― 夢だけど夢じゃなかった ―
これは夢ではなくギャグです
いいか、これは本当にあった話だ。
今でも俺はあれが夢だったんじゃねえか……いや、夢であってほしいと思っているくらいだぞ、と。
* * *
俺の女運が尽くよろしくない時期だった。
バーで知り合った女とホテルに行こうとしたら任務の呼び出し。その次は電話帳に入っている女を適当に呼んで発散しようと思えばホテルの前で別の女と鉢合わせて修羅場。
配達の依頼をしようと思ってセブンスヘブンに行くともう配達に出たと言われ、そのまま帰るのも癪でティファの淹れたコーヒーを飲んでいたらすごい剣幕で女が入ってきて「その女は何なのよ」とビンタ一発。
どう見ても店員と客だろ。俺は別の一発をかましたいっつーの、と。
口の端が切れていて小さな絆創膏を貼りオフィスへだらだらと戻ったんだ。
「はよーございまーす、と…」
雰囲気がいつもと違うのはすぐ察した。
オフィス内の机の配置がおかしいのとみんな緊張した面持ちで座っていたからな、と。
オフィス内に居たのは主任、ルード、イリーナ、あと何故か社長。俺の特等席であるソファもなくなっていたからしょうがなく空いた席に座ったんだ。
――ピンポンパンポーン――
社内放送の前とかに流れる音楽あるだろ? スピーカーからその音楽が流れたと思ったらリーブの声が聞こえてきた。
「……レノさん、遅かったですね」
まるで部屋を見ているような口振りに警戒が高まる。
「局長さんが何してんだよ、と」
あくまで冷静に答えたがそれを無視するようにリーブは続けて事務的に話し始めた。
「引き出しを開けてみてください」
「んだよ……」
他の奴らは俺の名前が呼ばれたことにほっとした表情を見せている。
言われた通りに引き出しを開けると封筒が入っていた。意味の分からないまま封筒を開けると本が一冊。
「……朗読をお願いします」
本当にこの部屋の中をリアルタイムで見ていやがる……。
居心地の悪さを感じたが主任も社長も何も言ってこないから仕方なく本を開いて中に書かれていた文章を読み始めた。
「えーと? ルードのドキドキ生クリーム初体験……?」
ガタ、っと隣で音がしてルードがもの凄く慌てた顔で俺を見ている。サングラスの奥の目が見開いているのがよく見えた。あの取り乱し方はなかなかだったな、と。
「レノ……お前……何を……言っているんだ?」
俺が聞きてえよ。何だよこの本。パラパラと適当に捲って止まったページをまた読み始める。
「……ルードの反り返っているイチモツはその浅黒さを隠すように白いクリームで隠されていた。だがその先端から出る自身の汁はクリームを洗い流すように滴りその先端を覗かせ……」
イリーナは顔を赤くして耳を塞いでいる。お子ちゃまには早い話だから仕方ねえ。
主任は腕を組み目を閉じたまま念仏みたいのをブツブツ唱えている。社長は手を顎の辺りで組んで俯いていたが肩がちょっと震えていた。どこのネ○フの司令官だよ、って感じだったぞ、と。
「レノ、もう読むのは止せ……」
立ち上がってその本を取るように手を伸ばしてくるから逆方向に伸ばしてルードから遠ざけた。
「これまさか……実話か?」
無言でまた手を伸ばしてくる相棒にニヤケが止まらない俺。
「ルードー、かっこいー! こんなプレイしてたなら教えてくれよ、と」
官能小説みたいな語りのエロ本を斜め読みしてぶふっと笑った瞬間照明が落ちたんだ。
――デデーン
あ? なんだこのフザケた効果音は? と思ったらまたあいつの声が流れてくる。
「……レノさん、アウトです」
「あ?」
途端に主任と社長が笑い出した。
「危なかったな……」
「社長、ギリギリでしたね」
なんてお互いに話しているしルードはプレイの暴露にそれどころじゃない様子。
「おい、どういう……」
誰かに状況を教えてもらおうとしたらバタンと扉が開いて目を見開いた。
そこにいたのはクラウドとティファ。
お前、配達に行ったんじゃねーのかよ。ってか、何で釘バット持ってんだよ、と。
ティファはきっちりグローブ嵌めてクリームがたっぷり乗った紙皿を持っている。
何だ? ルードの公開プレイでも始めんのか? なんて状況が見えていないのはその場で俺ただ一人だったんだぞ、と。
