逆先夏目の独白

失恋した。

ボクにハ、幼稚園の頃からすきな人がいた。
いた、なのは学校で好きな人にはすきな人がいると聞いてしまったからだ



今も好きだけど、好きだった人からある夜メールが来た。
内容は『今から海行こうよ、というか海で待ってるね』というもの。今何時だと思ってんの?23時過ぎてるんだけど。
キミ、本当に女の子だという自覚が無くて心配になっちゃうよ。

その通知を見た瞬間、ボクは既読をつけることも返信することもせずに寝ようとしていた体を起こして、髪の毛を整えて恥ずかしくないような服を探す。
まさか、いつかキミとデートする時ようにと思って買った服を着る機会が今日だとは思わなかった。
その服を着てみるけど、夜なのにきまりすぎてて張り切ってるように見える。

結局、メールが来てから10分も既に経っている。
キミに夜、1人で外に出てほしくないと願いながら、自分が外に1人でさせている状況に腹が立つ。
携帯も何も持たず、体ひとつだけでキミの元に急いで向かう。



海に着くと、キミは1人防波堤を歩いている。月光に照らされたその姿はまるでランウェイを歩いているみたいでぼーっと眺めてしまった。

急いで走ってキミに近づく度にキミの顔がはっきりと見えてくる。


その顔は、本当に''好きな人に恋している姿''で。
好きな人がいるという噂は本当だった。
なまえは好きな人がいるんだと嫌でも分からされる。


「夏目くん、来てくれてありがとう」
「こんな夜遅い時間になニ?明日も早いんだよネ」
「ご、ごめん。早く用事済ませるね」


キミが他のやつのモノになるのが気に食わなくて、大人気なく悪態をついてしまう。



恋をしている姿は綺麗だ。占いをしていると、たくさんの恋に悩む人と出会う。彼らは皆、すきな人を思うといつもよりかっこよくまたはかわいく見える。
それは占いをしていくうちにどんな顔が分かるようになったからなまえが誰かをすきなのは一目瞭然で。
そのすきな人っていうのは僕じゃないってことを僕は知っている。

だって、なまえは僕を1度も恋している目で見たことがないから。


「ねエ」
「あ、えっと……あのー、その、す、」


月光の下、誰かを想い、恋焦がれる姿はボクにはおもしろくない。そっとキミに近づき、キミだって知らないボクだけが知るキスをキミの髪に落とす。

''他のやつに盗られるなら僕のになればいいのに''

という願いを込めて。
でも、それをキミは気づかない。無情にもキミは今からボクに恋愛相談をする。

どうやったらすきな人と付き合えるの?って。

聞かれたら、ボクは答えてやんない。
せめてもの仕返しだ。

固まって動かないキミにボクは声をかける。なんてったって、ボクはキミがすきだからキミがボクに相談しやすいように環境だけは作ってあげる。感謝してよね。

「話聞いてル?」

「あ、ごめん。何の話?」

「このコンパスのことだヨ」

「コンパス?占いの道具?」

「……ボクにとっテ、大切なものだヨ」

キミは覚えてないんだ。
お揃いで昔買ったのに。
キミはボクに「私これ一生大事にするから、夏目くんもこれ一生大事にしてね」なんて言葉を残したからボクは未だに持ってるのに。
キミの記憶には少しも残ってないんだ。

キミはボクを人生の1部として、置いていくんだね。
ボクはキミのために一緒に歩く道を空けて待っていたというのに。
違う。そんなこと思いたくない。
キミはキミの人生を歩めばいイ、ただその休憩地としてボクを横に置いてほしいだけ。

ボクは体は大人になったけど、心は子供のまま。
それもキミと出会ったあの時で止まっている。
キミはすきな人を想って、そんな顔をするようになった。
ボクを置いて先に進むんだね。応援してるよ。

なんて言えるわけがない。今でも無理やりキミをボクのにしたいと思っている。ほら、ボクはまだキミのことを考えられない子供のままだ。

キミはボクを置いて進む。
ならボクも進むべきだ。

キミを思い出させるこのコンパスはいらない。
これを見て、ボクはこれから何度も苦しむだろう。
そんなモノさっさと捨てた方がいいのに、捨てられない。
このコンパスがボクとキミを繋いでいると思っていた。けどキミはこのコンパスが無くても先に進む。なら、ボクもコンパス無しで進むべきだ。


キミに伝えたいたった一言。
''僕を置いていかないで''なんて言う言葉は、キミを困らせるから言えない。
その言葉は、このコンパスとともに海に投げ捨てた。

「え!?捨てていいの!?だめでしょ!!!なにしてんの!?」

「いいんだヨ、もウ……」

「そうなの?ほんとにいいの?今ならまだ取り戻せるよ」

捨てたら少しは楽になると思ったのに全くならない。
やっぱりボクはキミが好きだ。コンパスなんかなくてもキミを何度も思い出すだろう。
だから、

「いいヨ」

「そう」

「それデ、話ってなんなノ?ボク、そろそろ家に戻りたいんだけド」

「そうだよね、!夏目くん、聞いて?」

その先の言葉を聞いたら、ボクはきっとキミを忘れることができなくなる。先にボクを振ってもらわないと前に進めない。キミの話を親身になって聞いてあげることなんてできない。

「ちょっと待っテ、先にボクの話聞いテ」

「うん、いいよ」

「なまえがすき」

「まって、今なんて?」

「すきだヨ。君は好きな人がいるって聞いタ。だからボクは君に振られにきたんダ。……振ってヨ」


告白。
叶えようなんておこがましいことは思ってない。
ただボクは意地悪だから、キミが人生を振り返った時に、ボクを振ったということを思い出してついでに僕を思い出してほしい。

振られたら、キミと関わることなんてできなくなる。
キミはボクを友達と思っているかもしれないけど、ボクはキミのことをすきで大切な女の子だと思っているから。

ずるくてごめんね。



ボクが告白するとキミが一筋の涙を流した。

「なんで君が泣くノ?泣きたいのはボクの方なんだけド」

「だって……夏目くんが私のことを好きって言うから」

「そんなに嫌だっタ?ごめン、泣かせるつもりは無かったんだヨ。本当ニ」

「ちがう!私は夏目くんが好きで、でも夏目くんは私なんかのことすきなはずないと思ってたから、うれしくてうれしくて」

え。キミ、ボクのことがすきなの?
ボクを思って、キミはあんな顔をしたの?
すきですきでしょうがないって言う顔を。
信じられない。
ボクはキミが好きで、キミはボクが好き。
そんな奇跡起こるわけなあ、そう思っていたのに。
嬉しい。

でも、

「私なんかって言わないデ。ボクにとっテ、君は世界一愛しい人だかラ」

「っ、……泣かせないでよ」

「なまえこっち見て」

かわいい。ボクの彼女。
泣いても、かわいい。
あ〜あ、目が腫れちゃうよ。

「ボクと付き合ってくれる?」

ボクの告白にキミはうれしそうに微笑んだ。

「はい!もちろん、だいすきだよ、夏目くん!!」
「よかっタ」


星空の下、夢だと思っていたことが現実になって、それは覚めない夢となる。



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2022.9
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