十二
山繭白瀬の水柱としての評価は高い。緻密な戦略と冷静な判断、針の穴を通すが如き剣戟。尊大さや傲岸さとは無縁で、隠や下級隊士にも謙虚な姿勢で接する。恬淡としすぎた態度が人を寄せ付けぬきらいもあるが、柱らしいと余人の憧憬を満足させた。
柱となり尊敬と畏怖を集めても白瀬のやることは変わらない。鎹烏が啼くままに任務に赴き、鬼を斬る。時には他の隊士と連れ立つように命じられることもあったが、それだけだ。
柱とは何か。明確な指揮系統の存在しない鬼殺隊にあって、柱と呼ばれる九人の存在は如何ほどの意味があるのか。それはおそらく人柱だった。明日をも知れぬ鬼殺隊士の、血を吐くような信仰と願望の向かう先だ。曖昧で根拠のない就任の基準、変わらぬ任務、莫大な給金以外に与えられるものはない。そのかわりに、隊士達の期待が両肩に怨嗟のようにのしかかる。
耳に心地良い言い方をするならば、柱は隊士達の精神的な支柱であった。それ以上にもそれ以下にもなり得なかった。
白瀬は前回の任務で隊服を汚損したため、隊服を新調することになった。柱となってからは初めてのことである。いつもは寸法のあった隊服を置いていくだけの被服係が「襟が」「釦が」とあれこれと提案をしてくるので辟易した覚えがある。白瀬は「前のと同じで良い」とだけ伝えた。
藤の紋の家で体を休めて幾日、次の任務に発つのが先か新しい隊服が届くのが先か、という頃に見知った顔の被服係が風呂敷包みを手に現れた。
「水柱殿、こちら新しい隊服の支給です」
差し出された隊服に白瀬は指を滑らせる。特に検品もせずに受け取ると、被服係の男は頭巾と口布で目元しか見えぬ顔を物言いたげに歪めた。
「本当にこのままでよろしいのですか。釦も変えずに」
「ああ、構わない」
「上衣の丈を少しばかり詰め腰を絞ってもよろしいかと思うのですが……」
「このままでいい。着慣れているから」
そうですか、と被服係は一瞬口籠もるが、矢継ぎ早の提案をやめない。
「では、羽織を召されてはいかがですか。私、水柱殿に映えそうな反物をいくつか見繕っておりますので――」
制止する間もなく被服係は風呂敷包みから次々に反物を取り出す。日輪刀の色に合わせたのか、藍や青の色合いの物が多い。被服係は白地に青で流水紋を染めた反物を、有無を言わさず白瀬の胸に宛がう。
「こちらは私の一押しです。夜闇に翻る白い羽織は、きっと波のように美しいですよ。こちらの反物は紫紺染という染め技法で作られていて、今では貴重で手に入りにくくなっているものです。お館様のご厚意で用意していただきました。ちょっと変わったところではこちらの龍神刺繍なんか――」
「私は寒がりではないよ」
短く静かにそうだけ言う白瀬に、被服係は目元に落胆の色を滲ませる。
「水柱殿は質素倹約を旨とされているのですか」
そう言われ、白瀬は口元に苦笑を浮かべる。
「そういうわけではない」
「では、どうしてそんな一般隊士と変わらぬ格好をされるのです? 他の柱は皆思い入れのあるものを身に付けていらっしゃいますよ。ああ、そうだ、銀の飾り物なんていかがですか。きっとお似合いになる」
思い入れのある物、と白瀬は口の中で呟く。そんなもの、白瀬にありはしなかった。
「我々も柱の隊服を作るとなれば腕が鳴るというものです。なんなりとおっしゃってください」
「担ぐ神輿は派手な方がいいか」
