(※ロベルタ編でのお話)


外では銃声が鳴り響いている。船の上から辺りを見回していたが、怖くなって途中で船の中に戻ってきた。
ロックのもとへは行きたくなった。突然、雰囲気が変わり、別人のようになってしまったような気がして、どうも近寄りがたかった。レヴィの傍に、とも考えたが、なにやらあの女中――ファビオラと話をした後、すこぶる機嫌が悪くなり、あれでは話すら聞いてくれないだろうとなまえは思った。
ベニーはずっとパソコンを触っているし、ともなれば残るはダッチしかいない。

「で。俺のところに来た、と」
「うん……なんか、ごめん」

運転席の隣に立ち、先に謝る。酒を飲みながら、気にしてねぇ、とダッチは言った。
銃声は絶え間なく鳴り続けている。聞き慣れている音だが、どうも今日は別の、何か恐ろしいもののように聞こえた。体が震え、なまえは自身を抱きしめるようにする。

「珍しいな、お前が怖がるなんてよ」
「どうしてかしら……すごく、嫌な感じなのよね」
「嫌な感じ?」
「言葉じゃ表せないんだけど……けど、すごく嫌な感じ……」

声さえも震えた。何が怖いのか、恐ろしいのか、自分にもわからない。しかし、嫌な予感だけがぐるぐると胸の中で渦を巻いていた。どうしようもなくなり、目をつむる。その時、ポンポンと温かい大きな手がなまえの頭を撫でた。まぶたを開け、隣を見る。

「ダッチ?」
「どうした?」

今度はくしゃくしゃと髪を乱すようにして撫でられる。やめてよっ、と抗議するも、ダッチは撫でるのをやめない。むしろ、楽しんでいるように見える。

「ダッチ、やめてってば!!」

パシン、と手を払い、くしゃくしゃになった髪をを手グシで直す。ムッと顔をしかめて睨むと、ダッチは笑った。

「どうだ、もう怖くねぇだろう?」

そういえば、となまえは思う。少し間を置いてから、なまえは頬を赤らめつつ、微笑んだ。



其の大きな手で包んで
「……ありがと、ダッチ」
「お安いごようさ、セニョリータ」

愛子||180609(title=虚言症)