凪くんと失敗サプライズブランチ
もうとっくに朝ではないことをせせら笑うかのように、何気なく点けたテレビから午後のお天気が伝えられた。結構寝たな。
大きな口を開けて欠伸をひとつ噛み締める。う
っすらと出た涙が視界を歪めた。
隣を見れば身体を縮ませ、丸くなって寝る彼女。白い背中が無防備にさらけ出されている。悪戯してやろうかと考えたが、寝起きが悪い彼女に殺されかねないと思い留まる。
ぼんやりテレビを眺めれば、始まるのはお昼定番のランチ特集。画面上では美味しそうな料理が次々と咀嚼されていく。無意識に、いや本能的にそれを羨んだようでお腹が唸り声をあげる。
ーーあ、そういや昨日買ったケーキ食べなきゃ。
ベッドから立ち上がろうと、もぞもぞと布団から足を出そうとすれば、隣で眠る彼女が小さく唸る。そっと振り返って様子を見守る。
「‥‥‥んー」
こっそり用意しようかと思ったのに、起きてしまった。閉じられていた瞳がゆっくりと開かれていく。
「おはよー」
「‥‥‥おはよ」
目の焦点が合ってから朝の挨拶をしたのだが、眉間に皺を寄せたままむくりと起き上がる彼女。ホント寝起きが悪い。
ーーてか‥丸見えなんだけど。
加えて寝癖がばっちりついた髪も恥じらうこともなく、欠伸を噛み殺し、目を擦る彼女。そんな彼女に床に落ちていた下着を手渡す。
「‥‥あ、ありがとう。床にあったんだ」
なんて笑いながら、薄ピンクを白い肌に乗せた。脱がせるのもエロいけど、着けてるの見るのもエロいなー。
「ね、誠士郎」
「‥何?」
「私、コーヒーがいい」
胸元から視線を上げれば、真っ直ぐにこちらを見ている瞳。煩悩を怒られるのかと思えば、朝食ならぬ昼食に関する注文が入る。
目の前の彼女の視線を追えば、いつの間にかデザート特集へと切り替わったテレビをぼんやり見つめている。拒否権はないらしい。まぁちょうど良いか。「イエス、ボス」と返事をして布団から抜け出して台所へ向かう。
コーヒーとレモンティーを淹れ終えて、リビングへと向かえば、椅子へちょこんと座る彼女。心なしか髪型が落ち着いている。洗面所行ったな。
テーブルにコトンとマグカップを二つ置き、踵を返して冷蔵庫へ向かう。白い箱を手にして戻れば彼女がおかしそうに笑う。
「今日は誠士郎に尽くしてもらってばっかり。いつもと逆だね」
「いつもは央にお世話してもらってるし‥まぁこんな日もいいんじゃない?あとコレ、ささやかなお礼」
持って来た箱を彼女に手渡し、向かいの席に座る。
ーー白く柔らかそうな四肢が眩しく、視線を何処に向けるか迷う。
そんな俺の気持ちなど至って興味がないと言わんばかりに、中身のケーキへと目を輝かせる彼女。
「わー美味しそう!誠士郎、ありがとう」
「うん、どーいたしまして。‥なんか俺ら恥ずかしさとかもうないよね」
「え、ダメ?」
「いや別にいいけど」
「あ、はい。誠士郎の分」
「あーんしてくれないの?」
「はい!早く食べよ」
俺の甘えをあっさり笑って一蹴し、差し出されるのはシフォンケーキと生クリームの小さいカップ。彼女は赤とピンクの可愛らしい装飾のムースを選択したらしい。
レモンティーを啜りながら、彼女がフォークを刺す様子を静かに見守る。至福の時と言わんばかりの表情の緩み具合に、思わず笑いが漏れる。そんな俺へ視線を向けた彼女は気まずそうにホイップをつけたままの口を開く。
「あー誠士郎、ゴメン」
「え、何?」
「首、ひどいことになってる」
「あー‥そういや誰かさんに首ばっか攻められたっけ」
「‥‥そ、そんなこと言ったら私の胸元だって誰かさんのせいでひどいんですけど?」
「わー、ホントだー」
「もー最初っから見えてたくせに!棒読み、白々しいー」
なんて二人で笑い合いながら、フォークを柔らかなシフォンケーキに落とす。生クリームをつけて咀嚼すれば、程よい甘みに気持ちが満たされる。
「なーんかこんな感じ、好きかも」
「ん、私も」
ぼんやりと晴れた青空を見ながら、下着姿のままケーキを食べる休日。何処へ行く訳でもなく、二人で笑っていられればそれでいい。
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