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大自然とまではいかないが、名前は自然の多い地域で生まれ、小学校まで過ごした。ゆったりと流れる時間の中でも子供達は活発に、木登りや川遊びなど男女関係なく、というよりも男女という意識さえもなく。ただ毎日を楽しくのびのびと過ごしてきた。



「名前ちゃん、引っ越しても私達の事忘れないでね。」
「寂しくなったらいつでも電話してこいよ。」
「ずっと友達だからね。」
「夏休みには遊びに来いよ。」


小学校を卒業し、当たり前のようにみんなと同じ中学に行くつもりでいた名前。父親は1年程前に単身赴任で神奈川へ行っていたが、名前の小学校卒業、また名前の兄の中学校卒業を期に家族で神奈川へ引っ越す事となった。

引っ越し後1週間、人の多さや人の速さに驚き、今までの場所を思い出し気持ちがとても暗かったが、兄からそのままでは、中学行って友達なんて出来ないと言われ、少しずつ気持ちを切り替えていった。



中学校入学式。これから3年間通う中学校。例年より少し遅めに咲き始めた桜は、入学式の頃に満開となっていた。名前は、桜を見て思った。きっと素敵な中学生活を送れるはず、と。

入学から3ヶ月、名前の想像とはまったく違った中学生活を送っていた。
まず、会話のテンポについていけない。ころころと変わっていく会話の内容に、何か聞かれても、考えている間に次の話題へと移ってしまい、結局笑顔で相槌を打つ事で精一杯にり会話は終わってしまう。
そして容姿についても、今まで名前は自分の容姿についてとくに関心もなかった。以前住んでいた場所の友達にも可愛いや美人などと言われた事もなければ、名前も友達にそういった事を言った覚えもなかった。親はもちろん「名前は美人さんね」と言うが、親だからそんなもんと思っていた。

だが、中学に入って女子から可愛いや美人などと言われ、少し戸惑ってしまった。また入学からたった1ヶ月で3人もの先輩から告白というものをされた。告白なんて前に友達に見せてもらった漫画でしか知らなかった。少し前までランドセル背負って、木登りしていたような自分に何故かと考えてしまう。好きという感情も分からない自分には異性と付き合うなんて未知の世界である。もちろん名前にはまだ未知の世界へ足を踏み入れる気持ちも覚悟もないので、全てお断りをしている。

そんな事が続き、やっとこの生活に慣れてきた頃には、周りが勝手に作り上げた名前像というものも出来上がっていた。



「高嶺の花」



「なーにが高嶺の花だ!私なんてそこら辺に生えてる雑草だっつーの!勝手に私を作るなー!」

あれから半年以上経つが、一切本当の自分を出せなくなってしまった名前。ある時、屋上へ続く階段を登り鍵も壊れて開かなくなったドアに八つ当たりのような形で蹴り飛ばしてしまった。するとガコンと音と共にドアが開いた。恐る恐る屋上へ出る。そこにはもちろん誰も居なく、その時溜まっていた鬱憤を声に出していた。その声が風に消されると、名前の気持ちも少しすっきりしたように思った。それから、週に1〜2回、こっそりと屋上へ行っていた。

「イメージに合わないって何!ただいつもより楽しく笑ってただけなのに、そんな笑い方イメージに合わないよって何よー!楽しければ普通に笑いたいのにー!」

今日もいつも通り、すべて出して少しすっきりした気持ちで教室へ戻る。

「…またアイツか。相変わらずすげーナァ。」

まさか誰かに見られていたなんて知らずに。




2019.11.12


monoGatari