おかん
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練習の小休憩中、三島と雷市が昨日の晩御飯のことについて話をしていた。新しいドリンクを補充し終えたなまえはたまたま通りかかり、三島の話を羨ましそうに聞いている雷市と目が合った。
雷市「姉ちゃん! ミッシーマの家、今日はトンカツだって!」
「……それで?」
雷市「うちの家も今日、トンカツにしよう!」
「今日はカレー。昨日の夜に作った分があるんだから、トンカツはまた今度ね」
雷市「……トンカツが良かった(ボソッ)」
「何よ、わたしの作ったご飯に文句あるわけ?」
雷市「そ、そういうわけじゃ……」
三島「おいおい雷市姉、そんなに怒って言わなくたって良いじゃねぇか」
「ミッシーマは黙ってて」
三島「ミッシーマって呼ぶなっつーの!」
「雷市、そんなにトンカツが食べたいならミッシーマの家の子になれば? うちはうち、他所は他所だから」
三島「おかんかお前は!?」
「だから黙っててって言ってるでしょう? ……カレーが嫌なら、今日は帰ってこなくても良いから」
雷市「……やだ」
「え? なんて?」
雷市「……姉ちゃんの作ったカレー、食う。トンカツは、我慢する……ごめん」
「(世話が焼けるんだから……)ちゃんと謝れたし許してあげるわ。そうだ、雷市。今日、帰りにスーパー寄りましょう」
雷市「? また卵の特売か何かか?」
三島「お前、特売にまでつき合わされてるのかよ……」
「人の家庭の事情に首を突っ込まないでくださいーミッシーマの癖に!」
三島「だからミッシーマって呼ぶな! つか首突っ込むなって言っても、話をし始めたのはお前等じゃねぇか!!」
「うるさいミッシーマは放って置いて……今日は家で作れないけれど、出来合いのものでよければ夕飯に出してあげるわ。カツカレーにしましょうか」
雷市「!? カハハハ!! 今日の晩御飯はカツカレー!!」
「本当、世話が焼ける弟だわ」
三島「……もう嫌だ。この姉弟の相手は疲れる……」
それって…
★ ★ ★
轟「なあ、真田。ちょっと聞いてくれよ」
真田「あまり面倒なことでなければ」
轟「昨日、俺、給料日だったんだよ」
真田「へえ! 先生達って昨日が給料日だったんスね」
轟「んでよ。家に帰るなりなまえに言われたのが、"さっさと給料出せ"だったんだ」
真田「……ええと、どんまいっす。渡したんですか?」
轟「渡したに決まってンだろ。目が本気だったんだからよ。そしたらいきなり家計簿と電卓取り出してすげー速さで計算し始めたと思ったら、いきなり2万くれたんだ」
真田「2万!? え、どうしてですか?」
轟「小遣いだってよ」
真田「監督、俺が言うのもあれですけど……なまえの立場って娘というより嫁ですね」
轟「俺もそう思った。けどよ、小遣いくれた後にあいつ、俺になんて言ったと思う?」
真田「なんて言われたんです?」
轟「今月の頑張り次第では小遣いアップを検討してやるだってよ!」
真田「……監督、俺、もう何も言いません」
轟「察してくれてありがとよ(涙がホロリ)」
もしものこと
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三島「雷市姉って、あれっすよね」
真田「ああ、あれだな」
「……なんですか、いきなり。二人して」
三島「結婚したら旦那を絶対尻に引くタイプだ!」
「……三島、一発殴られたいのね?」
三島「ちょっ、まっ、指鳴らすな。ジリジリ寄ってくンじゃねぇ! サッナーダ先輩、助けてください!(真田の後ろに隠れる)」
「(ジド目で三島を睨みながら)真田先輩もそう思っているんですか?」
真田「いや、俺は逆」
三島「え?」
真田「なまえはたぶん、結婚したらすげー尽くしそうなタイプだなって思ってるぜ」
三島「ええ!? だってこいつ性格キツイしすぐ怒るし、それはないでしょう! その証拠に監督を尻に敷いてるし、雷市だって逆らえねぇし!!」
「ほっほーう。ミッシーマ、ちょっと歯を食いしばりましょうか?」
三島「ぎゃっ。ほらサッナーダ先輩、本性出しましたよ!」
真田「けどなまえは可愛らしいところもあるぜ? 俺が頭をなでたら絶対に照れるしな」
「そっ、それは先輩がいきなりしてくるからビックリするだけであって……! べ、別にかわいくなんてないですっ」
真田「それにあの親子と暮らしてンだ。しっかりしてるし、良い奥さんになるよ、お前は」
「っ!? そんなこと言ったって何もでませんからね!? 別に照れてるわけじゃないんですから! ど、ドリンクの準備してきますーっ!!(その場から逃げるようにして走り去る)」
真田「……な? 可愛いところもあるだろ、ミッシーマ」
三島「いや、その……すんません。俺には何が可愛いのかさっぱりわかりません。それからミッシーマって呼ばないでください」
あれ?