白瀬が言うと、被服係はその意味を捉えあぐねたような顔をして曖昧に笑って見せた。ふ、と白瀬は笑う。
「そうか、そうだな、ではそのおまえの勧めてくれた反物で羽織を作ってくれ」
白瀬が言うと不安げであった被服係は破顔する。反物を慣れた手つきで巻き上げると風呂敷で包んだ。
「良かった! きっとお似合いになりますよ!」
帰り支度を始めた被服係は「ああ、そういえば」ともののついでのように話し始めた。
「水柱殿の同期の……なんという方でしたか、あのちょっと喧嘩っ早い怖い感じの方……」
特徴を挙げられずとも。白瀬の同期は一人しか残っていない。残っていなかった。白瀬は苦いものを見せぬように「簗?」と先を促す。
「ええ、そうですその方。しばらく行方が分からなくなっていたけれど隊に戻られたようですね。もうお会いになりましたか?」
それを聞いた白瀬は青ざめた。被服係に詰め寄りそうになるのを堪える。
「あいつは脚を――」
あの傷では以前のように歩くことは叶わないであろう。隠として戻ったのだろうか。まさか、それが向いた男とは思えない。
「あれ、怪我をされていたんでしたか? 治ったのかな、それはよく聞いていないのですが」
大して興味もなさそうに被服係の男は言い残し、足取りも軽く帰って行った。座敷に一人残された白瀬はしばらく放心した後、どこかで油を売っているであろう鎹烏の名を呼びながら縁側から庭に飛び降りた。
******
炎柱の擁護もあり産屋敷に赦しを得た簗が任務に戻ってから半年あまり、簗は大小入り交じり七体の鬼を斬った。隻脚となった簗が体に傷を受ける頻度はむしろ減った。頭に血が上り鬼に突っ込むよりは慎重な戦いを強いられるためだ。
鬼の攻撃をぎりぎりまで引きつける神経の焼き切れるような駆け引きに、簗は幸運にも勝利し続けている。重い刀、自由の利かぬ脚という制約は、むしろ簗の迷いのなさを活かし慎重さを引き出した。
脚を引きずりながら鬼を狩る簗の凄惨な姿に、傾倒する者もいれば嫌悪感を示す者もいる。簗が家族の仇のために身体を損ねてさえ鬼狩りをしているというのであれば一種神話的な箔にもなるが、簗は「鬼殺の稼ぎは悪くない」と公言して憚らなかった。立ち居振る舞いは粗暴で尊敬を集めようという気は端から持っていない。
任務に戻ってから四体目か五体目の眼には陸の字が刻まれていたらしい。簗は確認していない。簗が見るのは鬼の足が踏み込む先と爪の行方だけだ。隠が報告した。そういわれると確かに面倒な鬼であったような気もした。
下弦とはいえ十二鬼月である。隊律に則れば、簗には柱となる資格が発生する。一部の柱と甲隊士はそれに顔をしかめた。如何に実力主義の鬼殺隊とはいえ、簗の素行は悪すぎた。鬼殺を活計と断言する男が鬼殺隊を支えられるのかという疑念は当然渦巻く。鬼への憎悪と怒りで団結する鬼殺隊にあって簗は異物だ。俗物であることを隠さぬ簗は鬼殺隊の偶像たり得なかった。
現時点では九柱が揃い踏み、何より炎柱が残っている。簗が柱になるとしても、それは先の話だ。炎柱と水柱以外の柱は「あの男を柱にすると思えばおいそれとは死ねぬ」などと軽口をたたき合った。
槇寿郎は礼を欠かさぬように柱合会議の折に白瀬に「簗の行方が分かって良かった。もう会ったか」と尋ねた。白瀬は常に凪いだ表情に険めいたものを浮かべて「いいえ、まだ」と答えた。槇寿郎はその顔を見てうっすらと「この話題を振るべきではなかった」と思ったがもう遅い。