クラウドとティファ、ついでにルードを見ていたらがしりと両腕を捕まれた。横を見ると社長と主任が俺を押さえている。
クラウドとティファは俺の方に無言で歩いてきて二手に分かれるとクラウドは俺の後ろ、ティファは目の前で仁王立ちした。
「ちょ、クラウド何構えてんだよ、と。何だよその強撃体勢は」
クラウドはちょっと逡巡するような素振りを見せた後無表情になる。
「興味ないね」
「……性格悪いぞ、と」
クラウドのやつはそれ以降口を開くことはなく釘バットを持ったままテークバックするとそのまま俺の尻めがけてフルスイングしてきやがった。
「っっっっっ!!!!!!!!」
脇を社長と主任に固められているから逃げることも出来ずに俺は仰け反った。あれは本気で尻が死んだと思ったぞ、と。
でもそこで終わらなかったんだ。涙目で前を見るとよ、ティファがこっちに向かってくるんだよ。生クリームをこっちに向けて。
掌底ラッシュの威力で生クリームが顔面に入る衝撃。俺は拷問の方がマシだと思いながら不覚にもそのまま気絶しちまった。
ただ、意識を飛ばす直前「女の敵」みたいなセリフを言われた気がしたぞ、と。
意識を取り戻すとオフィスはいつも通りでよ。夢でも見たのかと思ったけど尻と顔面の痛み、相棒の態度の余所余所しさに夢じゃなかったと俺は確信したんだぞ、と。
俺の女運が尽くよろしくない時期だった。
バーで知り合った女とホテルに行こうとしたら任務の呼び出し。その次は電話帳に入っている女を適当に呼んで発散しようと思えばホテルの前で別の女と鉢合わせて修羅場。
配達の依頼をしようと思ってセブンスヘブンに行くともう配達に出たと言われ、そのまま帰るのも癪でティファの淹れたコーヒーを飲んでいたらすごい剣幕で女が入ってきて「その女は何なのよ」とビンタ一発。
どう見ても店員と客だろ。俺は別の一発をかましたいっつーの、と。
口の端が切れていて小さな絆創膏を貼りオフィスへだらだらと戻ったんだ。
「はよーございまーす、と…」
雰囲気がいつもと違うのはすぐ察した。
オフィス内の机の配置がおかしいのとみんな緊張した面持ちで座っていたからな、と。
オフィス内に居たのは主任、ルード、イリーナ、あと何故か社長。俺の特等席であるソファもなくなっていたからしょうがなく空いた席に座ったんだ。
――ピンポンパンポーン――
社内放送の前とかに流れる音楽あるだろ? スピーカーからその音楽が流れたと思ったらリーブの声が聞こえてきた。
「……レノさん、遅かったですね」
まるで部屋を見ているような口振りに警戒が高まる。
「局長さんが何してんだよ、と」
あくまで冷静に答えたがそれを無視するようにリーブは続けて事務的に話し始めた。
「引き出しを開けてみてください」
「んだよ……」
他の奴らは俺の名前が呼ばれたことにほっとした表情を見せている。
言われた通りに引き出しを開けると封筒が入っていた。意味の分からないまま封筒を開けると本が一冊。
「……朗読をお願いします」
本当にこの部屋の中をリアルタイムで見ていやがる……。
居心地の悪さを感じたが主任も社長も何も言ってこないから仕方なく本を開いて中に書かれていた文章を読み始めた。
「えーと? ルードのドキドキ生クリーム初体験……?」
ガタ、っと隣で音がしてルードがもの凄く慌てた顔で俺を見ている。サングラスの奥の目が見開いているのがよく見えた。あの取り乱し方はなかなかだったな、と。
「レノ……お前……何を……言っているんだ?」
俺が聞きてえよ。何だよこの本。パラパラと適当に捲って止まったページをまた読み始める。
「……ルードの反り返っているイチモツはその浅黒さを隠すように白いクリームで隠されていた。だがその先端から出る自身の汁はクリームを洗い流すように滴りその先端を覗かせ……」
イリーナは顔を赤くして耳を塞いでいる。お子ちゃまには早い話だから仕方ねえ。
主任は腕を組み目を閉じたまま念仏みたいのをブツブツ唱えている。社長は手を顎の辺りで組んで俯いていたが肩がちょっと震えていた。どこのネ○フの司令官だよ、って感じだったぞ、と。
「レノ、もう読むのは止せ……」
立ち上がってその本を取るように手を伸ばしてくるから逆方向に伸ばしてルードから遠ざけた。
「これまさか……実話か?」
無言でまた手を伸ばしてくる相棒にニヤケが止まらない俺。
