小さな企み



「ちょっと、またずれてるよ?何度言ったらわかるの、いい加減にしてほしいんだけど?」
「お兄ちゃんうるさい!」
 折り紙で作った輪っかを壁に貼り付けていたボクに、後ろから位置を確かめていたお兄ちゃんが声を荒げる。反射でつい、ボクの方も声を荒げてしまう。
「どっちもうるさいわよ、主役が起きちゃうかもしれないでしょ?」
 なるちゃんが似た者同士ね、と首を振る。慌てて主役―れおせんぱいの方を見ると、まだ心地よさそうに寝息を立てているところだった。ここ数日ほぼ寝ずに曲を書き続けていたみたいだったから、よほど疲れていたんだろう。壁に星形のオーナメントを飾り付けていたかさくんが、それにしても、と頬を膨らませた。
「まさか事務所で曲を書きながら寝てるだなんて。計画を立てていたこちらの身にもなってほしいものです」
 サプライズの計画を持ち出したとき、一番ノリノリで案を出してくれたのはかさくんだ。れおせんぱいの誕生日というのももちろんだが、サプライズをするということ自体を楽しんでいたように思う。
「まあ月ぴ〜らしいけどね。っていうか、動かしたら起きちゃいそうだし」
「くまくんはどさくさに紛れて寝ないでくれる? 暇ならこっち手伝ってよ。れおくんいつ起きるかわかんないから早く終わらせたいし」
 床に寝転がっていたくまくんの背中をお兄ちゃんが引っ張る。「うげ〜〜〜〜」という声をあげながら、くまくんがずるずると引きずられていった。
 一通り壁に貼り終えたので余った輪っかを集めると、そこそこの量になってしまった。せっかくみんなで暇を見つけてはちまちま作ってきたものなので、捨ててしまうのは少し勿体ない。でも他に飾るところもないし……?
「あ、そういえばソファの周り、何にも飾り付けしてないよね」
「れおくんが寝てるからね。起こしちゃったら台無しだし……ちぃ、それどこに飾るつもり?」
 お兄ちゃんがボクの意図に気付いた時にはもう、ソファの周りを飾り始めていた。
「わお、チ〜ちゃんってば大胆〜」
「気を付けてくださいね、レオさんが起きてしまったら計画は水の泡になってしまいます」
 日付が変わるまで、あと5分。
 れおせんぱい、起きたらびっくりするかな。


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