「………彩香チャン」
「え?」
突然、自分の彩香を呼ばれて、驚いて真島の顔を見る彩香に
「ホンマ、有り難う。大事に使わせてもらうわ」
真摯な目で見つめられて、彩香は照れたように笑った。
「ほな、今日はおおきに」
「ええ、また遊びに来て下さいね、真島さん」
「言われんでも、また来るわ」
真島の言葉にフフッと笑って、「では」と彩香は扉を閉めた。
「………」
手の中にある包みを見つめる。
ここ神室町は、日本有数のキャバクラ激戦区である。
様々な理由で店をたたむ店舗を、真島は星の数ほど見てきた。
「頼むからこの場所、俺から奪わんといてな…」
まだ明りの灯っていない、『ロンディネ』の看板を仰ぎ見ながら
ここだけは失いたくないと
真島は切に願った……。
index
top