしたら他の二人はこの無邪気な問いの所為で掴まってしまったのかもしれない。
緊張と突然の接近に胸は早く大きく高鳴る。こつこつと足音は近づき、無意識にアーサーの霊衣をぎゅっと掴む。
足音は、すぐ傍まで来ている。
サンタリリィの衣服が一瞬、視界に入った時だった。

「ジャンヌ大変!」

医務室の扉が開き二人分の足音が聞こえた。

「エミヤおじさまがクッキーを焼いたそうなの!!」
「な、なんですってー!?」

とたとたと足音は遠ざかり、それは一大事だと騒ぐと三人は医務室から出て行った。
過ぎ去った嵐に、なまえとアーサーは思わず顔を見合わせる。ほどなくしてお互いに笑いあったものの、あまりの近さにはっとなり視線を逸らした。頬に熱は上り視線を泳がせていると、アーサーは静かに唇を開いた。

「なまえ、例え遊びだとしても君を守れてよかった」

ふわりと微笑むアーサーに呼吸は止まりそうになる。どうして今そういう事を言うのだろう、こちらは緊張と恥ずかしさでどうにかなりそうだというのに。霊衣を掴んでいた手を離し、てしっとアーサーの額を軽く叩く。
照れ隠しだと知っているからか、アーサーは小さく笑う。しかしすぐに、なまえの手を取り甲に軽くキスを落とした。

「さて、三人の話では赤い外套のアーチャーがクッキーを焼いたらしい。僕達も食べに行くかい?」

頬に熱が上るのを感じながらもぎこちなく頷くと、アーサーはなまえの上から退く。一旦、離した手をそっと差し伸べ、マスター、と促す。上半身を起こしアーサーの手を取ると、指を絡めて強く握りあった。恥ずかしくも、それでも嬉しくて顔を綻ばせた。

「わたし達も食堂へ急ぎましょう、アーサー!」

先にクッキーを食べているであろう三人には降参したと言おう。アーサーに手を引かれ、二人は食堂へと向かった。


いまこの一瞬に恋してる
(遊びなのに、けれども負けず嫌い……そんなところが可愛い、というのは、わたしだけの秘密)

愛子||191201(title=かなし)