「わしらはクビなのだとパウリーが言っておったそうじゃ。」
私達、麦わらの一味に敗れた元CP9は海軍船を奪い、航海をしていた。現在、時間は夜。天気は雲ひとつなく、星がよく見える日だった。
星空が綺麗なのに気づいた私は今日の見張り番で、見張り台にいるカクの元へ行き、取り留めのない話をした。星空はどこまでも続いていて吸い込まれるようだった。話に一区切りがつき、沈黙が続いていた。その沈黙を破り、カクが言葉を発したのだった。
『・・・・・・そっかー。クビかー。ふふっ。』
「なんだ、嬉しそうじゃな。」
なんか上手く言えないけど、パウリーらしいなと思った。金関連はだらしないけど、真っ直ぐで、仲間を信頼し、信頼される彼は自分なりのケジメを付けようとしたのだろう。
それでこそ、私が眩しいと思ってしまった彼だ。
私は何も言わなかったけどカクは何となく悟ってくれたようだった。私達の間でウォーターセブンでの話は暗黙の了解のような感じでしてなかったので、次々と思い出が蘇ってきてしまう。
『ていうことは、もうガレーラの食堂のチャーハン食べれないんだね。残念。』
「わしは生姜焼き定食が好きじゃ。」
『へぇー!私あれ、一回も食べたことないんだよー。』
「それは惜しいことをしたのう。」
『全く。』
二人で顔を見合わせて笑う。
しかし、ふっとカクが真顔になった。
「のう、名前。」
『なにー?』
「パウリーのこと、好きだったんじゃろう?」
世界が一瞬止まったように思った。
『・・・・・・違う、と思う。そりゃ私とパウリーは・・・恋人同士だった。』
週末にはどっちかの家に泊まったり、仕事帰りにご飯を食べに行ったり。そんな普通?な恋人同士だったのだ。
『私は彼の笑顔が眩しくて素敵だと思ってたけど、私は彼と一緒にいる時間が嫌だったの。・・・彼に名前を呼ばれる度に逃げ出したくなって、それでも踏みとどまって・・・。彼と身体を重ねる度に胸にじんわりと吐き気のような黒い何かが広がって、それを堪えて・・・。別れ際に言われるまた明日な、の言葉に苦しくなって・・・。』
「それが・・・恋や愛と言われる感情ではないのか?」
『・・・・・・。』
「わしらはいつか絶対に別れが来ると知っていた。パウリーとも別れが来る。それを知った上で恋人関係を続けないといけなかった。そこに恋愛感情があったからこそ逃げ出したくなったり、もやもやしたり、苦しくなったりしたんじゃないかのう?」
恋愛感情が、あった?
『そっかー。』
「・・・・・・・・・。」
ポンっと私の頭の上にカク手がのった。そんな慰めるようなことをされたら泣くに決まってる。
『・・・・・・・・・・・・・・・まだ消化できてないけど、私は・・・彼のことが好きだったのか。・・・・・・・・・あぁ、だからかな、カク。』
私、最後に見たパウリーの瞳が頭から離れないの。
忘れられない。
彼女は泣いた。
─────────────────
ベットに仰向けになりふぅーーっと深いため息をつく。ここ最近アクアラグナやら市長暗殺未遂事件やらエニエスロビーでのゴタゴタやらが続き、家に帰ってきていなかったパウリーは久しぶりの帰宅だった。
近頃は忙しくて無理だったがこうしてゆっくりベットに横になっているといろいろ甦ってきてしまう。あいつらのこととか。
さっき気づいたことだが写真立てに飾っていた彼らと撮った写真が無くなっていた。自分たちの顔をあまり残さないように取って行ったのだろう。
しかし、あいつらは気づかなかっただろうなー。おれが、写真を何枚か本に栞のかわりにしてはさんでいたこと。
肩を組みながら笑顔を見せている写真の中の俺たち。
カク、ルッチ、カリファ、かんな。
次々と思い出が蘇ってくる。
ブルーノの酒場で酒を一晩中飲んだり、くっだらねー話で死ぬほど盛り上がったり。
ぽつぽつと思い出が浮かんでは消えていく。
恋人だった名前。
あいつの誕生日の日にネックレスをあげた。あの時、泣いて喜んでくれたのは嘘だったのだろうか。あの時の笑顔も。
「・・・おれは本気で・・・好きだったんだけどな。」
頬を何かが伝っていった気がした。
夜はまだ明けない。