(※三島×友人のお話。名前変更は友人の名前として使用しています)

昼休みに入るなり席を立つと、雷市はすばやく三島のもとへと向かった。鞄の中から弁当を取り出すや否や、雷市は三島の手から奪い取った。驚く三島を他所に、雷市は弁当を手にしたまま双子の姉のもとへ向かう。姉弟並ぶとにたりと笑うなり、同時に急いで教室を出て行った。
突然何が起こったのか理解できず、きょとんとした色を浮かべその場に立ったままでいる。程なくして我に返ると、ちょっと待てコラー!! と声を荒らげて二人を追いかけた。階段を駆け下りると、どこからともなく雷市の独特な笑い声が聞こえてくる。その声を頼りに走っていると、人気の無いグラウンドの前に出た。息を整えるために足を緩め、肩で息をしつつ弁当を盗った姉弟の姿を探す。
いったい自分は何をしたかと考える。今日は誕生日で盛大に祝われても良いはずなのに、何故大事な弁当を奪われなければならないのか。
クソッと悪態ついた時、三島! と背後から声をかけられた。振り返ると、そこには緊張した面持ちでいるなまえが居た。手には小ぶりの紙袋を持って居た。
丁度良いとばかりに声をかけ、二人の姿を見かけなかったかと問う。なまえはふるふると頭を横に振ると、あのっ、と顔を強張らせながら言った。

「お弁当! 無いのなら、これ……!」

差し出された紙袋に、三島は思わず二、三度瞬く。何気なく中を覗くと、弁当箱らしきものが二つあった。一呼吸遅れて、えっ? と首をかしげ、なまえに目をやる。なまえは照れたようにふいと視線を逸らした。

「弟君たち、見つからないんでしょ? 昼休みは短いし……お弁当、せっかく作ったのにお父さんが忘れちゃって余っちゃったから……良かったら」

このまま轟姉弟を探したところで、もし見つかったとしても取り返した弁当を食べる時間もわずかにあるかどうかわからない。一か八か探し続けるよりも、目の前にある余ったという弁当を頂いた方が効率は良い。
しかし本当に良いのかと思った瞬間、腹の虫は素直に大声で鳴いた。ぷっ、となまえは小さく笑う。恥ずかしさに頬を染めつつ、そこの日陰に行くぞと声をかけた。なまえは頷くなり三島の後に続いた。
近くの日陰に入り、二人は隣り合うと、良い具合に段差がありその場に腰を下ろす。なまえは紙袋の中から弁当を取り出すと、一つを割り箸とともに三島に手渡した。弁当箱は大人の男性が持つにしては随分と可愛らしい色をしていた。
毒か何かが入っているのではと訝しみながらも、三島は不思議と胸を躍らせ弁当を広げる。弁当の中身を見た瞬間、三島は息を呑んだ。
中身は素朴ながらも食欲をそそる盛り付けがされていた。しかも入っているおかずはすべて三島の好物で、静かに感嘆する。本当に良いのかと念を押して確認すると、なまえはこくこくと何度も頷いた。
箸を割り、いただきます、と手を合わせるとさっそく三島は食べ始めた。なまえはじっと三島を見つめている。
好物の一つをつまみ口の中に運ぶ。軽く咀嚼して飲み込む。

「ど、どう……?」

なまえの問いに、三島はすっと息を吸い込んだ。

「……美味い」

正直、味は心の奥底で不安に感じていたのだが、一切を払拭され、むしろ予想していたのと正反対のことに、衝撃で一瞬のうちに雷が落ちた程だ。良かった、となまえはほっと安堵の息をこぼす。箸を進めながら三島はなまえに視線をやる。ほんのりと頬を赤く染め、嬉しそうに微笑んでいた。
ふとなまえの手を見ると、先程まで気づかなかったがところどころに絆創膏が貼ってあった。もしかして、と三島は思う。この弁当はすべてなまえの手作りなのか、と。
いつもなまえとは軽く口論したりし、異性であることを忘れて接していた。しかし、今日はとても女性らしくかわいらしく愛らしく感じ、不思議と胸は高鳴った。
弁当も半分程食べ進め、あのよ、と三島は声をかける。なまえはもぐもぐと口を動かしつつ、なに? と返すように首をかしげた。

「弁当、ありがとうな」
「う、ううん! 口に合ったのなら、良かった」
「……また、」

箸を置き、すっと顔を上げ三島は続ける。

「作ってくれよ、弁当。期待してるぜ、なまえ」

ニッと歯を見せて三島は笑顔する。その笑みに見事になまえの胸は射抜かれ、間髪置かずにこくこくと頭を縦に振った。

「いつでも言ってくれれば作るから! そ、それからねっ」

と、なまえは一度息を吐くと紡いだ。

「お誕生日おめでとう、三島」

大好きという言葉を隠して、ふわりとはにかんだ。


微炭酸に溶けた恋
三島の目を盗み、とある場所へなまえは目をやる。壁からひょっこりと顔を覗かせこちらの様子を伺っている轟姉弟と何故か真田の姿があった。事情を既に聞いているのか、轟姉弟とともに顔をにやにやとさせている。
まったくもう、となまえは息を吐くも、すぐに笑顔しグッと親指を立てた。その姿に三人も察したのか、同じポーズを返す。
ただ一人、三島だけはちょいと首をかしげていた。

愛子||160821
(かなり遅いけれどミッシーマおめでとうございました!)