ちゃんと想ってるから調子乗っとけ

「ナマエ? あいつ男慣れしてなさそーだから、面白半分で手ェ出しただけ」
 竜胆が友達か誰かにそう言ってるのを、ナマエはうっかり聞いてしまった。ギャハハハ、と周りの男たちがそれに合わせて馬鹿笑いしている。
 ナマエはその場でこっそり逃げ出す。
 おかしいと思った。恋愛経験0の女に手を出すなんて。ただの好奇心だったか。腑に落ちた。
 その日から、ナマエは竜胆の連絡を無視するようになった。会って話しても携帯ばっか見て、気のない返事をし続けた。
 それで向こうから自然消滅なり「飽きたから別れる」なりしてくれればよかった。
 が、一向に別れる気配がない。それどころかやたらと気にかけてくるようになった。
 ベッタリくっつきたがるし、同じベッドに潜りたがるし、誰彼構わず「こいつはオレの彼女」だと主張してる。
 あ、わかった。次の相手がなかなか見つからないからキープ要員ってことか。別に二股かけててもいいのにね。
 今日も彼は私に抱きついて、ずっと離れようとしない。だから善意100%でこう伝えてあげた。
「ねぇ竜胆」
「ん?」
「私だけじゃ飽きるでしょ? 他の女の子と遊んでもいいんだよ?」
 そしたらものすごく不機嫌になった。何故か。
「……あの、なんでそんなこわい顔してるの?」
 ナマエはまるでピンときていないようで、恐る恐る竜胆に聞いてみた。
 彼女はまだ気づいていないのだ。竜胆がナマエの気を引こうとして躍起になるうち、本気になってしまったことに。
「オマエが好きだからに決まってんだろ。他の女なんかいらねェんだよ」
「も、もし私が別れたいって言ったらどうするの?」
 別れたい、の言葉を聞いた瞬間、竜胆はナマエの体をさらに強く抱きしめる。嫌だってこと? なんで? と、ナマエの頭にハテナが浮かぶ。
「でも、さ。竜胆が私に告白したの、面白半分だったんでしょ?」
 ナマエの口からぽろっと言葉が出てしまった。竜胆の顔が険しくなる。
 こうなりゃヤケだ。とことんぶちまけてやる。
「その言葉も、私を繋ぎ止めるための出まかせで、はじめっから遊びのつもりだったんでしょ」
「は」
「最近になってスキンシップ取りたがるのも、連絡マメによこすのも、みんな私を誑かすためでしょ。私がちょっと素っ気なくなったから頻度上げてるだけでさ」
「話聞けって」
「それで私が竜胆にオチたら『はい残念でした〜オマエのこと好きになるやつなんていませ〜ん』ってネタバラシするつもりだったんでしょ!」
「話聞けっつってんだろが!!」
 ものすごい剣幕で怒鳴られてナマエは震え上がり、言葉が途切れる。
「あ……わりぃ。でもさ、オレそんなつもりでナマエに会いたかったワケじゃねーんだけど」
 ナマエは、黙って竜胆が話し出すのを待っている。何か喋ったら泣いてしまいそうだった。
「……確かにオマエが聞いたように、初めは遊び半分だったのかもしれねぇけどさ。今はオマエじゃなきゃヤダ」
「うそだ」
「否定されんのめっちゃ辛ぇな。でもマジだから」
 ナマエが何も言えずにいると、竜胆は抱きしめたままの手でナマエの背中を撫でる。恐る恐る、垂れ下がったままの手を竜胆の背中に回す。ナマエには、まだやっぱり未練があったみたいだ。
 ……もう一回くらいは信じてもいいのかもしれない。それで嘘でしたと言われたら、見る目がなかっただけだ。
 竜胆の体温に身を任せて、ナマエは目を閉じた。

タイトルはスパイラル&現実逃避様からお借りしました。


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