ロックが事務所のドアを開けたと同時に、バタンとトイレのドアが音を立てて閉まった。どうかしたのか? と尋ねたが、仲間たちは必死に笑いを堪えているようで、掌で口を押さえている。ソファに座っているレヴィは数秒で堪えきれなくなったのか、腹を抱えて笑い出した。事務所の中に入り、軽く辺りを見回す。ソファの近くには空のダンボールがあり、ふと視線を上げテーブルを見るとトランプが散らばっていた。首をかしげていると、ようやくロックの存在に気づいたのか、ダッチが片手を上げる。

「あの……何かあったのか?」
「ああ、ちょっとな」
「よう、ロック。良いタイミングで来たな」
「良いタイミング?」

ああ、とレヴィは人差し指で涙をぬぐいながら続ける。

「これからおもしれぇもンが見れるぜ!」
「レヴィ、一応カメラを用意したけど、使うかい?」
「さっすがベニー!」

ベニーからデジタルカメラを受け取るなり、レヴィは今度は顔をニヤニヤとさせる。何が始まるんだ、と口の中でつぶやいた時、ガチャリとトイレのドアが開いた。コツン、という靴音が響く。皆、一斉に音の方へ顔を向けた。ロックは、目を丸くした。

「こ、これで文句はないでしょ?」

と、ふて腐れ顔で出てきたのは、黒色のバニーコスチュームに身を包んだなまえだった。恥じらいの色を含む立ち姿がまたなんとも今の衣装にマッチしている。最初は笑い転げていたレヴィ、ベニー、ダッチの三人だったが、なまえの姿を見てピタリと動きを止める。ロックに至ってはなまえと同様、頬を赤く染めていた。

「馬子にもなんとかってやつだな……」
「本当、驚いたよ……」

ダッチとベニーが口をポカンと開けながら言う。一分ほど沈黙が訪れた後、一足先に我に戻ったレヴィが手に持っていたカメラの電源を手早く入れるなり、なまえに向かってシャッターを切った。

「ちょっ、ちょっとレヴィ!」
「ベニー、すぐに現像だ! 張の旦那と姐御に高値で売りつける!」
「えっ、あ、りょ、了解!」
「させるかぁっ!!」

なまえはレヴィとベニーの間に入り、なんとかカメラの受け渡しを阻止する。が、その代償としてまた一枚、写真を撮られてしまった。なまえとレヴィの追いかけっこが始まる。狭い事務所で暴れるなよ、とため息をつくダッチに、まあまあ、とベニーはなだめる。

「レヴィ!!」
「遅ぇよ、バーカ!」

後少しでレヴィを捕まえられる、そう思った時、履きなれないピンヒールのせいで足を取られてしまった。わっ、と声をあげなまえの体は前のめりに倒れる。

「なまえっ!」

倒れそうになった瞬間、なまえの体を支えたのは近くに居たロックだった。

「あ、ありがとう、ロック!」

上目でロックを見るなり、なまえはにこりと微笑み礼を言う。

「いや、気にしなくて……!?」

ふと、ロックの視線はあるものをとらえた。バニーコスチュームから覗く豊かな胸に、網タイツを履いたすらりと伸びた美しい足。更に、大きな瞳にふっくらとしたさくらんぼのように愛らしい唇。知らずと、体中が熱くなっていった。

「ベニー、今のうちだ!」
「任せてー、すぐに現像してくるよ!」
「しまったっ!!」

なまえが気づいたときにはすでに遅く、ベニーは裏口から出て船へと向かった後だった。裏口の前をふさぐようにして、ダッチがビールの缶を片手に立ちふさがる。ロックから離れたなまえは、うわああんっと声をあげてトイレの中に逃げるようにして入っていた。

「ハハハッ! ロック、今のなまえを見たか? すっげー顔だった!!」

笑いが止まンねぇーっ、と言いながらレヴィは曖昧に返事をしたロックの隣に立つと、突然笑うのをやめた。目線を下にやり、じっとある場所を見る。それに気づいたロックは、どうした? とレヴィに尋ねた。

「いや、お前も健全な男なんだなって思っただけだ」
「は?」

言葉の意図がわからず、ロックはレヴィと同じように下を見る。そして数秒と経たず、今度はロックが叫び声を上げながら逃げるようにして事務所と飛び出していった。


空気になりたいなう
「見かけによらず初心なんだな、ロックは」
「ああ、あたしも驚いた」
「レヴィ、ダッチ、写真出来たよー」
「おおっ! 待ってました!!」
「やめて見ないでーっ!!」
「レヴィ、なまえが泣きながら出てきたよ」
「ダッチ、まずは姐御に電話だ!」
「OK,相棒」
「やーめーてーぇっー」

愛子||120602
(title=ko-ko)
(ヒロインはレヴィとポーカーをして負けたという設定。バニー衣装は張さんからの贈り物…という設定その2.因みに、ロックのある場所は社会の窓がある場所です。)