― 愛を込めて花束ではなく指輪を ―
「リーブさんって占いは何でも出来るんですか?」
二人並んで食後のりんごを素手で頬張っていたらふと疑問が湧いたので聞いてみた。
「例えば?」
「うーん、手相占い? 花占いとか?」
「手相なら見れますね」
「よろしくお願いします!」
「ふふ。では、左手を見せてもらっても?」
占い好きの私は興味津々でりんごを食べてベタベタな手を適当に拭いて手の平を差し出す。
「行儀が悪いですねえ」
なんて冗談めかして咎めながらも片目を瞑りながら手相を見るリーブさんは真剣そのもの。
惚れた欲目じゃないけど格好いいなあ、やっぱり。
普段の穏やかな口調と笑みとはまた別な表情に見入ってしまう。
一通り見終わったのか急に顔を上げるから見入ってしまったバツの悪さに思わず顔を反らした。
今絶対顔赤い……。その証拠にくすくす漏れ出る笑い声が聞こえるし。
「恋愛運が良さそうですねえ」
「……本当?」
「おや、私の言葉信じてくれないのですか?」
「そんな事ないけど……」
占いにで本人がやるものに関しては十中八九当たる。だから恋愛運がいいと言われるのはとても嬉しい。
だって今目の前にいる人との運がいいって事だもん。嬉しくないわけがない。
照れくささを隠すように空いている手でまたりんごをしゃくりと食べた。
「……ん?」
急に手を強めに握られてビックリする私を他所にリーブさんは眉間に皺を寄せている。
え? 何? 上げて落とす感じ?
良からぬことを考えてしまいりんごを食べる手が止まった。
「ふふ、今が婚期と出ていますね」
「え……」
身構えていた私は予想外の言葉にぽかんとリーブさんの顔を見る。
「ここは一ついかがでしょう?」
拭いたとはいえベタっとしている手にあれ? 何だか違和感……。
ゆっくり下を向くと手の平を上にした状態で指に嵌められていく指輪が見えた。
「え? え?」
「手相によると今が婚期、そして恋愛運もいい、今を逃す手はないと思いますが」
「ええ⁉」
「いかがでしょうか?」
嵌まり切った指輪を一撫でされるとその指をリーブさんのごつごつした指が絡まる。
そんなの答えは一つしかない。
「……幸せにしてくださいね?」
「占わずとも……必ず」
りんごが床に落ちてしまって勿体無いと思うけど目の前の大きな体に抱き着ついた。
ほんの数分の間で感情の起伏が目まぐるしい。
贈られる言葉、嵌められた左手の薬指、嵌められ方も人生初尽くしで今日の事は多分一生忘れない。
「そういえば、本当に手相に恋愛運がいいとか出ていたんですか?」
「さあ?」
「え?」
「私、手相なら見れますけど占ったりとかは流石に出来ないので」
「……」
私は落としたりんごを折角拾い上げたのにまた落とした。
初出:2020/08/23
りんごさんへのハピバ夢