「吾朗ちゃぁーん!!怖かったぁぁーー!!」

途端にマリアが真島の首に腕を回し抱き付いた。

「うぉっ!!おいおい、いきなり抱き付くなや」

困った表情の後、やれやれという顔でマリアの頭を撫でた。

「よしよし、怖い思いしたのぅ。大丈夫やったか?」

真島に頭を撫でられながら、うんうんと頷くマリアの肩を掴み、優しく自分の身体から離すと、涙に濡れた目を自身の指で拭う。

「泣くな泣くな。大丈夫や。こんな事もう無いよう、あいつは俺がきっちり処分したるからな」

次に真島は彩香に目を向ける。

「巻き込んでしもうて、済まんかったのう…って…おい」

彩香の唇の端が切れて、血が滲んでいる事に気が付くと、途端に顔が険しくなった。

そばに行き、傷口を確かめるように親指で優しく触れる。

「……殴られたんか…」

真島は目を細め、小さく舌打ちをした。

「平気です。それより真島さんの方が大怪我じゃないですか。……私、真島さん殺されちゃうんじゃないかって…」

彩香の目から涙が溢れてくる。

「あんたもかいな、揃いもそろって泣き虫やのぅ…」

眉をハの字に下げた後、フッと笑った。

「こんな傷、唾つけときゃ治るわ」

そんな彼の顔は、出血のせいか少し青白く見える。

「顔色が良くないです。病院行かないと…」

「そんな大袈裟なもんちゃうわ」

銃弾三発も身体に受けて、大袈裟じゃないとしたら、この人にとっての大袈裟な怪我とは一体どのようなものなんだろうと思っていると、真島は携帯を取り出し電話を掛けはじめた。

「おぅ、俺や。あぁん?大丈夫に決まっとるやろ。それより杉田ビルまで車まわせや。そこに転がってる奴全員事務所まで運んどけ。おぅ、せや。頼んだで」

通話を切ると、「ほな、俺らも行こか」と真島は歩き出そうとしたが、バランスを崩して転びそうになった。

「真島さんっ!?」

彩香は咄嗟に真島を支えた。

長身の彼の身体は思ったよりも重く、思い切り踏ん張ると、蹴られた腹部がズキリと痛み、顔をしかめる。

「は……ヘヘッ。すまんのぅ、ちぃっと躓いてしもうた……」

「吾朗ちゃん。無理しないで」

マリアも真島の身体を支えるのを手伝う。

「平気や言うたやろ」

そう言って、二人の支えを手で制し再び歩き出そうとした時だった。


「真島あぁぁぁぁっっ!!」

突然叫び声が響き渡り、ハッとして声の方を見ると、顔を血で染めた武野が、銃口をこちらに向け立っていた。

「あかんっ!!」

真島が庇うように二人の前に立ちはだかるのと、発砲音が鳴り響いたのは同時だった。

直後、真島の身体が二、三歩後方へよろめくとその場に無言で崩れ落ちた。

「いやぁぁぁ!!吾朗ちゃんっっ!!」

マリアの悲痛な悲鳴がフロア内にこだました。


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