ミレニアムタワーの一階まで真島は送ってくれた。

「ほなな、彩香ちゃん」

「真島さん、お仕事だから仕方ないんでしょうけど」

「ん?」

彩香は真剣な眼差しで言う。

「死なないで下さいね」

何を言い出すのかと思っていた彼は、何やそんな事かいなと笑った。

「心配せんでもええ。ワシ不死身やねん」

「冗談言ってる場合ですか!!」

「ヒヒッすまんすまん。大丈夫や。終わったら瑠伽連れてまた飲み行こうや」

怒った顔の彩香に真島は優しく笑った。

「約束ですよ」

「おう、俺嘘はつかんで」

そんな彼の言葉に少し安心して、彩香はミレニアムタワーを後にした。




ロンディネに向かい歩いていると、彩香の携帯が震えた。

店からかと、画面を見るとそこには兄の彩香が表示されていた。




「久しぶりだな…」

「兄さん…」


人通りのない公園で彼は待っていた。


久しぶりに会う兄は、無精髭を生やし、少しやつれてはいたが彩香を見る優しい眼差しは昔のままだ。

「今まで連絡もしないで何してたのよ」

怒る彩香に悪かったと一言った。


「時間が無いから手短に話すぞ。これから俺の言う事をよく聞くんだ」

そう、念を押した後。

「俺は今、ある組織から追われている。こうやって会うのも最後かもしれない」

いきなりの唐突な話に、彩香は怪訝な顔をする。

「そのある組織ってのは、東城会という関東でもでかいヤクザの組織でな、もしかしたらお前の事も嗅ぎ付けて来るかもしれん。その時は、俺の事は関係ないし何も知らないと言うんだ。流石に堅気のお前には手は出さんと思うが…」

彩香の頭に嫌な予感がよぎる。

「本当はこうして会うのも、お前を危険に晒す事は分かっている、ただ最後に一目会っておきたいと思ってな」

巻き込んですまない。と謝る兄に、震える声で訊く。

「どうして東城会に追われているの?」

「………」

質問に無言になる彼に更に問う。

「東城会の人を殺してしまった…とか?」

「―――!!」

「それって、まさか……真島組の人?」

「お前っ!!何でそれを!?」

酷く驚く兄の顔を見ながら、彩香は自分の足元が崩れ落ちていくような感覚に襲われていた。


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