何か止ん事無き事情があるかも知れず、ただ簗がまめな男ではないためかもしれない。槇寿郎は「会えるうちに会った方が良い」とだけ助言した。いつ死ぬとも知れぬのだから、とは言わなかったが、白瀬は言外に察したのか「ええ、そうします」とだけ囁いた。
白瀬は簗に鎹烏を飛ばしたが、たまに短い返事があるだけだ。白瀬の烏は簗の言葉を持ち帰る代わりに簗への悪罵をこれでもかと喚く方が多かった。どうにも無下な扱いをされるらしい。途切れることなく任務の命がおりる白瀬は簗に会いに行くことも叶わない。
簗はといえば、刀を損ねるたびに隠れ里の鋼鐵塚の家に居座るようになった。損ねずとも任務に合間に暇があれば鋼鐵塚の家に顔を出すようになった。藤の紋の小綺麗な家であれやこれやと世話を焼かれるよりは、すり切れ日に焼けた畳に転がっている方が簗の性に合う。傍に置くなら糞野郎の方が気楽だ。
堪らないのは鋼鐵塚である。仕事明けの体を引きずり家に帰り着けば、己の布団で簗がぐうすか寝ている。疲れ果て怒る気力もわかずに簗を布団から蹴り出し眠り、明朝日の出とともに掴み合いの喧嘩をする。あまりに度重なるので馬鹿馬鹿しくなって朝の喧嘩すらしなくなるのに時間はかからなかった。
その日の朝も鋼鐵塚はわざとかと思うほどに大きなくしゃみの音で目が覚めた。床に転がって寝ていた簗が地虫のように這い「さみい」と唸って手探りで布団を探してる。
「くしゃみまでうるせえのかお前は」
鋼鐵塚が半覚醒のまま言うと、言葉の体をなさぬ呻き声が帰ってくる。簗は動かぬ脚を抱えて上体を起こすと壁により掛かった。
「何の用だ。また刀壊したんじゃねえだろうな」
布団の中でそう言うと、簗は「壊してねえよちょっと欠けただけだ」と唇を尖らせる。それを聞いた途端鋼鐵塚は布団を飛ばして跳ね起きた。
「なんだと! あれほど気をつけろと言っただろうが!」
壁際の簗に詰め寄り皺だらけの着物の胸ぐらを掴み上げる。簗は動く方の脚で鋼鐵塚の胸を蹴ってその手を逃れる。
「朝から何なのおまえ」
「はァ!? テメエが言うな!!」
うるさそうに眉をひそめる簗に鋼鐵塚はますます激昂する。
「ガキのおもちゃじゃねえんだぞ!! 壊れましたハイソウデスカとはいかねえんだ!!」
「あ゛ー、待て、待てって、無理だって起き抜けからテメエと喧嘩する気起きねえよ……」
息巻く鋼鐵塚を無視して簗は土間に下りた。水瓶から柄杓で水をすくい口に流し込み、そのまま顔と頭にも水を被る。
「手拭いあるか」
「お前に使わせるモンはねえ」
鋼鐵塚がむっつりとそう答えると簗は鼻を鳴らして鋼鐵塚の脱ぎ捨てられた羽織で顔を拭いた。
「殺すぞ」
「おう、やれるもんならやってみろ」
鋼鐵塚はしばらく歯噛みしながら簗を睨んだ後、もつれた髪をかき回し部屋の隅に立てかけられた刀を手に取る。鞘を払うと刃が一部欠けている。恐れていたほどではなかった。これならば丁寧に研げばこのまま使える。
簗は脚を引きずりながら座敷に上がると鋼鐵塚の手元を覗き込んだ。
「まだ使えるだろ」
鋼鐵塚はそれを黙殺して鞘に刀を納める。ひひひ、と低い笑い声が耳に障る。
「鋼鐵塚、腹減った。何かあるか」
「ねえよ。隊士用の宿舎に行け」
いやだ、と簗は短く答える。簗が藤の紋の家にも宿舎にも近寄らぬのは、鋼鐵塚の家の使い勝手が良いのと、白瀬と鉢合わせたくないからであった。なぜ、と問われれば簗には上手く説明が出来ないが、なんとなく顔を合わせにくかった。白瀬が傷付き動かなくなった簗の脚に向かって「これでもう戦わなくて済む」と零したことが頭を離れない。
