ガチャッ

冷蔵庫をだるそうに開けるのは【勇気の紋章】の持ち主である八神太一。

開けた冷蔵庫からの冷気が少しだけ肌寒く感じる。

小腹が空いた太一は、さっきまでの自分への嫌気をやけ食いで紛らわせようと考えキッチンへとやってきていた。そこには買い物から帰ってきて荷物をテーブルに置く太一の母がすでにいた。

「ねぇ」

太一は買い物から帰って来たばかりの母親にそっけなく声をかける。

「なんかないの〜??」

「ん〜??」

母の上の空な返事に少し苛立ちを覚える太一。そんな太一に母はさらに「うるさいわね。冷蔵庫にないんだったらないわよ」と付け加えた。

「は〜ぁあ〜。ヒカリの奴これから誕生会でケーキ食うっていうのに」

「ケーキぐらい私が焼いたげるわよ」

「えーだ」

「ほんとだって。卵出しといて」

やりィ

思わぬ展開に太一は少しだけウキウキしながら、母から言われた通り冷蔵庫から卵を出した。

すると

ピンポンピンポーン

突然のチャイム。

いきなりの音に少しドキッとしながらも、太一は卵を持ったまま玄関に向かいドアを開けようとした。

ガチャッ!!

しかし太一がドアを開ける前にドアは訪問者によって勢いよく開かれることとなる。

「ハァ…ハァ…ハァ…」

そこにいたのは光子郎。

全速力で走ってきたのか、かなり息切れをしていた。

一体何があったんだと思いながらも、その光子郎の姿から状況判断ができなかった太一は

「よぉ光子郎。あがれよ」

と、ただ呆然としながら言うしかなかった。もちろん片手には卵である。

だがそんな太一とは対象的に光子郎はかなり焦った様子。

「た、卵が…」

「あ???」

「卵が孵ったんです!!!!」

光子郎の言った言葉

意味がわからず太一は自分の持つ卵を見た。

「違います。バカですか?」

「…………。」

「ニワトリじゃない…デジモンの卵です!!!」

光子郎は力一杯に叫んだ。

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