「成程……ね。それで代わりに金を返そうと?」

品田は真剣な眼差しのまま黙って頷いた。

「…………」

秋山は何か思案している様子で、暫く無言のまま煙草を吸っていたが。

「結構前にさ、来たんだよねここに」

「え?」

「金を借りに、その子の弟がさ」

「春樹君が?」

「勿論断ったよ。未成年にそんな大金貸せる訳が無い。……まいったよ土下座までされちゃって」

「…………」

高校生が大金を借りに金融屋を訪れるのは勇気の要る事だろう。
土下座をする春樹の姿が脳裏に浮かび、品田は悲痛な面持ちで俯いた。膝の上の自分の拳にグッと力を込める。

「それで、融資の件なんだけどね」

品田は顔を上げ、秋山を見た。

「お断りするよ」

「……え?何でですか!?テスト合格しましたよねっ!?」

噛みつくような勢いで立ち上がり、テーブルに両手を付いて前のめりに近づく品田を、秋山は両手の平で制止しながら話を続けた。

「……品田君さ。そのなつみちゃんって子、自分らの代わりに借金背負ったあんたを見て、何も感じない人なのか?」

「それは……」

品田は左右に目を泳がせた後、ソファーに力無く座り込みうなだれてしまった。

「テスト……やり損じゃないすか……」

「うん、まあそういう事もあるよね」


何か力になりたいのに何も出来ない。自分の無力さに苛立つようにソファーの背もたれを拳で殴った。

秋山はそんな品田に苦笑いをしながら煙を吐いた。そして、灰皿に煙草を押し付けると、こんな話をしだした。

「その金崎組なんだけどさ、金融と不動産を主な収入源にしてる東城会の三次団体らしい、うちも嫌がらせされてて困ってるんだよね」

「……え?東城会の?」

「リンクスの周辺の土地、近くで再開発の話が進んでて地価が上がるって噂なんだよ。奴らの目的は多分借金で首回らなくさせて土地を店ごと手に入れる事なんじゃないかな?」

秋山の言葉に、品田は眉を顰めた。

「それって……」

「仮に金を返せたとしても、また違う形で嫌がらせして来るんじゃないかってこと」


結局はあの店を手放すしか無いと?
そんな馬鹿な話があるか。



───東城会か……。


そのワードを聞いた瞬間から、品田の頭の中にひとつの解決策が浮かんでいた。

これは禁じ手かも知れない。だが、これ以外もう他に突破口は見いだせなかった。



頼ってみるか、あの男を。



「秋山さん、すいません時間取らせて。俺、行きます」

品田はそう言うと、ソファーから立ち上がりスカイファイナンスを後にした。

必ず首を縦に振らせてみせる。話の流れによっては土下座だってしてやろう。



だが、その前にやらなければならない事があった。


品田はひとつの覚悟を胸に、天下一通りを歩き出した。


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