騎士たちへ



 楽屋のテレビを付けたらちょうど、音楽番組が放送されているところだった。深い青色をしたサイリウムの海。観客席から沸く黄色い歓声。騎士団を模した衣装に身を包んだ5人が、ステージの中央に立っていた。
「あ、『Knights』」
「あらほんとだ!茅ちゃん、お兄さん出てるじゃん。やっぱりかっこいいよねえ。羨ましいなあ、『Knights』の泉くんがお兄さんなんて」
 ボクの髪の毛を触っていたメイクさんが、鏡越しでも分かるくらいのうっとりとした表情を浮かべて画面を見つめている。ボクはそうですかね、と曖昧な返事をしながら同じようにテレビ画面の方を見た。
 ……羨ましいかどうかは分からないけど。大きな舞台上で歌っているみんなは、彼女の言う通りすごく輝いていた。去年のボクがステージの袖でプロデュースに追われていたから、というのもあるかもしれないけれど。出会ったばかりの頃に比べても、何十倍、何百倍もその輝きが増しているように思う。
 せんぱいが作ったメロディを、BGMに乗せてみんなが奏でていく。かさくんがにっこりと手を差し伸べてから、その後のくまくんは優しく抱きしめるみたいに。お兄ちゃんは胸に手を添えながら憂いを帯びた表情で、嵐ちゃんは優しい眼差しで観客席の方を見つめる。最後に、れおせんぱいが高らかに歌い上げて──。
 1番近くの、特等席はもうボクじゃなくなってしまったけれど。新入生が増えたりだとか、外野のボクは知らないことだらけになってしまうのは少し寂しいけれど。やっぱりボクはみんなのことが、『Knights』のことが大好きで。これからも、ボクやお姫様のことを導いてくれたらって思うんだ。


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