俺のクラスのカップルの話


俺のクラスにはカップルが1組だけいる。その1組のカップルを紹介しようと思う。

彼氏は、目口態度は悪いが、面倒見のいいみんなの母親元ヤン荒北靖友。
彼女は、読書家で…うん、なんというか未だによく分からない苗字名前。
なんの接点も無さそうな二人が、どうやって付き合いだしたのかは分からない。

「荒北ぁー、俺マジでやべーよー。」
「アァ?聞きたくねェ。」
「助けてくれよー。」
「知るか、ボケナス!自分でやれ!」
「そう言わずにさー。」
「チッ!だァから、それはァ…。」

やっぱりな。あんだけ口悪く拒否っても、結局は頼られると面倒見ちまうんだよ。最初は彼女ともそんな感じで口悪いのかと思ってたんだけどよ。

「荒北くん。」
「なにィ?名前チャン。どうしたのォ?」

180度、いや360度、あ、1周しちまったけど、とにかく普段吊り上がってる眉も目も垂れ下がってガラッと変わるんだよ。初めてそれを見た時は、驚きでみんなひっくり返りそうになってたのを忘れねぇぜ。

「荒北くん、ごめん、放課後遊べなくなった。」
「エッ!なんで?なんかあったのォ?」
「遺跡へ大冒険の録画してくるの忘れたから帰るね。」

ああ、苗字さん。その番組って子供向けだよな。でも分かるぜ、俺もその番組好きなんだよ。観たいよな、分かるんだ、分かるんだけど、この後の荒北の機嫌が悪くなるから、遊んでやってくれよ。しかも本読みながら伝えるとかやめてくれぇ!

「エェー!名前チャン、オレ部活休みって久々ダヨ?」
「うん、ごめんね。また次の休みに。」
「ヤダ!」
「でも、前から楽しみにしてた番組だから。ごめんね。」
「でも…」

そんな時に、タイミング悪く廊下から新開と東堂が荒北を呼ぶもんだから、また騒がしくなるな。

「荒北はいるかね。」
「いるよ、いるけど今は…。」

扉近くのヤツが東堂にそう言ってるのが聞こえる。

「おい、荒北!話があるぞ!」
「っせー!バカチューシャ!いまオレは名前チャンと大事な話してんだヨ!」
「バカチューシャと呼ぶな!」
「靖友、カルシウムとれよ!」
「煮干しくってるわァ!」

え、たまにボリボリ食ってるやつ、あれ煮干しだったのか?知らなかった。そっか。荒北って煮干し食ってんのか。

「ベプシばかりではなく、牛乳も飲め!」
「腹くだすんだヨ!って今そんな話どーでもいーからァ!」
「はは、靖友のお腹は赤ちゃんだな。」
「アァ?ダイソンヤローは黙ってろ!ってか、マジで今日名前チャンと久々にデキるかデキねーか大事な時なんだよ!」
「何が出来るのだ?」
「ハァ?んなの、エッチな事に決まってんだろーがァ!このボケナスがァ!」

おい、荒北。それはさすがにマズいんじゃないか?そんなでけぇ声で目の前に本は読んでるとは言え、そのエッチの相手の苗字さんがいるんだぞ。

「……荒北、それは言わない方が良かったのではないか?」
「アァ?」

あ、苗字さんが本を閉じた。立ち上がったな。ん?両腕を振り上げた?本持ったままだぞ。ああ!

「いっでェェェェェェェ!!!」

そりゃ上がった腕は下がるよな。いい音もしたし、かなり痛いだろうな。蹲るのも分かるぜ。苗字さんって、容赦ないんだな。

「荒北くん。本が傷むような事言わないで。」

いやいやいやいや、確かに荒北はすっげーばかな事言ったけど、傷むような事したのは苗字さんだよ!

「名前チャン…。」

そのまま苗字さんは、教室を出て行っちまったけど、荒北残して行かないでくれよ。ああ、荒北の顔が!おい、東堂と新開!お前らが止めろ!って何ゲラゲラ笑ってんだよ!

「傑作だな、荒北!」
「まったく、苗字さんも大変だなぁ。」

おい、待て荒北。机をひっくり返すのか?そこ誰の机だ?アイツか。顔面蒼白って初めて見たぜ。はあ、仕方ねえ。俺がひと肌脱いでやるか。

「荒北、俺録画してっから。明日持ってきてやるって苗字さんに伝えてこいよ。」
「エ、マジ?」
「おう。」
「サンキュー!助かるわァ!」

やっとこれで午後も平穏に過ごせるぜ。クラスのみんな、俺を褒めてくれよな。




2020.12.25




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