ナンパ回避
ナンパというものは私に縁のないものだと思っていたが、現に今、知らない人にカフェに誘われている。
「お姉さんかわいいねー。そこのカフェ行かない?」
「……」
「返事しないなら無理やり連れて行くよ、ねえ?」
「……」
最初は私に話しかけられてると思ってなかったから普通にスルーしていたけど、視界に入って来た瞬間私に話しかけているんだと気づいた。まあ、相手にはしないんだけど。
「じゃあさ、電話番号だけでいいから教えて?」
あまりのしつこさに舌打ちをしそうなのを耐える。
「電話番号でいいの?」
「お姉さん!?声綺麗だね!!うん!電話番号教えてほしいな」
「電話アプリ開ける?言うよ?」
つらつらと電話番号を言うとナンパしてきた人は、うれしそうに「ありがとー!電話するねー」と去っていった。
× × ×
私がナンパされていたのは、彼氏である司くんを待ち合わせ場所で待っていたからだ。普段なら司くんの方が早いからこんなことは起きないけど。
今日は特別。司くんの撮影が少し長引いているみたいだ。
予定の時刻より20分もすれば、司くんが現れる。
「なまえ遅れました。大丈夫でしたか?」
「あー、」
ナンパされたことを言おうかと思ったけど、本当に電話かかってきたらおもしろいなと思い言わないことにする。もし来なかったら帰りの時にかかってくるかもしれないと伝えればいい。
「何も無かったよ」
「そうでしたか。お待たせしてすみません。行きましょう」
さりげなく司くんに腕を組まれ、司くんおすすめのカフェに向かう。色んなことを考慮して半個室っぽいお洒落なカフェ。
私はブラック、司くんはケーキを頼み、待っている時に不意に司くんの携帯に電話がかかる。
「なんで今……。少し出てきますね」
仕事の電話だと思ったのか、そう言って外に出ようとする司くんを引き留める。
「大丈夫だよ。スピーカーにして出てみて、もし仕事の話だったらごめんね」
「ど、どういうことでしょうか」
「多分おもしろいもの見れるからさ、ね?」
そう言うと司くんはスピーカーにしてその電話に出る。
もしもし、と言いそうなのを私の指で司くんの口を塞ぐ。
「あ、もしもし〜?さっきのお姉さんだよね?今暇かな〜?」
案の定、相手はさっきのナンパしてきた人。司くんは何事だ、と思い塞いだはずの口を開けて「誰ですか」と一言。
「あ、あれ?お姉さんじゃない?掛け間違えたかなぁ、それともわざと?はぁ……まあいいや。なんかすみません!」
騒がしくそれだけ言って電話が切れる。
司くんは結局なんだったんだろうと思ってるいるのに対し、私はあんまりおもしろくなかったなと思う。
「なまえさっきのは誰ですか?」
「んー、司くん待ってる時にナンパしてきた人?」
「hit onですか!?」
「ひっとおん……?」
「男性が女性を口説くというやつですのことです」
「あ〜、そういう意味。そう、ヒットオンされたの」
「何もされなかったですか!?」
向かいに座ってたはずなのにいつの間にか横に座ってべたべたと私の体に傷がないか確認する司くん。
「電話番号聞かれたから司くんの答えた、だめだった?」
「いいえ、なまえのを答えなかったのは偉いですよ。でも、私がもっと早く着けてたらこんなことにはならなかったのに……」
「別に嫌な思いしてないし大丈夫だよ」
「私が嫌なんです!!」
次からはcafeとかに入って待っているんですよ!?と注意深く何度も言われた。
――――――
2022.11
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