冴さんがドレスに衝動的になる


半年前、友達の結婚式に行くからドレスを買わなきゃと嬉しそうに話していたのを思い出す。会ったことはないが、こちらの帰国に合わせて日取りを決めてくれるぐらいには仲がいいらしい。
帰国直後からいつもより少し高めのスキンケア用品を買い揃えて使っており、気合いの入れ方が自分が主役の時と同様でその楽しみさ加減を物語っていた。
そして今日がXデー。朝から忙しなく何度も鏡を覗き込んだり、持ち物を確認したりと部屋中を歩き回っている。

「冴、ちょっと助けて〜」

そんな姿を見守りながら淹れたてのコーヒーを啜っていると、隣の部屋から央の情けない声が聞こえてくる。
何事かと扉を開ければ、こちらに背を向けて長い髪を片手で束ねて待っている。近付けば「ん」と背中をややこちらに寄せる。


ーーー何とも無防備な首筋と背筋。
濃いドレスの色と真っ白な肌のコントラストが理性と時間感覚を失わせる。


央は間違いなく何も考えていない。それが妙に腹立つ。
そんな苛立ちを込め、背中の窪みにそっと唇を寄せ、背骨に沿って舐め上げる。
瞬間、ビクリと身じろぎ、すぐさま体ごと振り返る。目を丸くした真っ赤な顔と対面する。


「ちょ、え、何してんの?」
「別に。やりたいことをやっただけだ」
「そ、そうですか‥。で、申し訳ないんですが上げて頂いてよろしいですか?」


しれっと言い切った俺に何を返しても無駄だと悟ったのか、恥ずかさからくる怒りをすぐに仕舞い込む。そして今度は丁寧に頼みこんできた。


ーーー今度は首筋に噛みついてやろうか。
なんて思いながら顎をしゃくって回れ右を指示するとジト目で不信感を露わにする。


「何だよ」
「何かロクでもないこと考えてるでしょ」
「あ?上げなくてもいいなら俺はそれでもいいが」
「すみません。よろしくお願いします」


少し脅すとすぐさま素直に後ろを向いた。さぁどうしてやろうか。予め集合時間を聞いときゃ良かったなと思いつつ、手始めに腰を抱き寄せることにした。最悪送ってけばいいだろう。




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