全員が起きたのを確認し、まずは赤司くんを中心に状況の説明を行った。まだ実感がわかないのが特に緊張した様子のない人もいれば、深刻にことを考えすぎて顔が真っ青になっている人もいる。ウチの高校を明らかに疑っているような視線を送ってくる人も居るのはいるが、状況が状況なので迂闊に声を挙げれないのだろう。特に何も言われることは無かった。状況を説明した後に、まずは体育館内を探索しようと赤司くんが提案する。ここから出なければ何もわからないので私は真っ先に賛成した。他も特に異議はないようで黙って頷いた。

「では手当たり次第でいいのでなにか手がかりになるものがないか探してください。それから各高校の主将はこれからのことについて話したいので、僕の元へ集まってください。」
「頭回る子だね〜マジで1年?」
「あーいうやつに限って裏切りモンだったりするんだよねん」
「一理あるな」
「その理屈で行くと花宮も充分ありえるよ」
「オイ口に出すな」
「ザキくんフォローできてなくない?」

わらわらと散らばっていく中、霧崎第一は自然に集団となって探索を始めた。わりと騒がしいので好き勝手に喋っていると、流石に聞こえたのか背後から睨みつけるような視線を感じる。興味が無いので無視しておくが、露骨すぎやしないだろうか。アレでもこれって棚上げって言うのかな。
のんびりステージの方を彷徨いていると、原くんがていうかさー、と口を開いた。

「なまえチャンまじで誰も分かんないの?俺でもキセキの世代くらいは分かるわ」
「そりゃ私バスケ興味ないしな」
「あの金髪は?モデルかなんかしてただろ」
「雑誌読まない」
「ザキキセリョの雑誌とか読むわけ?ウケるんだけど」
「何がだよ!」
「なまえ」

のっそり近づいてきた古橋くんの手には鍵らしきものが。でかしたと言って両手を差し出すと、鍵を持っていない方の手が重ねられた。静かすぎるハイタッチ。
なんだお前らと変な目で見てくるザキくんを置いてさっそく花宮くんを呼んだ。

「花宮くーん、私がいいもの見つけた」
「なまえじゃない、俺だ花宮」
「どっちでもいいんだよバァカ、見せろ」
「鍵だよ鍵。これ絶対出口のアレっしょ〜〜はよ試そう花宮くん」
「何かありましたか」

集まる私たちに気付いた赤司くんが小走りで近寄ってくる。正直呼んでないし二回も同じことを話すのは非常に面倒なので花宮くんにアイコンタクトを送ると、溜息をつきながら代わりに説明してくれた。優しい。
鍵を手に取り少し考えるような仕草を見せた後、赤司くんはとにかく出口の鍵穴に刺してみましょうと言ってみんなを集めた。

「さっきから思ってたんだけどこの空間赤司くん絶対王政みたいなのあるよね〜何?」
「ま〜赤司はそこそこ頭いいかも知んないけどそれ以外は致命的だからね、言う通りに動くしかできないんじゃない?」
「お前らさっきから何なんだよ!」
「え、誰?面白」

皆を仕切る赤司くんを遠目に原くんと会話していると、眼鏡をかけた短髪男子が突然怒鳴ってきた。こえ〜〜。彼が言うにはウチと1回試合をしたことがあるらしいけど、正直全く覚えてないよね。

「あもしかして先輩?サーセン」
「ぶふ、なまえチャン謝る気ないっしょ」
「〜〜〜ッッ言っておくがな、俺たちはお前らにされた事を忘れたわけじゃねえぞ」
「された事ってどうせラフプレーの事っすよね、そういうの聞き飽きたんで大丈夫で〜す」
「な、」
「皆さん静粛に」

悪い空気が広がっていくのを遮るように赤司くんが静止をかけた。じとりと睨まれたのでしばらく大人しくしておこうなんて考えには至らない。緊張した面持ちで皆が注目する中、赤司くんはゆっくりと鍵を鍵穴に入れた。鍵はぴったりとハマり、右回りに回すとカチャリという音が室内に響く。ビンゴだ。