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「上鳴さん、落ち着いて聞いてください。
あなたは"後天性性転換病"という病気であることがわかりました」
そう言われた時の衝撃を、俺は忘れられないだろう。
────PERSICARIA TINCTORIA────
その日はなんだかとてつもなく具合が悪くて、最初は体育祭の疲れが出たんだと思っていた。
学校を休んでまで行ったちょっと遠い病院で、医者に言われたのは「病気のようです」。「風邪ですかね」なんて、ついいつもの軽い感じで返せば返ってきたのは重い沈黙。
"後天性性転換病であることがわかりました"
(なんだそれ)
"親御さんは今から来られますか?"
(2人共仕事だっつーの)
頭に隕石でもぶつかったかのような衝撃を受けながらも、人とは不思議なもので俺は親に電話をかけ、なんだかんだで3人で話を聞くことになってしまった。
医者は深刻な顔をしながらそのナントカカントカ病という病気について、ゆっくりと話し始めた。
呆然とする俺をほっぽって、親(主に母親)の質問を交えながらの説明を要約するとこうだ。
後天性性転換病は"個性"が現れた数年後から稀に現れるようになった、とても珍しい病気であること。
主な症状としては、発症直前にはめまいや激しい咳がおこる。発症が本格的に始まれば男は髪が伸びるし、女は髪が短くなる。時間が経つにつれて本来の性別とは逆の性別に体つきやなんかが変わっていく。
また、症状を抑える薬も開発されているが希少なため、患者以外には渡らないよう、大型の病院でしか取り扱いがないそうだ。
つまり簡単に言えば「性別が反対になる」「薬が出回らない」、ということらしい。
まあ病気とはいえ今すぐ死ぬとかいう話ではなく(ただちょっとだけ短命の割合が高い)、その病気の人が珍しいからたまに誘拐されることもあるみたいだけれど(世間にはいろいろな奴がいる)、普通に薬を呑んで暮らすには特に支障はないらしい。ありまくりだろうというツッコミは飲み込んでおく。
蒼白になっていく母親と、顔が強ばっていく父親の横顔を眺めながら俺は今日の夜ご飯のメニューに思考を飛ばした。カレーが食いたい(現実逃避)
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