梅乃が仙蔵を見送り、ひとつ欠伸を出した時、門が勢いよく開かれる

「いけいけどんどーん!到着!!」

砂埃を上げて走ってきたのは六年ろ組の七松子平太。
体育委員会委員長、体力筋力は化け物級。この子は間違いなく戦忍に向いている。
この子一人で、劣勢が優勢にひっくり返る。…将来、そんな忍になるだろう。

「お帰り。七松くん。君は2番乗りだよ」

「2番か〜今日こそ1番になろうと、道なき道を走ってきたというのに」

道ではなく森の中を走ってきたのだろう。小平太の頬や手には小さな擦り傷や髪の毛には葉や小枝が絡まっている

「1番は相変わらず立花くんだったよ。でも今までで一番良い順位だったよ」

「そうだな!2位は悔しいが次こそは1位をゲットするぞ」

「お風呂に入ったら医務室に言って擦り傷を治療して貰うのよ」

そう言って梅乃は小平太にプリントを渡す

「あ〜また書類か。私書類は苦手なんだが」

「七松くんはプリント出すのはいつも最後だからね。今回は早めに出して頂戴。後手に回せば回すほど面倒だし、細かい経過が思い出せなくなるよ」

「梅乃先生は厳しいな〜。細かいことを気にしない私にそんな事をさせるとは」

「自分で細かいことを気にしないって言っちゃう辺り、君らしいよ」

「梅乃先生、そういえば翡翠って知っているか?」

「…翡翠?さぁ、何だったかしら」

「いや、私も解らないから梅乃先生に聞いたのだが…」

「でもなんで突然翡翠だなんて」

「敵陣の殿様が言っていたのだ。ここにも”せきようの翡翠”を知る者はいないか。と」

「その戦場にいた殿様の名前はわかる?」

「確か朝鳥、と呼ばれていたな。幟(ノボリ)は白地に黒の鳥の横顔だ」

「それはドクツルタケ城だろう。ドクタケ城と同盟を組んでいる悪い噂の耐えない城だ」

「なるほどな。まぁせきようのなんとかを探しているのが気になったが、我々忍術学園には関係ない話だな」

「七松くん、今の話は他言無用よ。噂に尾鰭がついて一人歩きすることもあるからね」

「わかった。誰にも話さないようにしておこう。…っと、汗が冷えてきて寒くなってきたから私は風呂に行く!それじゃ」

「おつかれさま」

梅乃は七松に手を振りその背中を見送る



せきようの翡翠


その名を梅乃は心の中で噛み締めるように呟いた