なまえの隣を歩いていたエルが、ねえねえ、と言い歩みを止めた。

「なまえのぶきって、ふしぎな形してるけど、それってなに?」
「え、武器?」

左右の腰に下げている武器――チャクラム――を指差してエルは問う。なまえも歩みを止めると、エルに指をさされた武器を軽く撫で、これはね、と答えた。

「チャクラムっていうの」
「ちゃくらむ?」

それってどんなぶき? と次いでエルは問い、なまえは困った。ジュードたちとともに前を歩いていたルドガーは、二人が立ち止まったことに気づき、ゆっくりと歩み寄る。そしてエルがなまえを困らせていることがすぐにわかり、エル、と呼ぶ。

「なまえを困らせるなよ」
「こまらせてないですー、わからないから聞いていたんですー」

両腕を組み、むすっと両頬を膨らませてエルは返す。そんなエルにルドガーは肩をすくめ、ごめんな、となまえに謝った。

「ううん、気にしていない。むしろ、エルの疑問に答えてあげられない自分が、ちょっと不甲斐ないって感じだった」
「ねーねーなまえ。もうひとつ、聞きたいことがあるんだけどいい?」
「え? う、うん。答えられる範囲でなら……」

再度、エルからの質問になまえはこくりと頷く。

「なまえはなんでその、ちゃくらむっていうので戦ってるの?」

いい加減にしろよ、と怒ろうとしたルドガーだったが、自身も何気なく疑問に思っていたことをエルが問うたため、言葉が喉の奥でつっかえた。モンスターとの戦闘のとき、もともと援護攻撃を得意とするからかもしれないが、前線にまわると少し扱いにくそうにチャクラムを振るっている。戦闘が終わった後も、腕をつらそうにブラブラとさせていることがしばしばあった。いつか聞いてみようと思っていたことを、エルが代わりに尋ねてくれた。ぱちくりと目を瞬かせているなまえにエルは続ける。

「戦ってるとき、なまえ、すごくつらそうなときある。ねえ、なんで?」

えっと、となまえは口を噤んだ。一瞬、ちらりとルドガーを見やり、眉を八の字にする。

「込み入った事情でもあるのか?」

ルドガーが聞くと、そういうわけじゃないけれども、とこぼす。

「その……笑わないって、約束してくれる?」
「え?」

笑わないってどういう意味だろう、と思ったとき、笑わないよ! とエルは元気に言う。

「ね、ルドガーも笑わないよね?」
「えっ!? あ、ああ……」

こくりと頷くと、なまえは二、三秒ほど黙った後、えっとね、と口を開いた。

「昔、絵本で読んだ天使様が似たような武器を使って戦ってて……それで、その……真似したの」
「天使?」
「エル知ってる! そのえほん、"セカイサイセー"っていう絵本でしょ?」
「そうそれ! わたし、その絵本が本当に大好きで、毎晩読んでもらっていたの」

頬を染めて微笑むなまえに、でもさぁ、とエルは紡ぐ。

「絵本のてんしさまって、ハネがはえてたよ? なまえには、はえてないんだね」

唐突なことを言うエルになまえはがくりとうな垂れる。どうしたの? と首をかしげるエルに、なまえは人間だからな、とルドガーは諭す。ならしかたないよねー、と呟くと、エルは前を歩くジュードたちのもとへ駆け足で向かった。

「……ごめんな」
「ううん……むしろ、子どもっぽいって幻滅したでしょ?」

ふいと目を伏せたなまえに、そんなことない、とルドガーは首を左右に振る。

「むしろ、女の子らしくて可愛いよ」

そう告げると、なまえは驚いた色をした。しかし数秒と経たずに、ほんのりと頬を赤く染める。どうかしたのか? と聞くルドガーの背をパシンと叩いた。

「いっつ!?」
「そういうのはっ、だ、大事な人に言いなさいよねっ」

そういうとふいとなまえは顔を逸らし、すたすたと歩き始めた。叩かれた背をさすりながら、ルドガーはふっと表情を緩めると、鈍感、と漏らすなりなまえの後を追った。


どさくさ紛れの告白
(あーもう、なんでこんなにドキドキしているのかしら。ルドガーがアルヴィンみたいなことを言うからだわ、きっと)
(いつになったら気づいてくれるのかな、俺の気持ち)

愛子||140209(title=rim)