memo

▽SSS

レコード。転生前の、彼女の話。もしものはなし。



告げられた病名に、彼女はゆっくり目を見開いた。ゆっくりと落ちていく涙に映るのはただの恐怖ではない。

「ねぇ、ジュード」

いつか、死ぬのは怖いと平凡に彼女は零していた。それは人として心がある限り当たり前の感情だ。

「…会え、る、かな」

やっと、と。喉が痛くなるような、震えた声。
死への恐怖と混ざった、ほのかな喜色。
彼について。すっかり乗り越えていただろうと思っていただけに、その涙声に彼女の強さを今更思い知る。そして、隠し続けていた弱さも。

「こんな、おばさんになっちゃったけど、わかってくれるかな………すこしは、ほめて、くれるかな」

明日から、いや、診察室の扉を出たその瞬間から、彼女は最期まで生きるべく闘病に励むのだろう。安易に死を選ばないだろうと知っているからこそ、医者らしい言葉は捨ててしまった。

「会えるよ、きっと。ユリウスさんのほうから見つけてくれる」

彼女は手のひらで涙を拭って、嬉しそうに「ありがとう」と呟いた。
ジュードは未だに彼女の薬指で光る指輪の意味を 本当 に今更実感しながら、胸元に隠したペンダントを握った。


ーー
つよくてよわいから、いとしいのろいをあいしつづけたひと。

2017/08/17(22:30)

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