そう言うとテーブルを叩き身を乗り出すと、向かいの席に座りザッハトルテを味わっているアッシュに顔を近づけた。フォークをテーブルの上に置くと、ティーカップを手に取り紅茶を飲む。半分ほど飲み干すと、なにが? と首をかしげた。カップを元の位置に戻すと、かちゃり、と小さな音が鳴った。
突然、なまえの瞳から涙が溢れた。唇を噛み、頬を赤く染める。始まった、と思いつつ、ごめんごめん、とアッシュは謝る。ぽんぽんとなまえの頭を軽く撫でてやるなり、それで? と尋ねた。
「何が納得できないの?」
鼻を啜り手の甲で涙を拭い、なまえはぽろぽろと温かい雫を頬に伝わせながら答えた。
「わたしも……っ、アッシュと一緒に……KOFに、参加したかったっ……!」
先程の言葉の意味を理解できたアッシュは、空いている方の手をズボンのポケットの中に入れ、一通の真っ白な封筒を取り出した。アッシュの指先で踊っている封筒を見るなり、なまえは今度は寂しそうな色を浮かべた。
「仕方が無いヨ。いくらなまえが強くても、これってたぶん、運の問題だと思うし」
なまえが突然、怒り始めた理由。それは、自分のもとにキングオブファイターズの招待状がこなかったことである。幼馴染のアッシュのもとには来たが、なまえには届かなかった。
また感情がこみ上げてきたのか、止まりかけていたはずの涙が瞳に溢れてきた。アッシュは小さくため息つくと、封筒をポケットの中に仕舞いなまえの涙を指で拭ってやる。
「ほら、泣かない。折角の可愛い顔が台無しになっちゃうヨ」
「可愛くなんてないもんっ」
アッシュはもう一度、ため息吐いた。あのね、と切り出すと、なまえの瞳を真っ直ぐに見た。
「正直、ボクはなまえのもとに招待状が届かなくてよかったって思った」
なまえはちょいと首をかしげる。
「好きな子の傷つくところなんて、見たくない」
アッシュは言葉を紡いだ。
「だからサ、拗ねないで応援してよ。ボクだけを見ていて」
わかった? まるで幼子をあやすかのように、アッシュは優しい声音で問う。程なくして、なまえは小さく頷いた。
それを見て、アッシュは微笑んだ。良い子だネ、と言うなり腰を上げ、なまえの額に軽くキスを落とした。
「さあ、もう一度、お茶を楽しもうか」
うんっとなまえは頷くと、涙はどこへいったのか、嬉しそうにはにかんだ。
My precious
(やっぱりキミには、笑顔が一番だ)
愛子||160914
(title=たとえば僕が)
(y precious=いとしい人)