「ちぃーっと痕んなってもうたな……」

彩香の左手首を手に取り、ベルトの痕で少し赤くなった場所を見て真島は目を細める。

「なあ……」

目線は手首から離さず静かに言った。

「もっかいしようや。……今度はちゃんと抱きたい」

そのまま、左手の薬指にまるで貴族のようにキスを落とす。


いつもの彼とは違う仕草。

月明かりにぼんやりと映し出された真島のその行動は、意外にも様になっていて、彩香の心臓がドキリと跳ねた。

「これ……外してもええか?」

薬指の指輪を指しているのだろう……。上目使いで彩香を見る真島の声は少し不安の色がうかがえた。

「……外して貰えますか?」

彩香の答えに「おぅ」と小さく言うと、真島は自分の手でゆっくりと抜き取り、近くの小さなサイドボードの上に置いた。


彼は彩香の頬に手を当てると、そのまま優しく髪の毛をすくように滑らせた。

「俺の女んなってくれるか?」

真島の手の感触に、気持ちよさそうに目を細めながら彩香はコクリと頷いた。

「何だか夢みたい……」

「フッ…俺もや。幸せすぎて恐いくらいや……」

「真島さんにも恐いって感情あるんですか?」

大人しく髪を撫でられながら彩香は訊いた。

「せやなぁ、今はあんたを失う事がいっちゃん恐いわ」

ゆっくりと彩香をベッドに押し倒す。

「頼むから、ずっと俺の傍におってな。あんたが嫌や言うても、もう離さへんで」

軽くキスをした後「覚悟しいや」と言うとニヤリと笑い、今度は深く口付ける。

彩香もそれを受け入れながら、真島の背中に自分の腕をまわした。

「んっ…真島…さん…」

「彩香……」



ベッドの上で絡まり合う二人の吐息だけが聞こえる部屋。

その傍ではサイドボードの上に置かれた指輪が、月明かりに照らされ赤く静かに輝いていた。


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