粘り勝ち
「あの、宮侑いいます!1年の時、転んで血ぃ出した俺に絆創膏くれたん覚えてますか!?そん時、惚れてまいました!苗字さん!俺と結婚を前提にお付き合いしてください!!」
「…………は?」
宮侑。知っとるわ。有名やもん。女子に向かって豚とか言いよるヤバい奴。
1年生の時?絆創膏?ってか、もう3年生やん。そんな前の事覚えとるわけないやん。
そん時から惚れてた?女取っ替え引っ替えしてそうな奴が何言うとんねん。
結婚を前提て…どんだけテンパってんねん!!体ガチガチやねんな!耳も顔もさらには首まで真っ赤やん!お前、ほんまにあの宮侑か!?
「…………は?」
そりゃ二度目の「は?」も出てまうわ。いやまて。なんや、罰ゲームか?これも全部演技とかなんか?ほんなら、絶対誰か見とるに決まってるわ。
「どないしたん?」
「え?」
「あ、いや、キョロキョロしとるから…。」
誰もおらん。どういう事や。え、これほんまの告白?あの宮侑が?豚とか言う宮侑が?こんな冴えない女に?ありえへん。
「苗字さん?」
「あー、えっと、ごめ…。」
「待って!!俺、振られたら泣いてまうかもしれん!!」
「………は?」
泣く?泣くって言った?何度も言うが、あの宮侑が?女子か!
「泣くって…。」
「ほんま、ずっと好きやったん。」
「…うん。」
「好き、なんよぉ。」
え、待ってよ。泣くの?振られないと思っとったん?どんだけ自信過剰なん?なんかヤバない?
「あの、ありがとう。でも、ほらまともに喋った事もないし…。」
「大丈夫やで。苗字さんが喋ってるとこよお見てたし。よお笑っとるよな。」
「………趣味とか、なぁ、知らんし。」
「知っとるわ!バイクやろ?よおバイク雑誌見とるもんなぁ。そんなちっこい体で、でかいバイク乗りたいなんて、かっこええなぁ。」
「好きな食べもんとか…。」
「ブロッコリーやろ!いつもお弁当入っとって最後までとっといとるもんな!」
宮侑、ヤバいやろ。こわすぎやろ。ストーカーなん?これ、絶対お付き合いしちゃあかん男やない?
「な?俺ちゃんと苗字さん事知ってんで?」
そういえば、宮治が言ってたな。アイツは、バレー以外はポンコツやって。どないしよ。ポンコツの扱い方知らんし。
「分かった。ちゃんと考えるので、時間下さい。」
今なんか言うても無駄な気するし、泣かれんのも嫌やし、とにかく一度この場から逃げたい。
「おん。じゃあ、また放課後に。」
「待って、早ない?数時間後やん。」
「おん。やって、時間欲しいんやろ?」
「そうやけど、そうやない!」
「ほな、放課後またここ来てや。ええ返事待っとるから!」
待って、そんな笑顔残して去って行かんで。
クラスに戻り、宮治に先ほどの出来事を言えば、ご愁傷様と拝まれた。
「それにしてもツム…ブフッ…結婚を前提て…ほんまアホやな…。」
大笑いし始めた宮治の背中にグーパンくらわせた私は悪くない。
「名前どないしたん?」
「あー、高校ん時の事思い出してた。」
「高校?」
「うん。侑が怖い告白してきたやつ。」
「怖いてなんやねん。なぁ、それ背中開きすぎやない?」
どうやらお気に召さないらしい。7着目の試着に少し疲れた顔をすればドレスコーディネーターのお姉さんは「少し休憩されますか」と言ってくれたので頷き一度私服へと着替えた。
「もー疲れたわぁ。この後まだカラードレスも決めなあかんのに…。」
「名前はどのドレス着ても似合うなぁ。」
「よお言うわ。全部却下するくせに。」
「しゃーないやん。色んなところ開きすぎやねんから!」
頂いた紅茶からはいい匂いがする。
「そーや、なんやさっきの怖い告白て。」
「え、それ聞く?」
「一世一代の告白を怖い思われとったんかい!」
「だって、なんかあん時の侑、めっちゃヤバい奴や思うやん。」
「ほーん。そんなヤバい思ってた奴とよお付き合うたな。」
「色々言うてもぜんっぜん聞く耳持たんし。まあ正直断る事を諦めたんやろな。私もよお分からんけど。」
「俺の粘り勝ちやな。」
「その粘りが怖かったわ。」
付き合って10年。まさかほんまに結婚までくるとは思わなかった。侑は確かにバレー以外ポンコツや。でもそのポンコツっぷりを愛おしいと思える私もポンコツになったのかもしれん。まあ、とにかく。
「愛しとるで、侑。」
「なっ、どうしたんや!?俺、俺もめっちゃ愛しとるで!名前ん事!」
「知っとるし。あーもう次着るドレスに決めるわー。」
「露出控えめやで!」
2023.03.17