船が桟橋につくなり、なまえはピョンと飛び降りた。容赦なくジリジリと照りつけてくる太陽に、なまえは汗を流しながらアッカンベーをする。それを見たレヴィは同じように汗だくになりながら、餓鬼か、と吐き捨てるように言った。依頼を受けた荷を大事そうに、ダッチとベニーが船から運び出す。

「本当になまえは暑がりだな」

ダッチとベニーの後からに続き、ロックが姿を現す。視線をロックにやり、暑いものは暑いんだもの、と顔を顰(しか)める。ロックは船から下りてなまえの隣に立つ。桟橋の端で二人して汗を流しながら海を眺めた。時折、吹く潮風が心地良い。だが、汗は引かない。

「雪降るくらい寒くならないかな……」
「それは無理だろ、いくらなんでも」

なまえの言葉にロックは苦笑する。

「そうでもねぇぜ、ロック」

と、いつの間にか二人の背後に立っていたレヴィがニタリと笑いながら言った。振り返り、ほんと? と、なまえはレヴィに問う。いやな予感がする、とロックは心の中でつぶやく。ああ、とレヴィはうなづくと、案の定、なまえの背を思い切り蹴飛ばした。わっ、という声を上げてなまえは海の中へどぼんと落ちた。ロックは額に手を当て、おいおい、と肩をすくめる。レヴィは海に落ちたなまえを指さして腹を抱えて笑いだす。海から顔を出し、レヴィ!! となまえは声を上げた。

「馬鹿ばか! びしょ濡れになったじゃない!!」
「ベイビー、ベイビー。文句言うのはおかしいぜ。これでちったぁ涼しくなっただろ?」
「むっ……確かに、涼しくはなったけれども……!」
「なら感謝しろよ。あたしのおかげで涼しくなったんだからよ」

隣で笑っているレヴィを他所に、ロックはなまえに手を差し伸べる。黙ってその手をとり引き上げてもらおうとした時、ロックの動きが一瞬、止まった。どうしたの? と、なまえは首をかしげる。ふと、ロックの顔が赤くなっていることに気づいた。ハッと我に返ったのか、なんでもないっ、とロックは首を振りすぐに笑みを浮かべる。ニタァと笑いながらレヴィは言った。

「今日の下着は黒のレースか」
「えっ、なんで知って……」
「Tシャツから透けてるぞ」
「きゃあああっ!!」
「ちょ、なまえ、手を離し――」
「ほらよ」
「うわあっ!?」

手を離さず海に入ったなまえのタイミングにあわせ、レヴィはロックの背を押す。ロックは声を上げ、ドボンと海の中に落ちた。

「レヴィ! なまえもっ!! 下着が見えたのは、し、仕方がないだろ!?」
「ご、ごめん……つい、」

肩を縮めて謝るなまえとは反対に、レヴィはひたすら笑っている。海に落とされた二人はレヴィの笑い声を耳にし、ふつふつと怒りを湧き上がらせる。

「ねえ、ロック」

声を潜めて名前を呼ぶ。なまえは目でレヴィと海を交互に見やり考えを伝える。ロックはその意図をすぐさま読み取り、わかった、とうなづいた。

「ね、レヴィ。そろそろ引き上げて。涼しいどころか、ちょっと寒くなってきちゃったんだけど……」

なまえは体を震わせ、上目でレヴィに訴える。レヴィは笑うのをやめ、数秒ほどじっとなまえを見た後、仕方ねぇな、とため息をついた。

「ほら、」

と、レヴィは手を差し伸べる。ありがと、と礼を言い、なまえはその手を取る。同時に、ロックもレヴィの手を取った。

「「せーのっ!」」
「おわっ!?」

なまえとロックは掛け声をし、息を合わせると、レヴィを海の中へ引き込んだ。本日三度目のどぼんという音がロアナプラの港に響く。今度はなまえとロックが笑った。

「っ、てめぇ等!! 何すんだよっ!?」
「何って、お返し」
「ああ。お返しだよ、レヴィ」
「お返しって……! つか、寒かったんじゃねーのかよ、なまえ!」
「こんなにも蒸し暑いのに、寒いわけないじゃない。むしろ今はすごく快適だわ」
「なまえの言うとおりだ。海の中の方が随分と心地良いよ」
「だよね、ロック! だから、改めてお礼を言うわね。ありがと、レヴィ!」

笑顔で礼を言うなまえに、レヴィは少し頬を染めながら軽く舌打ちをする。あークソッ! と悪態をつくなり、なまえの額にデコピンを食らわせた。フンッ、と鼻を鳴らすと、レヴィはそっぽ向きながらなまえとロックに言った。

「……たまには、海の中も悪くねぇ」

なまえとロックは顔を見合わせると、小さく笑った。


君よきらめくサマーシャワー
「おーい、みんなー。和気藹々としてるところ悪いんだけど……」
「どうしたんだ、ベニー?」
「昨日か一昨日だったかな。海水浴をしていた人が、この港の付近で鮫に襲われて亡くなったそうだよ」
「……えっ?」
「……うそだろ?」
「んじゃ二人とも、お先」
「レヴィ! 置いていかないでーっ!! わたし実は泳ぐのそんなに得意じゃないのーっ」
「あ、ま、待てよ二人とも! 俺を置いていくなよっ! ていうかなまえ早ッ!? どこが得意じゃない、だよ!!」

愛子||120630
(title=スイミー)