サプライズバースデーパーティーの企画を練った翌日。いつも通りに部室で着替えを終え、グラウンドへ向かおうとした時、唐突にくいと衣服を引かれた。振り返ると、衣服を掴んでいたのは轟雷市だった。その隣には三島優太が立ち、すみませんちょっと、と申し訳なさそうな色を見せる。同級生達は先に行っていると告げ外へ出て行った。
パタンと扉が閉まると、どうした? と真田俊平は二人に問う。雷市はぎゅうっと衣服を掴んだまま唇を結んだままで居る。そんな雷市に代わり三島が答えた。
「あーほら。今月、雷市姉の誕生日なんスよ」
「……へえ。今月誕生日だったのか」
三島の意図を察したのか、真田は知らないふりを演じる。こくこくと雷市は頷くと手を離すなり必死に手を軽く上下に振った。何を言いたいのか理解できず、真田は首をかしげる。
「誕生日に、雷市姉に料理をプレゼントしたいらしいっス」
「料理を?」
雷市は再び頭を二、三度縦に振った。何故、料理を贈りたいのかと尋ねる。ゆっくりと、それでいてグラウンドで見せるものとは違うスイッチの入っていない雷市が返事をした。
「姉ちゃん……に、いつも作ってもらってる……から。誕生日くらい、は……楽、させて……あげたくて」
なまえ本人に料理の作り方を聞くとなると怪しまれるに違いない。だからこそ自分に頼んできたのだなと真田は思った。誕生日の日にちはこの日だと言う雷市に、実は知っているんだけどな、と真田は心の中で思う。
念のため、料理を作ったことはあるかと問うと、雷市は数える程度しかないと言った。真田は少し悩んだ後、雷市、と呼んだ。
「週に何回か、部活が終わった後に俺ン家に来いよ。簡単なものくらいなら教えてやる」
ぱあっと雷市の顔色は明るくなる。流石サッナーダ先輩! と三島も喜んだ。それなら早速という話になり、今日の夜に真田の家にお邪魔することとなった。なまえに夕飯は要らないことを伝えてくると残し、雷市はカハハッと笑いながら駆け足で部室を出て行った。部室に残された二人は顔を見合わせ、やれやれと肩をすくめる。
「なまえが誕生日なら、自分も誕生日だってことに気づいてないのか?」
「相談を受けたのは今日の朝なんですけど、その時からずっと雷市姉のことしか言ってなかったんで……たぶん、気づいてないっス」
天然なのか本当にただ忘れているだけなのか――どちらにせよ、世話のかかる姉弟であることに違いない。昨日、轟達とした話を思い出した。二人に計画はばれてはいないようだ。真田と三島は小さく息を吐きつつ、ふっと微笑んだ。
愛子||160220