「何か御用? セバスチャン」
「私の気配を察するとは……流石です、お嬢様」
ありがとう、と礼を言い、それで? と本題を促す。セバスチャンは背後に両腕を回したまま、ゆっくりとなまえのもとへと歩み寄る。ちょいと首をかしげた瞬間、目の前に何かを差し出された。なまえは驚き目を二、三度、瞬く。差し出されたのは、黒い薔薇の花束だった。
「わあっ……黒い薔薇なんて初めて見たわ」
物珍しそうになまえは花束をまじまじと見る。
「ええ、とても珍しい薔薇です。偶然手に入れることができましたので、是非、お嬢様にと」
「わたしに、くれるの?」
ええ、とセバスチャンは頷く。なまえはほんのりと頬を赤く染めつつ花束を受け取った。両手で花束を持ち、幻想的ね、とこぼす。
「お嬢様、黒薔薇の花言葉をご存知ですか?」
「花言葉?」
と、復唱し、知らないわ、と返す。セバスチャンはにこりと微笑みなまえの耳元に顔を寄せると、そっと囁いた。
死ぬまで一生愛されてると思ってた
("貴方はあくまで私のもの"――ですよ。これからもずっと、坊ちゃんも貴女も、私だけのものです)
愛子||140727
(title=夜に融け出すキリン町)