★ ★ ★
親友「……はあ、」
「どうしたの、悩み事?」
親友「んーまあ。はあ」
「ため息ばかり……気持ち悪い」
親友「気持ち悪いって言わないでー。――ねえ、ちょっと聞いても良い?」
「なに?」
親友「三島ってさ、部活じゃどんな感じなの?」
「え、三島? 三島って……ミッシーマ?」
親友「そう、ミッシーマ。下まつ毛くん」
「どうって……まあ、頑張ってるよ。エースと4番が云々ってたまにぶつぶつ言ってるけど」
親友「ふーん……三島ってさ、好きな食べ物とかってあるのかな」
「えっ。あー……差し入れ? 差し入れとかなら何でも喜んで食べると思うけど……主にうちの雷市が」
親友「その時は弟くんを羽交い絞めにしてて」
「あ、はい。……え。なに、もしかしてあんた、ミッシーマのこと……」
親友「ねえ、」
「な、なに?」
親友「……三島ってさ」
「う、うん?」
親友「好きな子とか居るのかな……」
「(あ、これ重症だ……)……今度、さり気なく三島に聞いといてあげる」
親友「……三島って、どんな子が好みなのかな」
「(あ、これまったく話聞いてないやつだわ)……今度、聞いといてあげる」
親友「はあ、」
「(やばい、これはわたし、どう協力するのが正解なんだろう。サッナーダ先輩に相談してみよう)」
手
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「(雷市の手を握りながらにぎにぎを繰り返す)」
雷市「……?(何でずっと手、握られてるんだろう……)」
「(やっぱり手、硬い。此処に来てから暇があれば庭でバット振ってるけど、小さい時からずっと続けていたのしかしら……)」
雷市「……、(なんか姉ちゃんでもずっと握られてるのは恥ずかしい……)」
「(ていうか前に雷市のバット持たせてもらったけど、物凄く重たかったのよね。雷市に与えてあげれるのは自分が使ってたバットだけだったとか言ってたけど……)」
雷市「あの……姉ちゃん? そ、そろそろ……」
「(ていうか、雷市は文句一つ言わずにずっとバットを振ってきたのよね……本当、バカなんだから……でもそういうとこ、ちょっと尊敬するわ)」
雷市「あ、う……姉ちゃん……そろそろ、離して欲しいんだけど……」
「あ、ごめん――……今更だけど、雷市の手、大きいわね。昔は同じくらいの大きさだったはずなのに(雷市の手を離し手のひらと自身の手のひらを合わせる)」
雷市「カハッ。本当だ、俺の方が大きい」
「双子でも、やっぱり男と女ってことなのかしら」
雷市「カハハッ! ……?(ちょいと首をかしげる)」
「……雷市、」
雷市「カハ?」
「……絶対、ちょー有名な選手になってがっつり稼いでわたしのこと、楽にさせてよね」
雷市「わかった! 全員ぶっ飛ばーす!!」
「それから、あんたをからかってた奴等全員、見返してやりなさい。約束よ?」
雷市「わかった!! カハハッ!!!」
「あ、後、父さんは楽させてやらなくて良いから」
轟「なんで!?(最初から話を聞いてた)」
雷市「わかった!」
轟「うそだろ雷市!?」
「さ、ご飯にしましょうか」
雷市「おう!」
轟「いやいやいや、ちょっと、お前等……酷くね? お父様の扱い方、酷くね?」
「そーだ卵焼き作ろー(無視して台所へ向かう)」
雷市「俺、素振りしよう!(無視して庭に向かう)」
轟「……俺の扱いなんか酷くね!?」
(1.おかん→「うちはうち、他所は他所」を言わせたかっただけ。
2.それって…→轟家の家計を握っているのはヒロインですというのを書きたくて、娘ではなく嫁位置にしました。
3.もしものこと→真田先輩に褒めてもらおう企画その1.
4.あれ?→親友を久しぶりに登場させたくて書いた。ミッシーマとちょっと良い雰囲気になって欲しいと勝手に願っています。
5.手→本編で雷市の手のことをしっかり回収出来ていなかったので…轟家のちょっとした日常風景を目指しました)
愛子||160331