6パックと1ポヨン




1ヶ月ほど前から始めたダイエット。キッカケは、従姉妹の5歳になる息子から言われたひと言だった。

「名前ちゃん、丸くてかわええ。」

子供は正直だ。気が付かないフリをしていた私も、現実を突きつけられれば認めるしかない。
太った。
元からスレンダーと言う言葉からはかけ離れた体型ではあったが、少しぷにっとして健康的でいいと。彼氏もそう言ってくれていたから、それならと出された食事はいつも美味しく完食していた。
量多いよね。
なんとなくそう思っていたけど、食べてる姿が可愛いなんて言われたら、食べるでしょ。
そりゃ太るよね。
一緒に暮らすのダメだったかな、でも一緒に暮らせて幸せだから、もう離れて暮らすのは無理。
だからダイエット始めた。それなのに。

「名前の好きな梅とおかかとピリ辛きゅうりやで。あと唐揚げもあるで。」
「わーめっちゃ美味しそう!やない!!!」
「おわっ、名前が怒った!ほっぺ膨らましてかわええのぉ。」
「治くん、私はいまダイエット中です。」
「おん。知っとる。」
「え、知っとる!?せやな!何度も言うてるもんな。」
「おん。」
「ほんなら、このご飯は一体なんでしょう?」
「夕飯や。」
「夕飯、とっくに食べたわ!時計見て!もうすぐ日付け変わる時間やで!?」

デジタル時計は、23:50と表示されている。夕飯は、19時には食べ終わっている。勿論、申し訳ないと思いつつもダイエットを始めてから量を減らし早めに食事をとるようにしている。朝はウォーキングを兼ねて家から会社まで1時間歩いたり、間食をやめたり、食事の量も半分とはいかないにしても、7割位に抑えたり。私に出来る努力はしているつもりだ。そのおかげで、この1ヶ月程でなんとか太った分はきっちり減らせたと思う。ただ気を抜けばまたあっという間に太るので、食事に関してだけは気をつけるようにしている。と言うのに、治は。

「俺、今から夕飯やもん。」
「うん、お疲れ様。治はしっかり食べてな。」
「一人で食うん、寂しいやん。」
「大丈夫、見ててあげるから。」
「ちゃうくて。名前と一緒に美味しいなあ言いたい。食わん?」

眉を下げて首を傾ける治が可愛い。いい大人が、さらには図体のでかい男のその仕草を可愛いとは、これはまずいなと思う。私の中で戦いが始まってしまう。
少しくらい食べてあげなよ。
そうやって食べて、また太りたいんか。
治くん疲れてる中、わざわざアンタの分も作ったんだよ?
そんなの治が勝手に作っただけじゃん。
一緒に美味しいって言いたいって。
美味しい言ってたらまたまんまるじゃん。

「あーーーーーーー!………明日お休みだけど、朝のウォーキング一緒に行く?約束してしてくれるんなら、ひとつだけ…食べる。」
「ウォーキングする!どれ食う?どれも上手いで!」

先程のしょんぼりモードは演技だったのではないかと疑う程に切り替えられた治に、ずるいなぁと苦笑いしてしまう。





翌朝、目が覚め時計を確認すれば、10時を過ぎていた。

「治、起きて。歩かないと…。」
「んぅーもう少し寝よやぁ。」
「もう10時や。起きてや。」
「んー………。」

仕方がないとひとりベッドから出ようとすれば、治の力強い腕に引き寄せられあっという間にしっかりと抱きしめられてしまう。こうなれば、そこから抜け出すのは至難の業だ。もう諦めようかと、空いた手を治のお腹あたりに置いた。

「………起きて!治!ウォーキング行く!」
「な、なんや!どないしたん!?」
「腹立つわ!ウォーキング行く!」
「なんでや?」

慌てる治をよそに、ベッドから出て洗面所へと向かった。

「名前どなんしたんやー!」
「私のお腹!なんでこんなに掴めるんやー!」

昨晩残ったおにぎりもぜんぶ食べていたと言うのに、お腹がぽっこりする事もない治、ずる過ぎる。




2023.02.22




monoGatari