「……じゃあ、やっぱりマフィア絡みだったんですね」



話を聞き終わった秋山は煙草に火を付け、ゆっくりと煙を吐いた。

「まあ、俺も全く関わり無いとは言わんけどな。どのみち、奴は殺されとったやろうな」

「………」

彩香はあまり口を付けていないビールグラスを見つめていた。

「彩香ちゃん?」

心配そうに声をかける真島に

「……兄に手を掛けたのが真島さんじゃなくて、正直ホッとしています。疑うような事を言ってごめんなさい」

そう言って力無く笑ってみせた。

「……ええんや、そんな事。誰だってそう思うわ。気にする事無いで?」

安心したのと、彼に優しく言われた事で、涙が出そうになり

「ちょっとトイレ行ってきます」

と席を立った。



彩香が席を空け、男ふたりカウンターに残される。

「……お兄さんの事で凄く泣いてましたよ、彼女」

「……そうか、彩香ちゃんお前のとこで泣いたんか…」

また、彩香が頼ったのがこの男という事に真島は不愉快さを感じていた。

彼女は秋山に惚れているのではないかと、癪な事を想像してしまう。


「彼女をあんな風に泣かせるような事を、あんたはしようとしていたんだ」

責めるように言う秋山を真島は片方だけの目で睨んだ。

「もし、朝霧殺ったんが俺やったとしたら、お前どないしたん?」

その言葉に秋山は真顔で真っ直ぐ見つめ返す。

「きっと、あんたを許さなかったでしょうね」

「……ほう、俺とヤり合うつもりやったんかい?」

面白いやんけとニヤリと口元の両端を上げるが、その目は笑っていない。


一触即発の二人だったが、彩香がトイレから出てくる気配に気づくとお互い視線を逸らせた。

「すいません、お待たせしました」

「さてと…、話も聞いた事だし、帰ろうか彩香さん。送るよ」

そう言って席を立とうとする秋山を真島は制する。

「ちょい待てや。俺が呼び出したんやから俺が送るわ」

「いや、俺が送りますよ。彼女が今寝泊りしてるの俺が借りてる部屋なんで」

「―――なっ!!なんやてぇっっ!!」

真島は目を見開き素っ頓狂な声を上げた。

「それ、ほんまなんか!?彩香ちゃんっ!!」

「……ええ、まあ…」

真島の問いに曖昧に答えた。

「一緒に…住んどるっちゅう事か?」

「それは違っ……!!」

「そう捉えてもらって構いませんよ。じゃあ、行こうか彩香さん」

否定をしようとした言葉を秋山は遮るように言うと、彩香の手を取る。

「え?ちょっと、秋山さん!?」


彩香の手を強引に引き、店の外に出ようとする秋山の肩を真島はグイッと掴んだ。

「ちょお待てや、どういう事か詳しく話し聞かせて貰おうか?」

「詳しいも何も、今言った通りですよ。……手、離して貰えますか?」

今にも噛みつかんばかりの真島に、秋山は冷静に応える。

二人、暫く無言で睨み合っていたが、真島は彩香をチラリと一瞥すると、チッと舌打ちをし

「勝手にせえや」

と、乱暴に言い放つと、秋山を離した。

「真島さん?」

「はよ行きや」

元のカウンターの席に座り直すと、真島はこちらを見ずに冷たい口調で言った。

「……真島さん…」

そんな彼の横顔を見ながら、もう一度彩香を呼んでみたが、真島はそれには反応せず黙ってウイスキーを口に運ぶだけだった。


「行こうか」

真島に無視された事に軽くショックを受ける彩香を、秋山は外へと促した。


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