「ルードー、かっこいー! こんなプレイしてたなら教えてくれよ、と」
官能小説みたいな語りのエロ本を斜め読みしてぶふっと笑った瞬間照明が落ちたんだ。
――デデーン
あ? なんだこのフザケた効果音は? と思ったらまたあいつの声が流れてくる。
「……レノさん、アウトです」
「あ?」
途端に主任と社長が笑い出した。
「危なかったな……」
「社長、ギリギリでしたね」
なんてお互いに話しているしルードはプレイの暴露にそれどころじゃない様子。
「おい、どういう……」
誰かに状況を教えてもらおうとしたらバタンと扉が開いて目を見開いた。
そこにいたのはクラウドとティファ。
お前、配達に行ったんじゃねーのかよ。ってか、何で釘バット持ってんだよ、と。
ティファはきっちりグローブ嵌めてクリームがたっぷり乗った紙皿を持っている。
何だ? ルードの公開プレイでも始めんのか? なんて状況が見えていないのはその場で俺ただ一人だったんだぞ、と。
クラウドとティファ、ついでにルードを見ていたらがしりと両腕を捕まれた。横を見ると社長と主任が俺を押さえている。
クラウドとティファは俺の方に無言で歩いてきて二手に分かれるとクラウドは俺の後ろ、ティファは目の前で仁王立ちした。
「ちょ、クラウド何構えてんだよ、と。何だよその強撃体勢は」
クラウドはちょっと逡巡するような素振りを見せた後無表情になる。
「興味ないね」
「……性格悪いぞ、と」
クラウドのやつはそれ以降口を開くことはなく釘バットを持ったままテークバックするとそのまま俺の尻めがけてフルスイングしてきやがった。
「っっっっっ!!!!!!!!」
脇を社長と主任に固められているから逃げることも出来ずに俺は仰け反った。あれは本気で尻が死んだと思ったぞ、と。
でもそこで終わらなかったんだ。涙目で前を見るとよ、ティファがこっちに向かってくるんだよ。生クリームをこっちに向けて。
掌底ラッシュの威力で生クリームが顔面に入る衝撃。俺は拷問の方がマシだと思いながら不覚にもそのまま気絶しちまった。
ただ、意識を飛ばす直前「女の敵」みたいなセリフを言われた気がしたぞ、と。
意識を取り戻すとオフィスはいつも通りでよ。夢でも見たのかと思ったけど尻と顔面の痛み、相棒の態度の余所余所しさに夢じゃなかったと俺は確信したんだぞ、と。
* * *
「……本当にそんな事あったんですか?」
「お前はどう思う?」
「信じられないです……」
そう言ってつい最近タークスに入ったばかりの新人にあの日の出来事を話す。
「でも話聞いているとレノ先輩の女癖の悪さが原因だったんじゃないですか?」
「あ?」
確かにあの後女運は戻った、というか女遊びは控えるようになった。本当にあれは何だったろうな、未だに誰に聞いても知らないと言われる。
そんなあの日の不思議な出来事を考えながら今のオフィスの扉を開けて……秒で閉めた。
マジかよ……。俺最近また何かしたか……?
どうしたんですか? なんて新人が後ろから言うからお前が開けろ、と促す。
そんな俺の様子を怪しみながらも素直に扉を開けるが固まっている。
「習うより慣れろだぞ、と」
新人の背中を押して部屋の中に強制的に入れる。
そこはあの日と同じ。
いつもと違う机の配置で異様な雰囲気が流れていた。
「……本当にそんな事あったんですか?」
「お前はどう思う?」
「信じられないです……」
そう言ってつい最近タークスに入ったばかりの新人にあの日の出来事を話す。
「でも話聞いているとレノ先輩の女癖の悪さが原因だったんじゃないですか?」
「あ?」
確かにあの後女運は戻った、というか女遊びは控えるようになった。本当にあれは何だったろうな、未だに誰に聞いても知らないと言われる。
そんなあの日の不思議な出来事を考えながら今のオフィスの扉を開けて……秒で閉めた。
マジかよ……。俺最近また何かしたか……?
どうしたんですか? なんて新人が後ろから言うからお前が開けろ、と促す。
そんな俺の様子を怪しみながらも素直に扉を開けるが固まっている。
「習うより慣れろだぞ、と」
新人の背中を押して部屋の中に強制的に入れる。
そこはあの日と同じ。
いつもと違う机の配置で異様な雰囲気が流れていた。
初出:2020/07/13