年越し蕎麦

[「大晦日は年越しそば食べないと無理っすよ〜……」


食後ニキくんが直々に私のところまで言いに来た。確かに夜ご飯はお味噌汁に蕎麦を入れて少し年越しそば感を出してみたけど年越しそばでは無い


「じゃあ作ろうかな」
「ほんとっすか!?僕手伝うっすよ〜」
「ほんと?助かる」


二人で厨房に立つ。
生麺のそばは買っていなかったから無くて変わりに乾燥そばを使う。奥の部屋から六十人前分取ってきて机に並べる。


「ええ!?これ十割そばじゃないっすか!?」
「ふふん、資金が潤沢だからね」


嬉しい事にアイドルの健康は大事だからと良い食材を買うためにたくさんのお金を頂いている。だから頂いた分良いものを提供したくて食材から良いものを選んでいる。


「えっと、今寮にいるのは何人だっけ……四時台から生放送の子たちもいたよね……ということは……?」
「わかんないもんはわかんないんで少し残してほとんど茹でたらいいんじゃないっすか?」
「確かにじゃあ十人前は置いといて他を茹でよう……待って、天ぷらほしくない?」
「ほしいっす!」
「今から一時間くらいあるから二種類くらいなら揚げれるかも。何食べたい?」
「えびとさつまいもとかぼちゃとなすと……うう、悩むっす〜」
「エビに決まってんでしょぉ!?」
「あとから揚げねェ?」


どうしたものか、と思っていると少し遅めに夜ご飯を食べに来たKnightsの瀬名さんと嵐ちゃんが希望を言ってきた。もちろん他の三人もいる。


「みんなお疲れ様〜。Silent Oathよかったよ。みんなかっこよくてテレビに釘付けだった」
「ありがと」
「それは良かったです。特に大きな失敗も無く終えれて嬉しいです」
「おれらはKnightsだからな!」


三者三様な反応だけどみんな楽しそうでよかった。


「明日の朝イチも楽しみにしてるね。……じゃあ、天ぷらはえびとかしわ天でいい?」
「いいっすよ〜」


椎名くんからもオッケーが出たところで猛ダッシュでかしわを切り刻んで、一口サイズにしたらジップロックに秘伝タレ共に入れて三十分ほど浸ける。
四台のコンロの上に小学校の給食で使うような大きな鍋を置いて湯を沸かす。その間にえびの頭と綿も取る。約五十匹を椎名くんと分担しながら作業する。



「今年も終わっちゃうね……」
「早かったっすね。でも楽しかったっす!」
「良い一年だったんだね。来年もたくさんライブ出来たらいいね〜次こそ行きたいな」
「予定が合えばいいっすけど……姐さん忙しいっすもんね」
「そうだねぇ。でもみんなをテレビで沢山見れて良い一年だったよ」


そうこうしてるうちにえびの綿取りは終わって 。


「椎名くん揚げ物は得意?」
「得意っすよ!」
「じゃあ、この先やっててもらってていい?私今からヘルシーなかしわ天と普通の二種類作るから手が足りなくて……」
「任せてくださいっす!」


ということでえび天ぷらは椎名くんに任せる。


まず、カロリー控えめな方を作る。ジップロックから取り出してひとつずつ綺麗に形を整えたら薄力粉に通す。真っ白に染まったかしわに軽く天ぷら粉をかける。かけたら余分な粉を落とす。
ここで油で揚げる方とオーブンで焼く二種類に分ける。分けたらトレイに天ぷら粉が付いたかしわを並べて予熱したオーブンで少し焼くと完成。
これは揚げないからヘルシーなのだ。揚げないからといって普通のやつと大差は無い。普通にサクッカリッてしておいしい。


「椎名くん、えび天ぷら出来上がった?」
「丁度終わったっすよ〜」
「じゃあその油借りていい?」
「どうぞっす」


さっきまで椎名くんがえびを揚げてたから温度も十分。
そのままえびを油の中に落として、火が通るまで二分放置。揚げている間、かしわ達は衣からたくさんの気泡を出してぶくぶく踊るのは見ていて楽しい。
二分経ったら一度引き揚げて、一度で揚げきれなかったものを揚げる。この繰り返しを四回すると全てのかしわ天が出来た。


「椎名くん〜あと蕎麦上げるだけだからそれは私がするね。手伝ってくれてありがとう。お礼にかしわ天の味見をする券を差し上げます」
「ほんとっすか!?僕お腹ぺこぺこなんすよ」
「出来たておひとつどうぞ」


かしわ天を食べてめちゃくちゃにこにこしてる椎名くんを見ながら大きな釜にたくさんの水を入れてお湯を沸かす。
湧いたお湯に蕎麦を入れて規定時間茹でる。茹で終わったら氷水で締めて完成。
これにて年越し蕎麦は完成した。

後は食べる人が来るだけ。ホールハンズで年越しそばを作りました。天ぷらはえびとかしわ天です。人数分用意してるので食べたい方は来てください
と流す。


× × ×


ホールハンズにメッセージを流して数分。一番最初に来たのはKnightsの五人。
五人一緒に来るなんて仲良いなとにこにこしちゃう。

トレイをスライドさせて、まず私がお皿に蕎麦と出汁を入れる。それをまず受け取ってもらってレーンに沿って進んで自分が食べたいものを取ってもらうというセルフサービスだ。


「二つに分けられているのは二つ食べていいってことですか!?」
「二つ食べてもいいよ。右側にあるのが油で揚げたやつ。左側にあるのが油で揚げてないやつだよ」
「健康的ですね!では、私は油……、いえ、左側にします」
「新年だしいいんじゃない?」
「いえ。六時間後にはまたテレビに出演するので食べるわけにはいきません」
「さすがアイドルだね」


朱桜くんもアイドルが板に着いてきたなと思うと同時に四時からまた生出演かと思うとアイドルは大変だ。


「油を使ってないってさっき司ちゃんと話してるの聞いたわ。ありがとうね。気軽に食べれるわァ」
「ほんと?良かった〜。嵐ちゃんははっきりカロリーって言ってくれるけど言い出せてない子がいるかもって思えたから二つに分けたの。嵐ちゃん本当にありがとう」
「お役に立てたなら嬉しいわァ。じゃあ早速頂こうかしら」
「ニキくんのお墨付きだから食べるの楽しみにしててね」
「それは頼もしいわね」
「今度は唐揚げで作ってみるからそれも楽しみにしてて!」
「なるくんはもう行くよぉ。後ろが詰まっちゃうからねぇ?」


大分嵐ちゃんと話し込んでしまった。後ろにはまだ三人もいる。
Knightsは五人で合わせて食べるから朱桜くんのなんて麺が伸びてるんじゃないかな…………
その後、超高速スピードで瀬名くんと月永くんと凛月くんに蕎麦を盛った。


× × ×


「エビまあまあおいしかったんじゃない?」
「セッちゃんは素直じゃないねぇ」
「ツンデレか!?」
「くまくんもれおくんも黙る!……リクエスト応えてくれてありがとうねぇ」


トレイを戻した帰り際そう瀬名くんに言われた。
その言葉をもらって、笑顔見れたら作った甲斐があるよ。


「瀬名くんありがとうね!みんなも良いお年を!」



――――――
2023.1.1
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