夢を決めた日*
下忍になった俺は、忍者学校の演習場で手裏剣を投げていた。
俺が思ったとおりに手裏剣が的に刺さっていく
もっともっと上手く強くなりたい。
演習場のそばを●●●と歩いている時のこと…
修行中の生徒が投げた数個の手裏剣が●●●に向かって飛んできた。
俺が●●●を押しのけて庇っていなかったら●●●の綺麗な肌に傷が付いていただろう。
あの生徒の手裏剣が当たったのが俺でよかった。
あのとき俺がもっと強かったら、俺も怪我をしないで済んで●●●にも嫌な思いをさせずに済んだのでは…。
そう思うと急いでもっと強くならなくては、と思えた。
そう思って手裏剣を投げていると、いつのまにか●●●が背後にいた。
「ねえねえ」
「…なに?」
今考えてたこと…口から漏れてないよな…。
漏れてたとしたら気まづい恥ずかしい。
●●●の顔が見れなかった。
「カカシはどこまでいくの?」
「.................はあ?」
自分が想像してた質問と違い、一先ずホッとする。
振り返って●●●を見ると柵に頬杖をつきながら空を仰いでいた。
「............」
「...お前の質問の意味がさっぱりわかんないよ」
どこまで、とは次の任務での話だろうか?
質問の意図を聞いても空を見上げて何かを考えている●●●は答えるはずもなく
俺は再び手裏剣を投げはじめる。
背中に●●●を感じながら
今日は図書室に行かないのかね、なんて考えていたら●●●が口を開いた。
「...今日は先に帰るね」
俺は手を止める。
俺が手裏剣を浴びた日からどこかおかしい。
●●●の方を振り向くと俺に笑顔を向けて、
「...はやくかえってきてね」
その言葉に胸が熱くなる。
一度は失った家族がまた出来たみたいだ。
何より●●●と夫婦になれたかのような気持ちになる。
素直に喜びを表現できない俺は再び手裏剣を投げはじめた。
空がオレンジ色に染まりだした頃、
俺は修行を終え、●●●んちに向かっていた。
●●●んちの前について、ドアノブに手をかけ回さずにそのまま手を離した。
手裏剣修行で身体中汚れている。
夜もそのまま眠れるし、ここから10歩の自宅でシャワーを浴びてから行くことにした。
手早くカッと熱いシャワーを浴びて、普段着に袖を通す。
「おかえり」
「...ん」
何度かしているこのやりとりも
夫婦になってもするのかな、なんてまだそんな約束もしてないのに考えた。
●●●が土鍋で炊いた炊きたてのご飯をよそってくれる。
俺は隣の味噌汁をよそう。
●●●が作った味噌汁を明日の朝も食べるという口実で●●●と一緒に堂々と眠れる。
「いただきます」
「いただきます」
●●●が焼いてくれた魚は美味しくてごはんが進んだ。
好物の秋刀魚じゃなかったが、少しも秋刀魚に負けてない。
土鍋で炊いてくれたご飯も、野菜たっぷり味噌汁も文句なしに美味しかった。
修行で疲れて腹ぺこの体にしみる。
夫婦になったら口実なんて考えずに●●●のご飯が毎日食べられる。
今でも毎日食べているけど、●●●に恋人なんかができようもんならそうもいかなくなる。
そのとき俺はどうするんだろうな、と考えてみたがすぐやめた。
●●●が食後にいつものお茶を入れてくれた。
熱がじんわり体を温めてくれる。
少し話をして、俺は先にベッドへ潜り込んだ。
●●●が髪を乾かす音が聞こえる。
同じベットで信頼するお互いが寝ている。
それだけでずっと深い眠りにつけた。
体が触れ合わずとも、その気配やスースーという呼吸の音だけでこんなにも安心できる。
俺は●●●が眠るのを確認してから眠る。
こんな事は●●●には言えない。
心と体が成長するにつれて、隣で眠るだけなのは少し物足りない気もするがこの関係を壊したくない思いで気持ちを抑え込んだ。
薄いカーテンから差し込む光で薄っすら目が覚めた。
●●●がもぞもぞと起き上がる。
俺は目が覚めてもタイミングを見て起きないといけない。
なぜなら、●●●は俺が眠るこの部屋で着替えをするから。
●●●は気付いてないんだろうなあ、俺が起きてる事なんて。
台所に向かう足音で着替えが完了したと確認して起き上がる。
「おはよ」
朝食も満足だ。
味噌汁もうまかった。
●●●んちを出て、着替えに自宅へ戻る。
用意していた服に着替えて●●●んちの玄関の前で待っていると、ドアから●●●が出てきた。
一緒に家を出て、別々の方へ向かう。