「お前……、」

夜食作りを手伝っていた真田は、出来たまかないを見て思わず呟いた。

「オムレツ下ッ手くそだな!」
「爽やかな笑顔で言うのやめてくれませんか!? ちょっと傷つきました!」

ムッとした色をし皿をテーブルの上に置いた。オムレツは真田の想像を超えており、まじまじと見やる。珍獣でも見つけたような目で見ないでくださいっ、となまえは声を荒らげながら、慣れた手つきで次は卵巻きの準備を始めた。手伝ってくれた御礼ということで何が食べたいかと尋ねられ、咄嗟にオムレツと答えたのだが――。

「スクランブルエッグだよな、これ」
「オムレツです!!」

キッと目を吊り上げ反論するも、真田はケラケラと笑ったままオムレツとは信じなかった。最近よく夜食作り等で使用しているため、調理室の勝手がわかってきた。真田は迷わずとある引き出しを開けスプーンを一つ手にとる。作ってもらった、なまえ曰くオムレツなる見た目はスクランブルエッグの卵料理を一口食べる。軽く租借し、ふむと真田は頷いた。

「お前、オムレツやっぱ下手くそだな」
「二回言った!? 同じこと二回言った!!」

菜箸で手早く卵をまきながら、なんだかんだ感想をこぼしつつ料理を食べ続ける真田にムッとした表情を向ける。半分ほど料理を食べたところで真田はなまえに声をかけた。

「洋食作るの苦手だろ?」

ぎくりとあからさまに両肩が震えたのを真田は見逃さなかった。ふと、今まで見てきたなまえの料理を思い出す。弁当の中身等は洋食は少なく、和食が多かったような気がした。
きれいに卵巻きを仕上げたなまえに、洋食はあまり作らないのかと問う。皿に載せテーブルの上に置くと、なまえはぎこちなく頭を縦に振り否定をしなかった。

「洋食って、見た目がきれいなの多いじゃないですか……わたしの個人的な感想ですけれど」
「そうか? それを言うなら、日本食も見た目がきれいなのが多い気もするけどな」
「日本食っていうか、わたし、煮込むのが好きなんだと思います。おばあちゃんと料理していた時も、煮込み料理が中心だったし」

祖母の得意料理が煮込み料理だったからか、基本を教わりつつ自然と覚え、得意になっていったのだろう。なるほどな、と真田は思った。

「けど、洋食苦手って言う割にはトンカツとか作ってたよな?」
「トンカツは衣つけて揚げれば良いので」
「カレーは?」
「煮込んでルーをぶち込めば良いので」

それにカレーは箱に書かれている作り方を見れば簡単だとなまえは胸を張る。作り方をしっかり守っていることに真田は小さく笑った。

「オムレツは?」
「……いじめですか、先輩?」

敢えて苦手なものを聞いてみると、なまえは包丁で卵まきを食べやすい大きさに切りそろえながら真田を睨んだ。冗談だと言うも、ぶつぶつと文句をこぼし用意していた空のタッパに卵まきを盛り付けていく。

「料理が得意な先輩には、苦手な料理のある人間の気持ちなんてわからないんですよーだ」

唇をすぼめたなまえに、そう怒るなってと真田は言う。しかしなまえはツンッとした態度のまま、無言で洗物を始めた。ぺろりと料理を平らげると、真田はこれも一緒にと空いた皿とスプーンを差し出す。唇を一文字に結んだままなまえは受け取ると一緒に洗った。

「なあ、今度オムレツの簡単な作り方、教えてやろうか?」

すると、まじですかとばかりになまえは顔を上げる。ぱちぱちと瞬く目に、マジだと真田はウインクしてみせた。洗物を終えると、なまえは真田の傍へ行く。そしてムッとした表情のままだが、ペコッと頭を下げた。

「ぜひ、教えてください。よろしくお願いします」

拗ねながらも気持ちには素直なところに、真田はプッとふき出す。くつくつと笑った後、くしゃりとなまえの頭を撫でた。

地球がまばたきしてる間に
「オムレツ下手くそって二回言ったことは忘れませんから。教えてくれるからってチャラにはしませんからね」
「……結構、根に持つタイプなんだな」

愛子||160821
(サッナーダ先輩にオムレツを教えてもらうきっかけが書きたくなった。ただそれだけ)