カッコつけたいお年頃

※最終軸



「どうしたのその目!」
 思わず叫んでしまった。竜胆が眼帯をしていたからである。彼はバツが悪そうな顔をして、
「……しくじった」
 としか言わない。まさか経営してるクラブでトラブルでもあったのだろうか。
 客のほとんどは楽しむために来ているものだが、ごく稀に酔いが回ってはしゃぎすぎる輩もいる。よっぽど手に負えないお客様は、竜胆がよく関節技の練習台にした後出禁にしているのを何度も見ている。よりによって目を負傷するなんて、そうとう油断していたんだろうか。
「……悪ぃけど、よく見えねェんだわ。誘導頼んでもいい?」
 断るわけがない。私はサッと腕を差し出す。
 普段竜胆はコンタクトをしていて、メガネは滅多にかけなくなった。きっと段差も分からなくて、歩くのも覚束ないはずだ。彼にしっかり私の腕を掴ませて、一緒に階段を上がる。
 戻った先の部屋には蘭がいた。私たちを見るなりニヤリと笑っている。
「竜胆、オマエうまいこと騙くらかしたな」
 私がキョトンとしていると、竜胆は気まずそうに目を逸らす。
「別に、オレは嘘ついてねェし」
「……蘭、何か知ってんの?」
「教えてやろーか」
 竜胆があからさまに狼狽え始めるが、蘭は無視して話し出した。
「竜胆は殴られたから眼帯してる訳じゃねェの。コンタクト雑に扱ったから炎症起こしただけだぜ?」
 私は思わず竜胆を見た。彼は私からもサッと目をそらす。どうやら、蘭の言葉に間違いはなさそうだ。
 どうしてそんな嘘ついたの、という意図を込めてじっとり見つめていると、竜胆は観念したように口を開いた。
「だってさ……そーゆー理由で眼帯してるとかバレたらダセェじゃん……まだ殴られたって思わせといた方がマシじゃん」
「そんなんどうでもいいよ。早く目薬さして暗い部屋で安静にしてなきゃ」
 目が痛いことには変わりないでしょ、と私が言うと、竜胆はちょっと安心したような顔をする。
「……じゃ、オレの部屋までついてきて」
 しがみついた腕から離れようとしないまま、竜胆はそう言った。あくまで私に誘導させるつもりらしい。見えないのは確かだけど、なんだかなあ。

※目薬さして部屋暗くして出ようとしたら「一人で耐えんのヤダから隣にいて」と竜胆に言われ、結局ナマエは朝まで付き添う羽目になる。


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