「お待たせ〜〜〜」
剛「待ってねーよ」
井「お疲れ〜」
「珍しい組み合わせだね?」
井「岡田も誘ったけどだめだったわ」
「ん、聞いてる」
井「そりゃそっか」
「井ノ原くん朝大丈夫なの?」
井「大丈夫大丈夫〜」


仕事のあとに飲みに行こうと誘ってくれたのは井ノ原くんで、しかもそこに剛くんもいるんだから珍しい


「今日はどーしたの?」
井「いや、どーなのかなって剛くんが気になっちゃって」
剛「ちょ、井ノ原くんもでしょ!」
井「実際どうなの?一緒に住み出したんでしょ?」


わかっていたけど、やはり今回の集まりはお兄ちゃん達の優しさ。心配してくれてるらしい


「うん、まあ…まだ、全然落ち着いてはないけどね。荷物全然動かしてないし」
井「住みだしたのが早くてびっくりしたけどな」
「うん、なんかね」


一緒に居たいと思ってしまったと素直にいうのは気が引けた
私が准くんの家に引っ越すという形で一緒に住むことになって、すぐに荷物をまとめ出したけど、まだバタバタしたままだ。というか、准くんは映画の撮影、私はドラマが佳境に入ってきてて、結局ゆっくりはなしができてるわけではないのだ
それでも話はとんとん拍子にすすんでいくから、正直頭がついていかない

わたしだけ。わたしだけいまだ、ふわふわした気持ちのまま
結婚って、こういうものなんだろうか


剛「どうした?なんか悩みあんの?」
「悩みはないよ!ただ、…怖いくらいにスムーズにすすむから、」


びっくりしてる暇がないだけ


井「岡田とさ、どんくらいはなしたのか俺らには分かんないけど、あいつはずっとこのために頑張ってきてたよ」
「…え?」
剛「井ノ原くん!」
井「いいんだよ」
「…どういうこと?」
井「俺らはさ、ずっとお前らが想い合ってたこと知ってたよ。でも、それがどういう結果に終わるとしても、見守っていこうって決めてた」
「…、」
剛「お前に肩入れしちゃうときもあったけどな」
「そう、だね」
井「岡田がさ、俺たちに結婚を考えてるって最初に言ってきたのは、3年くらい前だったかなぁ…」
「……え?」
井「でも、それより前から考えてたみたいで、ずっと考えてたんだけどって言ってた」
剛「…言っちゃったよ」
「3年って…」
井「もっと仕事頑張って、事務所にもファンにも世間にも認めてもらうようになるから、このこと認めて欲しいって」
「……うそ、」


じっと井ノ原くんを見つめれば、すっごい優しい顔で笑いながら私をみていた


井「スムーズにすすむのはさ、それだけあいつが頑張ってたからだよってこと。甘えて流されちゃっていいんじゃないの?」


おかしいと思ってた
だって、メンバーもジャニーさんも、事務所さえも、何も言わないんだもん。マッチさんだって、やっと顔見せたなって感じで
なのに、プロポーズだって会見だってすべて何事もなくすすんでいく
なにも言ってくれないから
准くんがそこまで考えてくれてたことだって、気づけなかった

二人が、私の頭をそっと撫でた


***


剛くんの車を見送って、家に帰ると、既に准くんが帰ってた


「ただいま、お仕事お疲れ様」
准「ただいま、おかえり。楽しかった?」


私の顔をみて、優しく微笑んだ准くんをみて、必死に閉じていたものが溢れてきた気がした
准くんの問いに答える前に、ソファに座る准くんに思いっきり抱きついた


准「…まりな?」


私を抱き寄せる腕に愛しさを噛み締めて、擦り寄れば頭を撫でられる


准「なに?どうしたの?」
「んー…」


言葉にしなければ、伝わらないんだと、そんな当たり前のことに今更気づいた。私は最近改めて気づくことばっかりだ


「私のこと、あきらめないでくれてありがとう」
准「…イノッチから何聞いたの?」
「ないしょ」
准「こわいなあ…」
「だいすき」
准「俺は、愛してるよ」


耳に届いてきた声と落ちてきた唇に、じわりと涙が滲む

はじめから、無理だとあきらめてた私
でも、准くんはずっと、ずっとあきらめないでくれていたんだね
その思いに応えるのは、今からでも遅くないだろうか