品田は、そんな男の後ろ姿を見送ると、唖然と立ち尽くすなつみを振り返る。
「帰ろっか?」
優しく笑う品田の顔に、何だか力が抜けその場に座り込んでしまった。
「えっ?なつみちゃんっ!?」
慌てた様子の品田が駆け寄る。
「ごめん、ちょっと品田さんの顔見てホッとしたら力が抜けちゃって……」
「大丈夫?」
心配そうに顔を覗き込む品田に、なつみはふと何かを思い出したような顔をした。
「そういえば、品田さん何でこんなところに?」
品田はなつみの質問にハッとした顔をすると、目を泳がせる。
「え?いや……ちょっと煙草切らしちゃって、そこのコンビニまで買いに……ね」
「うちの近くにも煙草置いてあるコンビニあるけど?」
「え……そうだっけ?ああ、そういやそうだね。あー……うん、ははっ、うっかり忘れてたよ」
「…………」
多分嘘だ。
彼は、なつみが心配でこっそり後をつけて来ていたのだろう。
この寒空の下、ずっと。
そう思った途端、胸の奥がギュッと苦しくなった。
「品田さん……」
差し伸べられた大きな手をとると、それは氷のように冷たく、なつみの胸は更に締め付けられた。
「なつみちゃん?やっぱりどっか怪我した?」
「え?」
「泣きそうな顔してる」
「あ……」
品田の顔がなつみの目を覗き込もうと近づいて来たので、慌てて顔を逸らした。そして、品田の手につかまり、勢いよく立ち上がった。
「は、早く帰ろ。こんな所に居たら、周りの人に誤解されちゃう」
言われた品田が、二人が立っているホテルの看板を見上げ、笑った。
「あー……、あはは、ほんとだ」
「品田さん……」
「ん?」
「……ありがと」
赤い顔を見られないように、品田の方をみないまま、彼の冷え切ったその手をギュッと握った。
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