「飯も出るし布団もあるだろ、そっち行けよ」
「あ、ここに布団置いていいか?」
「いいわけあるか」
鋼鐵塚は雨戸の隙間から外を見る。もう日が出ていた。簗はその慣れぬ素の横顔を眺める。
「よお」
「なんだよ」
「俺柱になるかも」
短く言うと鋼鐵塚は存外に大きな目をさらに大きく見開いた。おもちゃを目の前にしたガキみたいなツラしやがるな、と簗は思う。
「ばか! 先にそれを言え!」
鋼鐵塚は顔中に喜色を浮かべて簗の肩を揺さぶる。こうも手放しに喜ばれたのは初めてなので、簗はうるせえいてえと振り払うわけにも行かずなすがままにされた。
「よし! よしよしよし! 柱の刀が打てる! 柱の! 刀が!」
「そんなに嬉しいもんかねえ、どうせ俺の刀だぜ」
「馬鹿言え! 柱の刀となりゃ鋼だって良いのを使えるんだ! それに俺の打った刀身に悪鬼滅殺の字を刻めるんだぞ!」
「へえ」
「なんだその言いぐさは!」
かっとなって掴み掛かってくる鋼鐵塚の手首を掴んで反らす。ぎゃ、と鋼鐵塚は短く悲鳴を上げた。
「テメエは嬉しかねえのか!」
鋼鐵塚がそう喚くので、簗は眉根を寄せる。
「あのな、俺ァ鉄穴森さんの刀が使いたくって柱になりたかったんだよ、覚えてねえのか」
あ、と鋼鐵塚は簗が想定したより遙かに衝撃を受けた。顔は青ざめ、手がぶるぶると震える。簗は会ったばかりの頃以来久しぶりに「大丈夫かこいつ」と思った。
鋼鐵塚は噛み付くように簗に掴み掛かる。
「おいまさか俺を外さねえだろ俺とお前の仲だろうがおい待て俺の刀を使うんだろう今更外すってこたねえよなもしそんなことがあったら俺はお前をころすほんきだ」
血走った目が本気も本気であったので簗は思わず後ずさる。
「変えねえよ、おまえの刀気に入ってんだ。離れろ、こえーよ」
「本当か」
「おまえのことは糞野郎だと思ってるけど」
「お互い様だ」
鋼鐵塚は吐き捨てると簗から手を離した。簗はいっそう皺だらけになった着物を見下ろす。
「なるって決まったわけじゃねえ。今は柱が揃ってる」
「ああ、そうか。誰か死なねえかな」
鋼鐵塚が臆面も無くそう言ってのけたので簗は呆れるやら面白いやらで顔を歪めた。
「おめえよぉ……おめえのそういうとこよぉ……」
「なんだ、悪いか」
「悪かねえけど」
簗は己を決して善良な人間とは思わないが、目の前の男よりは幾分かまともだと思っている。
「誰か死んだところで俺がなるとは限らねえよ」
「あ? テメエが嫌われてるからか?」
自覚があるといえど、そこまで直截に突きつけられると多少思うところもある。簗は抉れて薄くなった頬を掻く。
「……まあそうだけどよ、口の利き方どうなってんのおまえ」
「テメエこそ年上への口の利き方がなってねえぞ」
鋼鐵塚はそうは言ったがいかにも上機嫌な様子で草履をつっかけると表に出て行った。
あまりに唐突であったのでどこへ行くか尋ねる余裕すらない。簗はしばらく部屋の中を所在なくうろうろしたが、やることもないので寝直そうかと鋼鐵塚が蹴散らしていった布団に潜り込もうとした。
その途端に玄関戸が乱暴に開けられ、鋼鐵塚が飛び込んで来るなり「茶くらい沸かしとけ、気が利かねえ!」と喚いた。手には餅屋の包みを抱えていた。おやつの範囲を超えた量のだんごが包まれてる。そのうち一本は鋼鐵塚によってすでに串だけになっていた。
