「なあ、おたくはなんで看護師なんてやってるんだ?」

唐突なアルヴィンの問いかけに、そうね、となまえは軽く首をかしげる。前ではミラとエリーゼ、そして弟のジュードが楽しそうに話をしている。

「家が医者だから、って理由じゃダメかしら?」
「いいや、別にダメってわけじゃあねーけど。なんか深い理由でもあんのかなって思ってた」
「そう。残念ながら、特に深い理由なんてないわ」

本当に理由なんてものはなかった。夢なんてものはなまえにはなかったし、半ば成り行きでという感じで、親の進めるイル・ファンにある医学校に進学し、卒業した後は家の手伝いを始めた。

「ねえ、アルヴィンはなんで傭兵なんてしてるの?」

逆に問うとアルヴィンは、内緒、と答えるなりウインクをひとつ。なんだそれ、となまえは笑った。
程なくして、二人の間に沈黙が訪れる。前を歩く三人は、傍から見れば仲の良い姉弟(きょうだい)のようだ。ジュードの背中を眺めながら、ぽつりとなまえは呟いた。

「羨ましいなあ」

弟のジュードはなまえとは違い、しっかりと夢を持っている。夢を追うジュードの姿に、なまえはいつも憧れていた。

「なにが?」

言葉が聞こえたのか、アルヴィンが不思議そうに尋ねる。なまえは頭を軽く左右に振ると、別に、と続けた。

「夢を追うって、青春だなあって思っただけ」
「おたく、まだ若いだろ。年寄りみたいだぜ」
「あら酷い」

ぷくっ、と頬を膨らますと、アルヴィンは小さく噴出す。

「拗ねるくらいなら、おたくも夢を持って青春すれば良いんじゃねぇの?」

アルヴィンの言葉に、なまえは今度はため息をつく。

「それが出来たら苦労しないわ」

ふーん、とアルヴィン。なまえは視線を下に向け、傍にあった小石を蹴った。
何かを思いついたのか、ポンッ、とアルヴィンは手を打つと、なまえ、と名前を呼ぶ。何? となまえは顔を上げる。

「俺と青春すれば良いんじゃね?」


青春の味、感じてみる?
「……へっ?」
「考えとけよ、なまえ」
「え、あ、ええっ!?」

愛子|111014
(title=空想アリア)