名前は、私の大切な恋人。


日本人の彼女は韓国で私と同じアイドルとして活動していて、出逢ってから惹かれるのに時間は掛からなかった。
綺麗で、愛らしくて素直な彼女が誰より何より大切で、愛しくて。

だけど、今私の隣で眠っているのは、名前じゃない。
真っ赤なネイルとか、甘ったるい香水の匂いとか、全部全部、私が求めているものじゃない。
一緒に眠る気になんてさらさらなれなくて、ベッドの下に放っていた服を纏って寝室を出た。

キッチンで冷蔵庫から出したばかりの水を飲むと、冷えていく身体に心が冷たくなった。


いつからだろう。
名前に会えない時、彼女以外の誰かを抱くようになったのは。
名前の周りの女にも男にも嫉妬して、狂いそうで。彼女が他の人をその瞳に映すのがどうしようもなく怖くて。
ずっと私だけを見て、どんな時だって傍に居てほしくて、離れてほしくなくて。
そんな気持ちを紛らわすように都合の良い人を呼んでは身体を重ねて。そんな事では何ひとつ満たされないのなんて分かってるのに、名前の居ない寂しさに耐えられない。
名前には、彼女のグループのメンバー以外とは2人で食事に行くなとすら言っているのに、自分は他の女と身体を重ねてるなんて、本当に最低だ。


ソファーの上に置いたままだったスマホを手に取ると、名前からのメッセージ。1時間前に届いていたらしいそれを見て、今すぐに彼女を感じたくて電話を掛ける。



『もしもし?ビョリ?』


「名前、もう帰った?」


『うん、もう家だよ。』


「お疲れ様。」


『ありがとう』



優しくて透き通ったその声にさっきまでどうしようもなかった心の騒つきが落ち着いて、ゆっくり深呼吸をする。

他の何かじゃ代わりになんてならないんだ。隣に居てよ。私だけの傍に居て。

起きてきたと思えば私に纏わり付く女を無視してそのまま電話を続けていると、近付いてきた顔が鬱陶しくてとりあえず電話を切る。



「帰って」


「何で?嫌よ。」


「邪魔しないでよ。もう要らない。さっさと出てって。」



冷たく言い放った私に泣きそうな顔をしてみせた彼女は確か、どこかのグループのメンバーだったかマネージャーだったか。名前すらよく分からないその人を追い出して、シャワーを浴びる。

ねえ名前、全てを洗い流したってもう綺麗になんてなれないけど、また君を抱き締めてもいいかな?