「ほらよ、奢ってやる」
突きつけられた包みから焦がした醤油の香りがする。まだ温かいだんごを差し出され、簗は遠慮無くそれを一本取った。
「就任祝いには早いししょぼいな」
「いいんだよ、俺は今機嫌が良い」
簗は言葉通りに上機嫌な様子の鋼鐵塚を横目に眺める。鋼鐵塚は早々に二本目を平らげると咀嚼を続けながら欠けた湯飲みを手に茶もないので水を汲みに行った。
「おまえさ、こんな狭っ苦しいとこで刀ばっかり打っていやにならねえかい」
簗は背中に向かってそう尋ねる。水を汲み終えた鋼鐵塚は湯飲みを片手に一瞬「分からない」という顔をする。どかりと包み越しに簗の向かいに座り込み、三本目のだんごに手を伸ばす。
「さあな、これしか知らねえんだ」
そうか、と答えながら簗は負けじとだんごを口にした。まだ温かく、柔らかい。
簗は名誉や賞賛がほしくて研鑽はしていない。白瀬を殴ってやりたいという気持ちもあるが、それとて跛足を引きずり命を賭ける理由にはならない。簗は頭は良くないが、己のことを分かってはいた。病的な癇症。かっとなると血を見ずにいられぬ。人と獣を分かつのが理性だとしたら、己はきっと獣に近い。己は暴力以外で食えぬ男だ。鬼を殺しているときだけ、人間でいられる。
「だから俺ァ白瀬が嫌いだ」
独り言のように呟くと、鋼鐵塚はちらと目だけをこちらに向ける。
「嫌いなのか」
「……いや別に嫌いじゃあねえけど」
「今そう言ったじゃねえか」
「うるせえな」
人よりは気にかけてはいる。親交もある。顔を合わせれば土産話の一つ二つには花が咲く。死んだらきっと、悲しいと思うだろう。
「あいつは、俺が鬼殺隊をやめればまっとうに生きられると思ってんだ」
正確には、そうであってほしいと願っている。簗は動かぬ脚をぞろりと撫でた。鋼鐵塚は鼻で笑う。
「無理だろ」
隠れ里以外では生きられぬ男が言う。簗は唇を歪めた。
「知ってるか、あいつよ、いいとこの坊なんだよ。食い扶持はあるし、頭だっていいのに、どうして鬼殺なんかしてるかね」
「さあな、羨ましいか」
鋼鐵塚の問いに、簗はからからと笑った。
「ぶっ殺してやりてえな」
鋼鐵塚も口の片端だけを上げた。
簗は白瀬を厭うているのではない。分からないのだ。常であれば一生交わらなかった相手だろう。これでしか生きられぬ簗を何をしても生きていける人間が悠々と超えていく。今更怒りが湧きもしないが、もの悲しくはなった。
そういう奴に、闘争のさなかにいないでほしいと願われている。分からないなりに、腹は立った。
そのとき開け放したままの雨戸から鎹烏が飛び込んでくる。狭い室内で烏が翼を広げると威圧感があった。それがばさばさと翼を鳴らし簗にまとわりつく。鎹烏はひび割れた声で東京近郊の地名を啼いた。
簗は片脚で鋼鐵塚ににじり寄る。
「だってよ、早く研いでくれよ」
簗は裸足の爪先で鋼鐵塚の膝をつつく。鋼鐵塚はうるさそうにそれを振り払った。
簗のへらへらとした笑みが鎹烏の声で凍り付く。山繭白瀬との合同任務、と鎹烏は啼いた。目に見えて乗り気でなくなった簗に鋼鐵塚は膝を打って笑う。
「今すぐ研いでやるよ、大急ぎでな」
簗はむっつりと腕を組み「はがねづかほたる」と唸る。下の名前を呼ばれた鋼鐵塚は一瞬表情を引き攣らせたが「今回だけは許してやるよ、機嫌が良いからな」と言った。