寝返りを何度打ったことだろう。しかし、眠気がやってこない。寝られないことに少し腹ただしさを覚えながら、風に当たろうと思い、布団から抜け出すなり窓を開ける。心地のよい風が頬を撫でた。

「ロック……?」
「悪い、起こした?」
「ううん……何してるの?」

同じベッドで眠っていたなまえが上半身を起こし、目を擦りながら俺に視線を向ける。衣服を身につけていないなまえの肌を月明かりが照らしている。まるで大理石のように、白く美しかった。
数時間前のことを思い出し、つい恥ずかしくなる。慌てて頭を左右に振り、なまえから視線を逸らした。
ほどなくして、わあっ、という小さな歓声が上がる。どうしたの、と尋ねなまえに再度視線を向けると、あれ、と窓の外を指さしていた。目で指の先を追うと、大きな満月が視界に映る。

「すごい綺麗な月。今日は満月だったんだ」

そうだな、と俺は頷く。ベッドに戻り腰掛けると、なまえの頭を撫でながらもう一度月を見る。
ロアナプラに来て何度も月を見たことはあったが、今日は特別だと思った。

「ねえロック、日本の月もこんなに綺麗だった?」

唐突な質問に、そうだな、と考える。しかし、すぐに答えは出た。

「あの時は毎日が忙しくて、ゆっくり月を見る暇なんてなかったから、よく覚えていないよ」

すると、そっか、となまえは少し残念そうな顔をする。そんな彼女を、強く抱きしめた。どうしたの、と耳元でなまえが問いかける。別になんでもないよ、と言うと、抱きしめる腕の力を強くする。

「ロック、いた」
「なまえ、好きだ」

言葉を遮り続ける。

「愛してる」

そう伝えると、数秒と掛からずにそっと背中に腕が回される。

「……わたし、も」

恥ずかしそうな声音で返答。思わず、口元が弛んだ。


光あふれる世界
(そろそろ寝ようか。朝も早い)

愛子||180609(title=空想アリア)